【コラム】金剛山を見ながら開城を思う(上)

 哨戒艦「天安」の沈没が北朝鮮の仕業であることが有力視されている今、韓国はこれまで北朝鮮の「金正日(キム・ジョンイル)集団」を支援する代わりに何を得ることができたのかについて、改めて深く反省しなければならない。ここ20年の間に、韓国は数々の物的支援、食糧支援、首脳会談の代償、金剛山観光、開城工業団地事業の運営などを通じ、数十兆ウォン(10兆ウォン=約8500億円)もの経済的支援を行ってきた。とりわけ金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権では、北朝鮮への支援が最高潮に達した。ところが、その見返りとして韓国に返ってきたのは哨戒艦「天安」の沈没であり、民間人への脅迫、さらには数々の耐えがたい冒とくや破壊工作ばかりだ。

 今後も同じことが繰り返されては決してならない。金正日集団が変化の兆候を示そうとしない限り、今後も「金を与えて殴られる」といった状況を招くだろうし、飢餓と生活難に苦しむ北朝鮮住民への独裁や弾圧も、さらにひどくなるのは間違いない。

 ところが韓国社会には今も、北朝鮮に対する敗北主義が蔓延(まんえん)している。「北朝鮮への支援は平和の代償」「北朝鮮に資金を与えてなだめよう」といった消極的な敗北主義から始まり、「北朝鮮への武力報復は直ちに戦争につながる」などの積極的な敗北主義に至るまで、その種類もさまざまだ。韓国にできることは何もなく、それゆえに「天安」の事故も近い将来に忘れられてしまうという声が聞かれるほどだ。

 韓国としてはまず、「果たして金正日集団と共存できるのか」という根本問題から考え直さなければならない。共存できないのであれば、彼らに打撃を加えるための行動を起こすべきだ。それにはまず、資金源を断たち切り、開城工団から直ちに撤収すべきだ。「これは北朝鮮当局、特に軍部が望んでいること」と主張する向きもあるが、これまで北朝鮮当局は数々の脅迫を行ってきたにもかかわらず、今も開城工団には手をつけようとしない。これは、ここで得る利益がかなりの額になるからだ。また、何よりも今後は北朝鮮との衝突が予想されるため、敵の手中に韓国の国民(韓国の企業関係者)を残すことは絶対にあってはならない。金剛山で韓国政府が所有するすべての資産を没収した彼らの大胆さと挑発が、いつ開城工団で起こり得るか分からない。また、韓国が今後北朝鮮に対してどのような制裁を加えるのか予想もできない中で、韓国の国民を人質状態にしたままでは、やるべきこともできなくなってしまう。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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