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2010-05-03 快晴

[][][]米国住宅価格崩壊はまだまだ続く

Mishが紹介していたPatrick.netのこの記事が面白い。例によって超手抜き意訳。

1. 住宅価格はまだまだ下がる

 ほとんどの地区で住宅価格はまだまだ下がっていく。住宅価格は、給与水準や賃貸相場と比較すると、危険な水準にある。銀行によれば、安全な住宅投資とは頭金20%で、年収の三倍までと言われている。賃貸のための投資は、年間家賃収入の15倍までが安全と言われている。

 だが、米国の西海岸東海岸沿岸部ではこれらの基準は相変わらず通用していない。買手は年収の6倍もの借入をしつつ、頭金は3%しか入れていない。そして売手は昨今の住宅価格下落にも関わらず、年間家賃相場の30倍もの値段で家を売ろうとしている。

 賃貸は、純粋な現金商売である。借手はその収入に見合った家賃しか払うことしかできない。いくら借りられるか、という問題ではないのである。すなわち、給料と家賃の水準を比べることで、住宅価格は今後も延々と下がっていくことが見えてくるのである。昨年夏以降、「バーゲン」と思って家を購入した人の多くが、すでに損失で痛い思いをしているのである。

2. 買うより借りる方が圧倒的に安い

 同じ地域なら、家を買うよりも借りる方が圧倒的に安い。米国の沿岸部での年間家賃は、住宅価格の3%程度。購入する場合、金利は6%。つまり、家を買うのは、家を借りるよりも二倍高くつくのである。賃貸は勝ち組、購入は負け組

 さらに、購入する場合には税金保守費、保険なども考慮する必要がある。これらを含めると、年間費用は住宅価格の9%になる。つまり、賃貸の3倍であり、各種税控除の恩恵は軽く吹っ飛ぶ。

 収入が高水準な地域で家を購入するのは、非常に割の悪い取引なのである。一方で、既に住宅価格が充分下がっている低所得地域では、購入を考えてもよい場合もある。給与水準と賃貸家賃水準の比較がその判断基準になろう。購入と賃貸のどちらが有利かは、NYTimesのサイトで確認できる。

住宅相場が底値にあると判断できるのは、その家を賃貸に出して利益を出せる状態である。その家を賃貸にだして、家賃収入でローン返済を賄えるのなら、あらゆるリスクを回避することが出来る。家を安心して買えるかどうかを判断するには、(その家と同等の賃貸の)年間家賃を、住宅価格で割れば良い。

  • 年間家賃÷住宅価格 = 3%...買うな
  • 年間家賃÷住宅価格 = 6%...境界線
  • 年間家賃÷住宅価格 = 9%...購入OK

 例えば、毎月の家賃が$1000程度の家を$20万で購入するのは、上記境界線に相当する。月$1000の家賃は、年間で$12000。$20万を6%ローンで購入する場合の金利は、年間$12000。つまり、どちらもざっと同じ。仮に買った家を$1000で賃貸に出しても、金利分は税引前家賃で賄える。ただし、補修費や不動産税等々もあることを忘れないように。

 明らかに、この家を$40万で買うのは馬鹿げている。仮に賃貸に回しても、返済額の半分しか賄えない。この価格水準なら、買わずに賃貸に住む方が圧倒的に安全である。

3. 金利が低いときに家を買うのは最悪

 現在のように、金利が低い状態は家を買うのには最悪である。不動産を売りつける恥知らずな連中は、この事実を全く説明してくれない。金利の上昇に伴い、住宅価格は下落する。金利が高い状態では、月々のローン返済でカバーできる元本分が減ってしまうから。

 そして、現在金利はこれ以上下げようのない水準まで下がりきっている。今後金利は上昇するしかない。すなわち、住宅価格は下落するしかない。

 このゲームで勝つには、できるだけ多くの貯金をしておくことである。そして、金利が上昇し、住宅価格が下がりきったときに、しかも他の皆さんが高金利で借りづらい時に、家を買うのである。下がりきった住宅価格は、その後の金利下落に伴って上昇を始める。 反対に、現状のように、下がりきった金利で、高値で家を買うのは大間違いなのである。

 価格の下がった住宅を高金利で買うのと、価格の上昇した住宅を低金利で買うのとは、月々の返済額では差がないかもしれない。だが、以下の理由により、低価格+高金利のほうが圧倒的に有利である。

  • 不動産税が安くなる。
  • 繰上返済しやすい。高価格でつかむと、一生ローン地獄になる可能性が高い。
  • 金利低下により、住宅価格が上昇する余地がある。
  • 高値掴みは住宅価格下落により、債務超過になるリスクがある。この状態では借換は不可能である。売れば損失が顕在化する。低金利固定の長期ローンであっても、金利上昇に伴ない住宅価格が下落すれば、債務超過リスクは残る。価格が低い状態で買うのが一番である。

4. 借りすぎて返済不能

 借りすぎて返済不能に陥っている買手がたくさん存在する。ローン残高よりも価値が少ない家に対して金を使いまくったわけである。当然、こういう借手に貸し付けた銀行も破綻状態にあるはずである。だが、銀行はワシントンの政府にたくさんお友達がいる。住宅ローンに苦しむ庶民と異なり、銀行には特別な対処が施される。Fedは新規に通貨を発行し、阿呆な銀行から無価値な住宅ローンを買取る。これにより、新規買手にはうれしい住宅価格デフレの進行は抑えられ、銀行が本来被るはずだった損失は、納税者全体に押し付けられることになる。

 銀行と政界の癒着はこれだけでは足らないようだ。議会は既に膨大な額のTARP資金を納税者から確保している。この資金は住宅ローンギャンブルに賭けて負けてしまった最悪な経営の銀行に貸し付けられるのである。Fed議会は、これらの銀行が問題を先送りしながら、住宅ローン損失を取り戻そうとしているのだ。

5. 背伸びしすぎた買手

 レバレッジをかけすぎた買手の存在。購入資金を借り入れてレバレッジをかけることで、利益は増幅される。だが、多くの人はレバレッジが反対方向にも作用することを忘れている。買手が10%の頭金で家を購入したとしよう。その家の価格が10%下落したら、買手は額面上100%の損失を計上することになる。仮に買手が職を失ったなどの理由で家を売ることになると、買手は100%の損失を認識することになる。

 賃貸派の人は、貯金しようとする意思があり、実際に貯金出来るのであれば、実は住宅ローンを使う人の半分の期間で家を買えるのである。住宅ローンを使う場合、購入資金のおよそ半分は利払いに使われる。賃貸しながら貯蓄する人は、住宅ローンの利息を払う必要がないし、貯金からの利息も入ってくる。レバレッジがかかった家の価格上昇は蓄財への秘訣とされているが、あてにしてはならないし、反対に作用することもある。レバレッジが反対に作用した結果が、昨今の住宅ローン地獄を生んでいるのである。

 高価格帯住宅は、大幅な価格下落の瀬戸際に来ている。その下の価格帯住宅の含み益がなくなってしまったので、高価格住宅の頭金を用意できる層が減ってしまったのである。含み損を抱えた家のローンを払いつつ、高価格住宅購入のための20%頭金を貯蓄するのには非常に長い期間を必要とすることであろう。

 さらに。住宅価格が下落しなくても、損失は生じるのだ。家を売る際の手数料は6%と決まっている。不動産業界がロビイストをつかって政界に働きかけた結果だ。30万ドルの家の場合、購入価格と販売価格が同じだったとしても、手数料で$18000が消えてしまう。つまり、家の価格が4%下落するだけで、頭金10%分がすっ飛ぶわけである。

6. 需要と供給の問題ではない

住宅バブルは需要と供給の関係で生まれたのではない。過剰建築により、供給はだぶついている。引退を始めるベビーブーマー達は、家を売りに出してくることはあるが買いに回ることは少ない。にも関わらず、住宅価格がバブル状態にあるのは、銀行の融資姿勢にある。ほとんどの借手は、借りられるだけ借りようとする。収入に見合った額や、住宅価格の賃貸価値に見合った額などとの関連はまったくない。こういった狂った借手にも貸してやろうとしているのは銀行の側なのである。銀行が政府を操っているので、銀行は損失を気にする必要がない。いざとなればFHAなどを通じて、納税者に損失を押し付ければいいのだから。

7. 隠れ破綻物件

統計に現れていない、大量の破綻物件が存在し、しかもその数は増加中である。何百万人という借手が、住宅ローンの返済を意図的に止めている。そして、銀行はこういう人達になにもしようとしない。その家にタダで住まわせているのだ。もし、銀行がこれらの物件に対してフォアクロージャ手続きを取ると、銀行は不動産税や保守費を払う義務が生じてしまう。銀行はこういう費用を負担したくないのだ。また、フォアクロージャ処理過程で銀行が住宅を現状価格で販売すると、住宅ローンの損失を認識する必要が出てくる。今はこうして銀行が無視しているが、やがては破たん処理に追い込まれる物件が津波のように押し寄せてくるだろう。破たん処理を先送りすることは、住宅をできるだけ安く購入しようと準備している家族たちを妨害することでもある。津波のようにやってくる破綻物件が、住宅市場の光景を一変させる日が訪れるであろう。住宅価格は一桁下がり、何百万という世帯が無謀な借金をしなくとも、いや、もしかしたら一切の借入なしにでも、住宅を買えるようになるかもしれない。フォアクロージャ処理のおかげで若い家族が安く家を買える、という利点が強調されるニュースが流れないのはおかしいよね?

8. カモとなる初回購入層の枯渇

 始めて住宅を購入する層の大半は無慈悲に搾取され、新たなカモはもうほとんど残っていない。ヘラルド紙より引用: 「我々は住宅バブルにより堕落してしまった。人々は、買った家がいかに多額の富を生み出してくれたか、ということばかり自慢げに話していた。だが、この富がどこからやってきたのかを語ることはなかった。その富はどこから来たか? それは我々の次世代から搾取してきたのだ。 住宅価格の上昇が富を産むことはない。単に若い世代から、上の世代に富を移転しているだけなのだ。これから引退しようとする世代は、家を売って現金を得ることができる。その家を買う世代は、膨大な借金を背負うことになる。」

 住宅価格上昇は、若い家族、特に子供のいる若い家族には非常に不利な構造である。今の価格で住宅を買うのは、馬鹿げているともいえる。そして米国政府・議会は、住宅価格が下がることでどれくらい米国の若い家族が利益を得られるかを決して語らない。むしろ、若い、低所得の家族たちを犠牲にして、年寄り・高所得層の利益を優先させることを好んでいる。そしてより多くのローンを組ませることで、銀行が充分な金利収入を得られるようにすることを忘れない。

 政府の「住宅購入支援プログラム」は、ことごとく住宅価格を押し上げ、購入者の負債を膨らまし続けてきた。負債をふくらませるのは購入支援でも何でもなく、破綻の先送りである。本当にアメリカ市民を助けたいのであれば、Fannie MaeもFreddie MacもFHAも、すべて廃止されるべきであるし、住宅ローン金利の税控除も不要である。カナダ住宅ローン金利は、課税控除対処ではない。だが、カナダの住宅はより購入しやすいし、市場も安定している。

 政府は国民の住宅購入を支援すると口では語っている。だが、今となっては住宅価格を下げる以外に購入促進する術はない。政府は住宅価格下落をとめようとしていないか? その行動が政府の意図を全て物語っている。

9. ベビーブーマー世代の引退

 ベビーブーマー世代は定年を迎えつつある。1945年1960年の間に生まれた7000万のアメリカ人。その1/3は定年後の蓄えがない。彼らの最年長は現在64歳。蓄えがない以上、家を売るしかない。その供給件数は膨大なものになり、住宅市場への大きな圧力となろう。

 すでに大量の空家物件が市場に存在している。住宅建設業者達は、中古市場での価格下落より激しい勢いで新築住宅の価格を下げてきている。建設業者は家を建てないことには商売にならないから、とにかく家を作り続けるしかないのである。すでに大量の新築空家物件を抱えている一方で、さらに新規建築を進める結果、住宅価格の下落はさらに進行する。

---考察---

項番2について。「ローン返済額」と「家賃」とを比較してどちらが得かを考える記事は見飽きたが、「ローン返済額における利息分」と「家賃」とを比較するという発想は新鮮だった。家賃も利息も戻ってこない、という点では同じ。例えば自分のすんでいる2B/2Bのアパートは家賃$1600。すぐ近所に、同時代に建てられたコンドがあるが、ここの価格は$55万前後。6%で借入れすると、月々の利息は$2750。つまり、そのコンドは賃貸に比べると1.7倍高い、ということになる。適正価格は$32万程度。


項番3は、自分の両親が教えてくれたし、実践していた。金利が高い時に借りるのはしんどいようだが、実は買い手市場なので有利に物件を買える。しかも、その後の金利低下時にローン借り換えする余地が残る。金利が底に張り付いたときに物件を買ってしまうと、借換えの余地はなくなる。


項番8も、よくよく考えるとそのとおりだな、と思った。Ponziスキームそのものじゃん。


項番9は知らなかった。リタイアするアメリカ人ベビーブーマーが7000万人いて、その3割は「貯蓄ゼロ」。つまり、2100万人は家を(持っていれば)売りに出してくる。


今回の不況はSecularな変化、という読みに確信を持った。

tougetouge 2010/05/04 02:27 翻訳ありがとうございます。
今回は力作ですね。

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