6歳で両親に捨てられ、祖父母の養子となった14歳の中学生歌手・中川あゆみがこどもの日である5日、神奈川県・ラゾーナ川崎でデビュー記念イベントを開催し、幸せというステージに向かって歩み始めた。デビュー曲「事実〜12歳で私が決めたコト〜」は、不幸な生い立ちを詞に込めた衝撃作。こどもの日にもいい思い出がないという中川は「今日は、みんなが歌を聴いてくれたことが最高のプレゼントになりました」と歌手としての幸せな時間を堪能していた。
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♪7年前 私は三原あゆみだった‐。14歳の少女が歌うギターの弾き語りに、観客はくぎ付けとなった。まばらだった観客は気付けば500人に。自身で作詞したデビュー曲の歌詞は、あまりにも衝撃的だった。
事実しか歌わない‐。そう決めた中川の持ち歌は、2曲しかない。6歳で、父は「また会いに来るから」と姿を消し、母は「私には私の人生がある」と親権を放棄した。祖母の養子となり、祖父母が“両親”となった。
4日に14歳の誕生日を迎えたが、プレゼントをもらった経験もほとんどなく唯一、覚えているのは5歳の誕生日に祖父母に贈ってもらったギター。祖母のスナックでご褒美のポッキーを楽しみに6歳からギターの弾き語りを始めると、小学校3年生から「神田川」などフォークソングを歌う路上ライブを行った。
「誰かの人生を変えられるシンガーになりたい」とオーディションを3年連続で受け、デビュー切符をつかんで迎えたこの日の晴れ舞台。大人が目の前で言い争いをし、姓が中川に変わったこと、筆箱や体操着の名字を消し、「あゆみ」という文字だけが残ったこと…寂しげで胸を打つ詞がつづられた2曲を歌い上げた。
「今の自分があるのは昔の両親(実の両親)がいたおかげ。会って『ありがとう』を言いたい。離婚当初は不幸を感じていたけど、今は幸せです」‐。華やかなステージを夢見る少女は新たな人生の一歩を踏み出した。