最新記事へリンク

所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

What's new

日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.03.31

 米「現状維持しかない」 普天間 見えぬ糸口 鳩山政権内まとめきれず 

カテゴリ沖縄問題 出典 朝日新聞 3月31日 朝刊 
記事の概要
普天間飛行場移設問題で、カナダのオタワで岡田外相は29日、クリントン米国務長官との日米閣僚級協議に臨んだ。

その前、日本側の検討状況を伝えた岡田氏に、ゲーツ国防長官は冷淡だった。「何しにきたんだろうという感じだった。日本政府としてはっきりしておらず、地元も了解していない。国内をまとめてから来てくださいという感じだった」(日本政府高官)と会談の雰囲気を語る。

クリントン国務長官との会談も、G8のレセプションを中断して行われた25分間。

米政府からは「現行計画を受け入れないのなら、普天間の現状維持しかない」との声が聞こえる。ゲーツ氏は岡田氏に「作戦運用上も政治的にも、沖縄の海兵隊の駐留の継続性を保証するよう求める」と語った。

ただ、日本側の提案を一方的に拒否して済むほど、米側も単純ではない。「現状維持なら、沖縄の反基地感情はこれまで以上に高まる。沖縄の米軍駐留、日米同盟全体に影響する」(元米政府関係者)と懸念する。

米側には、いつまでも先延ばし出来ない事情がある。米軍再編の予算を扱う議会との関係だ。米議会は現在、在沖海兵隊のグアム移転費について審議中。普天間が決着しなければ、議会がグアム移転の予算を止め、米軍再編計画が止まる恐れがある。

また、先延ばしすれば、夏に参院選、年末には沖縄知事選で、県内移設の反対世論が高まる可能性がある。

「先に行けば行くほど選択肢は狭まり、普天間の現状維持しかなくなっていく」(元米政府高官)は言う。

当初、岡田氏は、それなりに耳を傾けてもらえると見込んでいたようだ。政府案として普天間基地機能を段階的に分散移転する案であれば、「実現可能な案」として理解してもらえるーーそう思っていた節がある。

また、社民党と国民新党は30日、政権内で将来的な移設先として検討されている勝連半島沖に人工島を建設する案を撤回させる動きに出た。31日に平野官房長官に政府案から外すように要請する。

鳩山首相は、「最終的には5月末までに米国、沖縄のご理解をいただくようにしていくことが大事だ」と述べた。しかし交渉は出だしかな内外でつまずき、展望は開けていない。
コメント
普天間移設問題で、沖縄と米国に行った政府案の説明で、この問題がわずかでも前進したとは思えない。むしろ後退してしまったか、混乱にさらに拍車がかかったように見える。

米側から地元の同意を得るように求めてきたことで、米側はすでに辺野古沿岸にV字滑走路を持つ現行案をあきらめている。そんなことが許される状況ではないことを十分に理解しているはずだ。

沖縄の事情を理解して、日本政府に無理難題を要求するのは、普天間飛行場の継続使用を決めているからとしか思えない。

あくまで責任が日本政府にあることを印象づけたいようだ。

本当にアメリカにこの普天間問題を解決する責任はないのだろうか。なぜ辺野古沿岸の現行案しか認めないのか。言葉では、他の案でも検討すると言っているが、まさに言葉だけで、交渉では「現行案」だけ求めている。

オバマ大統領がアフガンに行くのだから、ゲーツ国防長官、クリントン国務長官が普天間飛行場を見に来るくらいの配慮があっていい。

もともとは在沖海兵隊をグアムに移転させ、グアムに海兵隊のアジア戦略拠点を移す考えであった。しかしグアムの狭さや、基地の使い勝手の悪さが問題になり、それでグアム基地の代替基地を沖縄に残すことを求めてきた。

もともとはアメリカの都合で起こった基地問題である。アメリカには責任がないとは言わせない。

日本の政権与党の民主党(連立政権も)や、防衛・外務の官僚には、この問題を解決する能力がないとわかり、好き勝手にアメリカの「強硬論」を押しつけているだけだ。

アメリカにはっきり言うが、たとえ鳩山首相の首をとっても、この問題は次の政権に引き継がれる。また、夏の参院選、年末の沖縄知事選と、沖縄では反米軍基地の高まりは避けられない。

アメリカはそれを承知でこの問題に対応して頂きたい。

日本はアメリカとの戦争に敗れたが、アメリカの植民地になったわけではない。

今は国民の関心が鳩山政権に向いているが、鳩山政権の次の政権も解決できないから、その次はアメリカの強硬論に向かうことになる。
BACK