【コラム】テレビドラマの中の同性愛(下)

 キム・スヒョン氏は、同性愛者の現実を美化したり卑下したりすることなく、ありのままを描いている。だからこそ、その挑戦はより大きな波紋を呼ぶ。4月17日の放送では、テソプが自分にプロポーズしてきた女性の前で、涙を流しながら「僕も自分がすごく嫌で悲しかった。いつも、ほかの人の知らない犯罪を犯しているようで、のろわれているような感じだった。両親や兄弟に申し訳なく、“僕は本当は違うんだ”と心の中で耐えていた」と、自らが同性愛者であることを告白した。テソプのボーイフレンドであるギョンスは、結婚して子どもが生まれてから「カミングアウト」し、家族と激しい葛藤(かっとう)を繰り広げている。ギョンスの妹は、兄が同性愛者だという理由で婚約を破棄されてしまう。

 キム・スヒョン氏のドラマは、30%を超える高視聴率をマークすることが多い。『人生は美しい』も、序盤から20%台に迫る勢いだった。さらに、毎週2話ずつ放送されるキム・スヒョン氏のホームドラマでは、現代に生きる視聴者が普通に経験する日常が描かれ、自然に感情移入してしまう。そんなドラマが同性愛者の人生や苦悩を正面から扱うというのは、ある意味危険なことにも思える。特に、自然の摂理に反するとして、同性愛を認めない人々にとってはなおさらだ。

 だが、このドラマを通じて同性愛が議論の対象になったことだけは事実だ。インターネットに開設されている韓国の各種の同性愛者コミュニティーでは、会員数が10万人を超える。良し悪しはともかく、同性愛は現実に存在する。キム・スヒョン氏は最近、米国のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ツイッターで、「息子が同性愛は受け入れられないと言っている」というある視聴者の意見に対し、こう答えた。「息子さんと一緒に見てください。息子さんを、マイノリティーに対する偏見がない人間に育ててください」。もちろん、お茶の間で家族が一緒に同性愛のドラマを見なければいけないのか、という常識的な疑問は、今後も残るだろう。

エンターテインメント部=チェ・スンヒョン放送チーム長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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