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極めて欧州らしい危機

ギリシャのソブリン債危機の行方

2010.02.10(Wed) The Economist

The Economist

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 ギリシャ政府は、近く年金改革案を提出すると述べている。ギリシャは、先進国が大半を占める経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国の中でも特に手厚い――それゆえ高くつく――公的年金制度を採用している。労働者は、定年退職以前の給与の96%に当たる年金を受け取れる日を楽しみにしている。

 ギリシャ人にはもう、そのような快適な老後を過ごす余裕はない。パパンドレウ首相はテレビ演説の中で、定年退職の年齢引き上げが年金改革の柱の1つになることを示唆している。

 もっと大胆な財政削減計画を打ち出せば、許容範囲の金利で債券市場から借り入れができるかもしれない。ギリシャ政府は、予算を削減する一方で、「社会的パートナー」が幸せであり続けるよう、うまくバランスを取らなくてはならないと述べている。しかし、公務員や年金生活者に対しあまりにも寛容でいると、国債の買い手探しが困難になるかもしれない。

 もしギリシャが国債市場から締め出されたら、救済に頼るか、デフォルトに陥るしかない。どちらの選択肢も社会的調和に貢献することはない。

どちらのバケツで水をかき出すのか?

 ギリシャが然るべき財政削減を達成できないかもしれないという見方が、救済のあり方についてEU当局者を悩ませている。1月末にギリシャ国債の利回りが急騰した時、焦慮した欧州官僚は、ギリシャの救済措置を検討中だとマスコミに示唆した。

 欧州連合(EU)が規定する条約には「救済を行わない」ことを定めた条項があり、加盟国に対し、他国の債務を肩代わりすることを禁じている。その条項は1991年、ユーロの基本原則の大半が制定されたオランダ・マーストリヒトで開催されたEUサミットで、ドイツの強い主張により盛り込まれたものだ。しかし条約の他の条項では、問題を抱えるEU加盟国に対する支援が認められるかもしれない。

 1つの救済方法は、ギリシャがドイツのような信用力の高い他のユーロ加盟国からつなぎ融資を取りつけることだ。そうした融資協定は合法かもしれないし、合法ではないかもしれないが、それが政治的に最悪であることは間違いない。

 支援を与える側の国の有権者は、自分たちの倹約の果実が浪費家の救済に使われたら怒るだろう。損の上に損を重ねることがないようにするために、いかなる融資も条件付きでなければならない。ここで別の問題が発生する。

 ある国が別の国に対して、どうやって予算を削減すべきか指示するのは難しい。1994年にメキシコが救済された時、ビル・クリントン大統領率いる米国政権は当初、単独で救済策を手がけたがった。だがすぐに、IMFに任せて、メキシコに救済条件への同意を求めた方が得策であることに気づいた。

 1990年代半ばのメキシコと、今のギリシャを置き換えてみるといい。「もしドイツが介入すれば、アテネの路上ではドイツ国防軍が戻ってきたと言う人が現れるだろう」と、あるエコノミストは指摘する。

 欧州の政府関係者らは内々に、ギリシャ救済のためにIMFを呼び込むことを恐れている。何よりプライドの問題がある。ギリシャ人はさておき、IMFに支援を求めることは欧州にとっては屈辱だ。ユーロの評判も危うくなるし、本来、ユーロ加盟国は圏内で問題を解決する力があるはずだ。

 IMF主導による救済は、放漫財政を防ぐユーロ圏の手順の効果のなさを浮き彫りにする。もっとも、EUの外ではこのプロセスに期待する向きはほとんどなかったが。

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