iPadはなぜ売れないのか ― 発売前のiPadを手に入れました。 2010年05月05日
iPadは、なぜ売れないのか。ひょんなことから発売前のiPadを手に入れて2日間使った私の感想をレポートする。
これが私のiPadトップ画面。使い方はiPhone 3GSと全く同じ。iTunesに繋げば同じように使える。
開封直後のiPadについては→ http://picasaweb.google.co.jp/ashidahironao/IPad#
現在のユーザーコンピューティングの(ハードの)方向性は二つある。
一つは、高解像度モニタか、マルチモニタ化。
もう一つは、身体感覚のモバイル。
どちらもに共通するのは、快適な入力(+GUI)と高速処理。
前者は、デスクトップ型PCかハイパワーモバイルPC。
後者は、iPhone 3GSが代表格。クラウドコンピューティング派はiPhone 3GS派を端末主義者と言ってバカにするが、それは間違い。携帯電話は最終的には身体同化。端末の在り方がクラウド化の鍵を握ってる。それがわかってないのがAndroid陣営。
さてモバイルPCは、ネットパソコンの敗北でわかったように、解像度が低く処理能力が落ちるPCは使い物にならないということ。そのうえ、ネットパソコンくらいの大きさや重さなら、ハイパワーノートPCのVAIO Type Zでも充分持ち歩けるということ(http://www.ashida.info/blog/2009/12/post_391.html)。
現状のユーザーは、デスクトップPCとiPhone 3GS、その中間を埋めるハイパワーモバイルPC(レッツノートやVAIO Type T or Z)でとりあえず満足している。
そこにiPadがでてきた。
大きさ重さは小さめのネットパソコンなみ。重さは680g(Wi-Fiモデル)、730g(Wi-Fi + 3Gモデル)、242.8mm×189.7mm×
薄さ(13.4m)と重さ(680g)は特筆されるが、しかしキーボードがないと思えば、こんなものかなとも思う。
ソフトキーは打ちやすいが、iPhone 3GSよりも進化しているのは句読点が切替なしに入力できること。
縦置きだとタッチタイピングができるかどうかは、微妙だが、横(辺の長い方を上下)に置けばレッツトートのRサイズとほぼ同じ。なんとかタッチタイピングができる。
問題は、このiPadの置き方だ。基本的に両手で持つしかない。机の上で使うなら、わざわざ、机に上に立てるのに面倒なiPadを使う意味はない。デスクトップPCかハイパワーノートPCで充分。キーボードもわざわざソフトキーを使う意味はない。
自宅や会社なら、PCはすぐに立ち上がるモードになっているのだから、立ち上がりのスピードを気にする必要もない。
そこで、このiPadを使う場合、膝の上で両手を使って持ちながら、両方の親指でソフトキーを打つことになる。これこそ、文字通りの「ラップトップ」パソコン。
iPhone 3GSよりはるかに正確に早く打てるが、だからといってそれがどうした、という感じか。
この両手持ちの場合、700グラム前後のiPadは、決して軽くはない。私が最初にこのiPadを持って感じたことは「重い」ということだった。携帯電話を入力中に(片手ですら)重いと感じることはまずないが、iPadの700グラムは両手で持っても重い。とても長時間の入力には耐えられないだろう。
かといって、机上設置用のドックを買い、 別売りキーボードを買うくらいなら、iPadの機動性は半減し、モバイルPCとどこが違う? ということになる。
結局、iPadを評価するには、iPhone 3GSと何が違うのか、という点だ。
私には、その点で、特にiPhone 3GSよりも必要で新しい用途を切り開いてるとは思えない(特定の商業用途は別にして)。
たしかにiPhone 3GSを愛用しているユーザーは、この画面の解像度と薄さに最初魅入るだろうが、それも最初だけ。しばらく使い始めると、iPhone 3GSで充分と言い始めるに違いない。iPadにキーボードを付けるくらいなら、それをiPhone 3GSに付ければいいだけのこと。特に入力で問題になることはない。むしろ片手で入力できるiPhone の方に軍配を上げるユーザーも多いに違いない。
片手パソコンとしてのiPhone 3GSの意義は大きいのだ。
かつ、電話もカメラ機能もiPadにはないから、自宅内でもiPhone 3GSとiPadは必ず並行して持ち歩かなければならない。これも邪魔くさいことだ。カメラがなければ少なくともtwitter利用をiPadで代替わりできない。電話ができないという不満は我慢できてもカメラ機能がないのはつらい。twitterが自立的に自由にできないは決定的な欠陥だ。
モバイル派は、自宅にいても(PCを使わず)携帯電話をいじくってる。特にベッドインしてからの用途が多いらしい。その場合でもiPadは中途半端。手で支えるにはやはり重すぎるのだ。寝ながら使うというのはiPadの場合難しい。
もう一つの違和感が在る。それはこれほどの大きさのものを充電して使うということだ。
まず、ノートPCのような電源ケーブル付き利用はとても違和感が在る。機動性と逆だから。かといって、電子辞書のような乾電池利用に耐えるわけではない。携帯電話のようにコンパクトではないから、充電ドックに置くという感覚は少し違和感がある。
一方でノートPC比較でコンパクトで使いやすいと言われながらも、実践的には携帯電話(特にはiPhone 3GS)と比較すべき商品。そうなるとこの大きさと重さは、つらい。この半分の大きさと重さでも良かったような気がする。
特にそう思うのは、(飛行機・新幹線内などで)セカンドバッグを想定した場合(あるいは散歩に携行するような小さなバッグを持ち歩く場合)。このiPadの大きさはセカンドバッグには大きい。ポーチにはむろん入らない。今日も自宅内の小さめのバッグを全て取り出して入れようとしたが入らない。結局そこそこのノートPCが入るバッグを持ってないと携行できない。それならノートPCを持ち歩いた方がまし、ということになる。
いったい、どこで使えばいいんだ、このiPadは。
たしかにブラウジングだけなら、この縦横変換できる画面は無敵で1000の解像度だけでもUXGAモニタに匹敵できる実践性があるが(これはiPadの「コロンブスの卵」並みの機能!)、最近のネット利用は二次利用、三次利用を想定してるから、やはり、不充分さが残る。
私はこれからのPC新製品は、携行できるハイパワーなノートPC(1.3キロ以下)とiPhone 3GSのどちらかが不要になる状態にならないと「大流行」はあり得ないと思う。「第三の道」はありえない。その意味で、このiPadは使いものにならない。このiPadはiPhoneが切り開いた地平をアップル社自らが過小評価しすぎた結果出て来た商品にすぎない。
皮肉なことに、このiPadは、iPhone 3GSユーザーでないPCユーザーが飛びつくかもしれない。なんだかなぁ。→「にほんブログ村」
(Version 6.0)
※このブログの現在のブログランキングを知りたい方は上記「教育ブログ」アイコンをクリック、開いて「大学」「専門学校教育」を選択していただければ現在のランキングがわかります)
この記事へのトラックバックURL:
http://www.ashida.info/blog/mt-tb.cgi/1236
iPhoneユーザです。
まず第一に「売れない」とありますが「売れる」の定義は「大流行」ととらえていのでしょうか?
その上で、iPhoneおよびハイパワーノートは「大流行」したのでのでしょうか?
私は購入します。iPhoneにはない見やすさがありますから。重さは今後2世代、3世代と後継機で変わるかと。
重要なのは、ハードウエアのスペックではなく、使い勝手を含んだパッケージとしての新たな価値観(Win機のタブレットマシンでは使い勝手が追いついていなかったし、Android系は未知数=iPhone登場期と同様かと)を評価したいし、その土壌はiPhoneが作った訳ですから、それなりの市場浸透はするかと思われますが。
「大流行しない」を「売れない」といいきるのもどうかなと思います。
私は「使い勝手を含んだパッケージとしての新たな価値観」がないことを「売れない」と表現しただけです。あなたが言うその「新たな価値観」がiPadにあるのなら、あなたはそれを具体的に指摘すべきです。私は具体的に指摘してるのだから。あなたが買うかどうかは、私の論外です。
安価できれいなディスプレイがついたインターネットにつながった電子ペーパー、と思えば、飲食店のメニューでそのまま注文でき、数カ国語に切り替えられる・・とか。
だから、(特定の商業用途は別にして)とあり得べき誤解を避けるようにして書き込んでいるでしょ。良く読んで。でも、そういったセグメント主義はジョブズは大嫌いなはずだよ。
iPad vs キンドル という書籍の中にあったのですが、(アメリカにおける)リビング空間での利用を想定したものであるとの記述がありました。
正直な話、日本人のノートPCの代わりにはならないというか、そもそもがそのように利用して欲しいと思っていないように思われます。(ブックリーダーとしても、太陽光のしたではかなり読書しづらいとの評判ですし)
非常に恐縮ですが、視点をかえてiPadを見てみては如何でしょうか?
言ってることはすごく良く分かります。
ですが、
> 皮肉なことに、このiPadは、iPhone 3GSユーザーでないPCユーザーが飛びつくかもしれない。
がなぜ
> なんだかなぁ。
なんでしょう? それはそれでも良いと思いますが
これまでのコンピュータ端末って起動に時間を要し、目的のアプリを立ち上げるのにマウスorタッチパッドを操って、マウスポインタで目標のアイコンを選びクリックして・・・・何アクション必要でしょうか。
またアプリ間の移動も同様。私の言う使い勝手とはまずはこの使いたいと思った瞬間からそれを実現させるまでアクション数=ユーザビリティがひとつ。
これはアプリ間の移動にも言えること。
特にOS4.0からはマルチタスク対応で強化された点を含め。
そして、多種なアプリケーションが同様に手に入れやすい仕組み。
それら土壌をiPhoneが切り開いた上で、さらに視認性とタッチデバイスとして広い画面が手に入ったら便利ではないでしょうか?
iPhoneを否定はしていません。たださらにブラウザやアプリでのクリックも楽になるわけだし、いいことでは?
ちゃんと叩けるピアノにもなって、音楽プレーヤにも、書籍としても、カーナビにも、空いた時間は子供のお絵かきなどなど・・もちろんブラウザやメーラ・・・あげたらキリがありません。それがあの1台でできてしまう。
そもそもカメラはデジイチ派なので・・・
eye-fi使ってるので不便さは感じません。Twitterもしかり。
私が聞きたかったのは、どうして「売れない」と言い切れるのかなと。
それとも今まで「売れたものはない」という観点からなのかしら?
あと、最近のネット利用は二次利用、三次利用を想定してる とありますが・・・・二次・三次といった表現が曖昧ですが、圧倒的なwebユーザの方々はそこまで本当に考えてるのかな?
売れないって、凄い売れてるでしょ(笑
電子書籍端末として凄い可能性を秘めた製品だと思いますけどね。
自宅の本棚の本を全てA4ノートに入れて持ち歩ける時代がもうそこまで来てる感じです。
電話の携帯性を重視して画面を犠牲にしてきたiPhoneと違って、タッチパネルの良さを最大限発揮できる大きさにまとめてきたiPadはiTunesとの連携のすばらしさによって他の追随を許さない製品となっており日本でも沢山売れると思いますよ。
ただし、日本人はザ・ラストマンと世界から言われるように、iPodしかり、iPhoneしかり、日本で流行るまでに1年はかかるでしょう。
来年の年末くらいまでにはモデルチェンジしたiPadが爆発的に売れて、このブログの記事を書いたことが恥ずかしく感じちゃうかも知れませんよ〜。
iPhoneアプリで、産経新聞のアプリが人気のようですが、やはり出版系コンテンツはiPadのような大きな画面で見たいという人が多いのではないでしょうか?
ファッション雑誌や漫画雑誌などのアプリが充実してくれば、F1やMI層の需要も喚起できますし、自宅でくつろいで雑誌を見る感覚は、PCよりiPadの方が近いと思います。また出版社もECや動画広告などの新たな売上が期待できます。
また動画の検索をiPadで行って、大画面のTVに転送して見るというようなTVとネットを繋ぐための端末になる可能性も大きいのではないかと思います。
基本的にPCは仕事をするための道具で、エンタメ系コンテンツを楽しむのはiPadなどのタブレット端末という棲み分けになると思います。
また子供や老人がネットに向かうとしたら、タブレット端末ということになるのではないでしょうか。
あるいは、芦田様も最後にご指摘のように、案外PCやスマートフォンは不要または敷居が高いというガラケー中心のユーザーに受けるかもしれませんね。
個人的に気に入らない点を列挙しているだけで、「売れない」根拠が全然書かれていない。