【社説】「天安」沈没疑惑の中、中国は対北支援するのか

 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は3日午前、専用列車で中朝国境の都市・丹東を経由し、中国遼寧省の港湾都市・大連に到着したという。金総書記は今日または明日にも胡錦濤国家主席ら中国指導部に会う可能性が高いと思われる。

 中国も北朝鮮も、金総書記が訪中したということすら正式に認めていない。このため、金総書記が中国のどこを訪れ、誰に会い、何について話したのかは依然として五里霧中だ。金総書記は北朝鮮の指導者として5回訪中しているが、一度もその日程が両国の当局から発表されたことがない。現代世界の外交の舞台で、最高指導者の訪問や会談がこのように秘密裏に行われるケースは、中朝両国以外にない。それほど中朝関係は、国際的な慣行や常識からかけ離れているということだ。中国側は「警護上の理由で、金総書記の日程は公表できない」としている。

 金総書記が今回訪中した最大の理由は、中国から大規模な経済支援の約束を取り付けるためだ。北朝鮮では昨年末のデノミネーション(通貨単位の変更)失敗以来、住民の反発が激しさを増し、体制が深刻な危機に直面している。食糧は今年だけで約100万トン不足しているという状況だ。韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没が北朝鮮の仕業と分かれば、中国以外の国や国際機関から食糧援助を受けるのは難しくなるだろう。

 北朝鮮はこの1年5カ月間、6カ国協議に背を向いてきた。「天安」沈没がなければ、中国が経済支援を約束し、北朝鮮の6カ国協議復帰を引き出すだけでも、「外交的な成果を収めた」と評価されていたかもしれない。しかし韓米は「天安」沈没の真相解明と、それに伴う責任追及が行われて初めて、6カ国協議再開の是非を検討するとしている。

 金総書記が胡主席らに対し、「天安」沈没に北朝鮮がかかわっているかどうかを告白する可能性はない。だが、中国が北朝鮮の言葉だけを信じ、6カ国協議復帰の対価として大規模経済支援を約束したら、それは責任ある地域国家、責任ある世界指導国家の行動ではない。中国の大規模な対北朝鮮経済支援は、昨年北朝鮮による2回目の核実験後に発動された国連安全保障理事会の制裁決議を無力化させ、「天安」沈没の真相解明後に実施される可能性のある国際社会の対北朝鮮制裁を、始まりもしないうちから「反故(ほご)」にしてしまうことになる。

 中国は今回、世界と韓国国民に対し、中国が世界と地域に責任を果たす国家であることを明確に立証すべきだ。

【ニュース特集】金総書記4年ぶり訪中

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
関連記事 記事リスト

このページのトップに戻る