金総書記訪中:露出と潜伏、大連滞在2日間(上)

初日はホテル正門、二日目は地下通路を利用

 4日午前5時20分、金正日(キム・ジョンイル)総書記が宿泊している「富麗華大酒店(フラマ・ホテル)」の向かいにあるニューワールド・ホテルのロビー。日本人記者3人がソファに深く埋もれるように座り、道の向こう側を凝視している。「午前3時に交代したが、まだ何も動きがないようですね」。彼らにとっては「毎度のこと」だ。

 フラマ・ホテル前の様子が慌ただしくなったのは8時40分ごろ。ホテル前の人民路が封鎖され、どこからか警察官たちが集まってきた。通行人たちは閉め出され、外国人記者らに対しては声高になった。9時30分ごろ、武装警察の車両を先頭に、黒いベンツと中型バス十数台、救急車が一斉に動き始めた。後に明らかになったことだが、金総書記は世界中のメディアの視線が注がれるホテル正門玄関ではなく、地下通路から疏港方面へ通り抜けていた。世界中が金総書記の動向を注視しているにもかかわらず、あえて身を隠し行動する指導者。ややもすれば最後になるかもしれない5回目の訪中。「露出」と「潜伏」という、矛盾する中で計算された一連の行動に、その性格が凝縮されているように思えた。

 車列は東の方向へと人民路を走り始めた。その方面には大連経済技術開発区があり、ポスコやLG産電といった韓国企業約400社や、東芝・パナソニック・キヤノンなどの日本企業が多数入居している。大連の消息筋は、「金総書記の一行はコンテナ専用の第3埠頭(ふとう)を視察した後、中国・奇瑞汽車(チェリー自動車)の工場用地を訪問した」と話す。第3埠頭は数年前に完工した輸出入貨物の窓口だ。東北3省の中核都市・大連は、港と臨海工業団地を結び付け、外資誘致に成功した代表的な都市と言われている。金総書記がこの大連を視察したということは、北朝鮮・羅先港開発に際し、大連を開発モデルに想定していることを世界に知らしめようとの意図があるようだ。

 中国は昨年下半期に東北地方プロジェクト「長吉図・長春・吉林・図們」の開発計画を立て、羅先港埠頭をさらに10年間租借する契約を北朝鮮と結んだ。これにより、中国は長吉図開発開放先導区で生産された製品を東海(日本海)方面に運ぶ経路を確保、北朝鮮は港湾使用料により不足しがちな現金収入を得られるようになる。金総書記が一見、隠密行動をしているようでありながら、実は動向をあからさまにしているのも、こうした意図と関連があるようだ。

【ニュース特集】金総書記4年ぶり訪中

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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