金総書記訪中:なぜ大連へ?

羅先港開放のベンチマーキングか

 今回が総書記就任後では5回目の訪中となる北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は、最初の訪問地に遼寧省の港湾都市・大連を選んだ。北京の外交関係者からは、「北朝鮮は開放を推し進めている咸鏡道・羅先港に、中国の投資を誘致することを念頭に置いているのでは」という見方が出ている。

 金総書記は中国式の改革・開放を検討していた2000年と01年に、北京の情報技術(IT)団地・中関村や上海を視察している。04年には浜海新区開発が推進されていた天津を、06年には中国南部の開放都市である深セン・広州・珠海を訪れた。訪問時の状況に合わせ、北京以外の訪問先を選択してきたことになる。

 中朝国境に流れる豆満江(中国名:図們江)河口付近の羅先港は、中国が東海(日本海)側に至る際の出入り口的な役割を果たす場所だ。豆満江河口の両岸はロシア領と北朝鮮領になっているため、中国から東海へ抜けるルートはふさがれている。中国は立ち遅れている東北3省を開発するため、この場所での出海権を確保しようと腐心してきた。1990年代序盤からは、同地域を開発するため、韓国・日本・ロシア・北朝鮮などと共に豆満江開発計画を立て推進したが、遅々として進んでいないのが実情だ。

 北朝鮮は、金剛山観光をはじめとする南北経済協力が振るわないため、今年初めから中朝国境地帯を中心とする両国経済協力を積極的に推進している。威化島や黄金坪など、北朝鮮・新義州と中国・丹東が接する地帯に開城工業団地のような大規模工業団地を建設することも話し合われている。

 こうした状況の時期に金総書記が大連を訪問したのは、中朝経済協力の切り札として「羅先港を国際的な港にしよう」というメッセージを中国側に送るためとみられる。

 また、大連の港湾施設を視察し、羅先港をどのような形で開発していくかというベンチマーキング(優良な実例に倣って目標設定すること)の意味もあると考えられる。大連港は08年の物流量が2億5000万トンという、中国でも第4-5位の港だ。北朝鮮に送られる物流量も少なくないと言われている。

 北京の北朝鮮関連消息筋は、「羅先港は中国がひそかに最も強く希望している中朝経済協力プロジェクトの一つ。金総書記は中国の胸の内を察し、この切り札を切ったのだろう」と話している。

北京=崔有植(チェ・ユシク)特派員

【ニュース特集】金総書記4年ぶり訪中

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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