襲われた男性が暮らしていたテント周辺。大阪市のテープなどで囲われていた=4月中旬、大阪市住之江区、丸山写す
今年2月、大阪市住之江区内で、野宿者の男性が少年と見られる4人組に襲われ重傷を負った。府警は傷害事件として捜査しているが、事件は発生時から発表されず、今も未解決だ。生活保護を受ける人が増えて路上生活者は減る一方、行政の排除が進み、路上に残された人は孤立している。襲われる危険性は増していると支援者らは指摘している。男性は今も入院したままだ。
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ブルーのテントは、遊歩道沿いに並んでいた。気温は0度近くに下がっていた。
2月2日午後9時、突然声が響いた。「ホームレスは出てけー」。50代の男性は息を殺していた。数日前から少年グループがテントにものを投げたり、野宿者をののしったりしていた。
男性は隣のテントに助けを求めたが不在。自転車が倒される音がした。自分のテントに戻ると、数人にけられた。作業中の事故で足が不自由で、倒れたままけられ続けた。顔から血が流れ、目は開かなくなった。暴行する若者らは無言だった。反撃しなかったのは、けがをさせたら自分が傷害罪に問われるかもと思ったからだ。
2軒隣のテントの住人が警察に通報してくれた。男性は住之江署で事情を聴かれた後、救急車で病院に。肋骨(ろっこつ)が2本折れていたが、応急処置を受けただけで帰された。
翌朝、野宿者の支援団体が駆けつけると、男性は自分で立ち上がることもできない状態だった。再度診察を受けると、眼球から出血していた。団体は、受け入れ先の病院を探し入院させた。
男性は病院のロビーで取材に応じてくれた。
襲撃された現場には昨年12月から暮らしていたという。「ああいうところに生活しているんだから、(襲撃は)まあ、仕方ない」「最近は仕事がなかった」「不安で夜は寝られなかった」。ぽつりぽつりと語った。
「(襲撃は)遊びの一環じゃないですか。永久に続くと思うよ」。退院後は生活保護を受けるつもりだという。
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