【萬物相】軍番
「1951年、廃墟と化したある韓屋(韓国の伝統家屋)で少年マンウクが戦争ごっこをしている。その時、少年に軍事郵便が配達された。この日は少年の誕生日だった。少年は、父が戦場から送ってくれたプレゼントだと思って胸を膨らませながら、その包みを開けた。中には父の軍番と擦り切れた軍靴1足が入っていた」。韓国人監督の作品として、2005年に初めて米アカデミー賞候補(短編アニメ部門)にノミネートされたパク・セジョン監督の『Birthday Boy』のストーリーだ。
1995年、ある米国人事業家が中国・丹東の軍事博物館を訪問し、米軍の軍番を発見した。それは、韓国戦争の際に失踪した空軍パイロット、コフ大尉のものだった。米軍は、10年にわたる調査の末、コフ大尉の戦闘機が丹東の村に墜落したという事実を突き止めた。そして、2004年にコフ大尉の遺体を発掘し、翌年に葬儀を行った。
兵士経験者なら誰もが軍番をもらうことで、「兵士になった」という実感が湧くという。軍番は兵士を象徴する最も代表的な物だ。ステンレス製のため、首に掛けたまま風呂に入っても錆びることはない。軍番には所属と軍番、氏名、血液型が刻まれている。軍番は、戦争で負傷し治療を受ける際、そして戦死者の身元を確認するために必要なものだ。哨戒艦「天安」の犠牲者も、ほとんどが軍番を首に掛けていたため、身元の確認が容易だった。軍番は、軍紀や臨戦態勢維持の徴表だ。第一線の部隊が随時将兵らの軍番の着用状態をチェックし、違反者に罰を与えるのにはこうした理由がある。
かつて陸軍参謀総長を務めた自由先進党の李鎮三(イ・ジンサム)議員が先週、国会で哨戒艦「天安」の沈没事故と関連し、李相宜(イ・サンイ)合同参謀本部議長に対し、軍番着用の有無について質問した。李議長は「着用していない」と答え、金泰栄(キム・テヨン)国防長官は「軍番は戦時に着用するもので、平時に着用しなくても問題にはならない」と述べ、部下をかばった。李議員はこれに対し、「聞いてあきれる。軍服を着ても、軍番は着用しないとは」と批判した。
哨戒艦「天安」が沈没したのはわずか1カ月前のことだ。今回の沈没事故では、報告漏れや遅延など、数々の軍紀の怠慢さがあらわになった。国防部は既に犠牲となった将兵らを戦死者として礼遇した。平時に軍番を着用しないのなら、将兵らが軍番を着用する根拠はないのではないか。
申孝燮(シン・ヒョソプ)論説委員
- 【コラム】「デジタル遺産」の処分を考える(下) 2010/05/06 16:50:16
- 【コラム】「デジタル遺産」の処分を考える(上) 2010/05/06 16:49:55
- 【萬物相】韓石峰
2010/05/06 14:55:17
- 【コラム】「天安」事故とムーディーズのメッセージ(下)
2010/05/06 12:01:52
- 【コラム】「天安」事故とムーディーズのメッセージ(上)
2010/05/06 12:01:48
- 【社説】金総書記、中国経済特区100回見ても無駄 2010/05/06 10:02:51
- 【萬物相】文学を殺す国語教育
2010/05/05 16:51:58
- 【コラム】これを韓中の戦略的関係と呼べるのか(下)
2010/05/05 12:03:01
- 【コラム】これを韓中の戦略的関係と呼べるのか(上)
2010/05/05 12:02:22
- 【社説】「北朝鮮問題=中国問題」の公式で中国が損する日 2010/05/05 11:29:06