宮崎

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支局長からの手紙:牛肉を食す /宮崎

 都農町で口蹄疫(こうていえき)が発生して1週間が過ぎたころ、感染疑いはえびの市まで拡大した。「こんな時こそ牛肉を食べよう」と思い立ち、宮崎市内の焼き肉店へ行った。客足について聞くと、店員は「特に影響は感じていません」。「宮崎の人はやっぱり冷静だ」とほっとしつつ、いただいた。

 家畜の病気が広がった時、最も怖いものの一つは風評被害だ。感染や感染疑いが出ていない地区でも、同じ県産というだけで敬遠されることがある。3年前、宮崎で鳥インフルエンザが発生した際、九州農政局がスーパーなど447店を調べたら、鶏肉・鶏卵に「発生地産ではない」との表示が34件あったという。

 今回、4月下旬の調査では930店舗のうち、肉に「宮崎県産は使っていません」と表示していたのは1店だった。単純に比較はできないが、口蹄疫は10年前にも経験したせいか、流通業者も冷静のようだ。

 一方、競りや催しなどの中止は周辺県にも広がっている。1頭でも感染疑いが出れば、全頭を処分せざるを得ず、農家が受ける打撃は計り知れない。感染のリスクを少しでも減らすためには、やむを得ないのだろう。

 しかし、残念な反応もある。鹿児島県の小学校2校が、5月に予定していた宮崎市への修学旅行の行く先を変更したという。私たちも繰り返し報道しているように、口蹄疫は人に感染しない。感染した肉は市場に出回らないし、仮に食べても人体に影響はない。専門家の一致した見解だ。むしろ、児童の「修学」のいい機会にできたのでは、と思えてならない。

 今後も感染の拡大防止と、農家の経済的、精神的打撃へのケアが欠かせない。同時に、抜本的な対策のためにも、前回は結局、分からずじまいだった感染ルートを解明してほしい。やらなければならないことはあまりに多いが、関係者の一層の奮闘を願いたい。<宮崎支局長・池田亨>

毎日新聞 2010年5月3日 地方版

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