米軍普天間飛行場移設問題で、米国が海兵隊部隊の鹿児島県・徳之島への一部移転に難色を示していることが分かった。鳩山由紀夫首相は4日の沖縄訪問で全面的な県外移転断念を表明し、「約束を守れ」「恥を知れ!」などと猛烈な批判を浴びたばかり。徳之島活用案も断たれれば、責任追及の声は一段と高まりそうだ。
「徳之島はノーです」
4日の日米実務者協議で、米側はこう通告してきたという。
これまで、米側は普天間移設先について、(1)海兵隊の部隊運用に支障を来さない(2)移設先自治体の理解が得られる−ことを条件としていた。
米側は先の実務協議で、沖縄本島から約200キロ離れた徳之島では海兵隊の一体運用は困難なうえ、大規模な反対集会が開かれたことなどを理由に「部隊移転は事実上不可能」との認識を伝達したという。
首相は、徳之島空港を活用して最大1000人の海兵隊移転を検討。7日には徳之島3町長と都内で会談し、理解を求める考えだったが、その前に、米国から拒絶されたことになる。
防衛省関係者は「恐ろしいことに、首相や首相周辺には、基礎的な軍事知識が欠落している」といい、こう続ける。
「海兵隊の地上部隊とヘリ部隊は一体であり、切り離して運用することはあり得ない。地上部隊はヘリ部隊が近くにいてこそ、有事の即時対応ができる。ヘリ部隊は陸上に降りたときが最も弱く、地上部隊に敵の攻撃から守ってもらう必要がある。常に有事を想定するのが軍。韓国海軍の哨戒艇沈没事故で、北朝鮮の関与が疑われている。抑止力を弱める提案は、とても飲めないはずだ」
ただ、官邸内には「訓練移転なら米側が受け入れる余地がある」との見方があり、首相としては粘り強く交渉を続けていく方針という。