小泉規制緩和の犯罪性暴露 米国・各国の株暴落拡大 米国に運命ゆだね破綻へ 2008年9月19日付 |
アメリカの金融破綻は、各国中央銀行が40兆円にのぼる救済資金を供給しても、収束するどころかますます信用不安が広がっている。アメリカを筆頭にして記録的な株価の暴落がつづいている。日本では、自民党のノー天気な総裁選の最中である。日本では、万事アメリカの要求するとおりの小泉・竹中による市場原理改革をすすめてきた。日本の資金は、低金利政策の下でアメリカに流れるように仕組まれ、どれだけの不良債権を抱えているのかわからない。事態は、小泉以来の自民党政府による対米従属政治の犯罪性を遺憾なく暴露しつつある。 米国に流れた資金は紙くずに 17日のニューヨーク株式市場は、再び大幅安を記録した。15日のリーマン・ブラザーズ破綻の影響でダウ平均が500j安を記録して以後、17日には保険・金融大手のAIG救済策を政府が打ち出し、収拾をはかった。ところが効果は1日と持たなかった。「自力再建が不可能なほど経営危機に見舞われている」との判断が広がり、取引が終わってみると449j安。救済策がまったく金融市場に受け入れられなかったことを物語った。今週だけでも、ダウ平均の下落幅は812jに達し、1万609jまで落ち込んでいる。また、株式市場すべてが連動して暴落をはじめており、NYダウが今後も1000〜2000jとすさまじい勢いで下がり続けると、世界中の金融機関が経営困難に追い込まれる事態も予想されている。 18日の日経平均株価も大幅に下落し、260円安となった。公的年金ファンドなどが買い上げをやって、なんとか下落幅をかさ上げしている。日経平均が1万円を割り込むのも時間の問題となっている。いまのところ、国民の年金が膨大な損失を抱えながら、買い支えしている格好だ。 EUもアジアも全面安。香港H株指数は10%程の暴落で底抜け状態。新興国でも軒並み暴落しており、韓国、ロシアなどはドル売りで通貨の混乱を抑えようとしている。新興国の外貨準備高は限られているので、枯渇すると通貨危機に陥ることもありうると指摘されている。ロシア株式市場では、暴落に直面して2日連続で一時取引停止になった。 米国市場では、リーマン、AIGに続いて、シティグループ、モルガン・スタンレーの株価が暴落をはじめており、次なるターゲットとなっている。米証券2位のモルガン・スタンレーは生き残りをかけて大手銀行のワコビアと合併交渉をはじめた。モルガンの株価はこの10日間だけで50%も下落して、価値が半分に目減りしている。相手方のワコビアも17日の取引で前日比21%安の9j12kにまで落ちている。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスも10%以上の暴落を続けている。 半年間の下落幅を見てみると、リーマン、AIGは9割以上下がっており、ワシントン・ミューチュアル74・9%、ワコビア55%、メリルリンチ46・1%、モルガン・スタンレー21・1%、バンク・オブ・アメリカ17・8%、シティグループ15・4%とすさまじい。 この間、金融株だけでなくハイテク株も軒並み下落。産業分野では、GMなどビッグスリー首脳らが米政府に融資を懇願するなど、危機的状況に追い込まれている。「カネがない」の大合唱である。 救済されたかに見えたAIGであるが、9兆円をNY連銀が融資すると発表し、米国政府の管理下に置かれ、実質的には国有化されることになった。 ところが同社の株価は45%以上も暴落して、1j台突入の兆し。「素早い救済策」といわれたが、市場の反応としては1日も持たない結果になっている。当面の資金繰りに9兆円融資が役立ったとしても、いつまで続くのかはわからず、保険契約の解約が殺到していけば何の意味もなく破綻する運命。九兆円融資もAIGの総資産を担保に行っており、資産そのものが吹き飛べば融資を実行できない関係になっている。AIGが発行する社債は額面の半値でたたき売られ、解約が殺到している状態だ。世界130カ国以上で、保険関連業務を行っており、破綻すれば世界の金融市場をさらに揺るがすことになる。 日本へ与える被害深刻 農林中金等 日本での被害も膨大なものとなる。すでにサブプライム債券を買い込まされているのが、農漁民の預金を元手にした農林中金で約5兆3000億円保有、三菱UFJが約2兆8500億円、日本生命が約2兆9000億円、第一生命が約1兆3000億円など、合わせて約14兆円を保有しているとされている。ほかにもこの債権を買い取らされていた年金運用団体や共済組合、各種金融機関が大損害を被ることになる。 AIGグループ企業としては米AIGが100%出資しているアリコジャパン(保険料収入1兆4700億円)、AIGエジソン生命(4100億円)、AIGスター生命(2700億円)のほか50%出資のジェイアイ損保(140億円)、23%出資の富士火災海上保険など、傘下企業が保険稼業で資金をかき集めてきた。保険料収入の総額は年間2兆5000億円を超える。AIGにとって日本は米国に次ぐ有力市場とされ、保険料収入の25%を日本で稼いでいる。90年代の日本の金融ショック時に旧千代田生命や旧東邦生命などを買収するなどして食い込んだ経緯がある。グループの日本国内における保険契約件数は1000万件を超えている。日本国内の従業員数だけでも約2万6000人で、外資系では最大規模。影響は大きい。 フレディマック、ファニーメイの株価も下がり続けて、“破綻株”状態は変わらない。「公的資金投入で救済」とはいってきたものの、こちらも政府保証がついたわけではなく、両公社の債券を大量に保有してきた中国やロシアで売り飛ばす動きが止まらない。米政府が「政府保証」を明言すると550兆円が政府債務の扱いになる。財政出動による沈静化は、米国債の暴落、さらにはドルの暴落、すなわちより大変な破局につながりかねない。 この数日間、FRB・ECB・イングランド銀行、日銀など各国中央銀行は総額で40兆円ちかい資金を市場に供給し、市場を落ち着かせようとしてきた。日銀は、18日午前にも短期金融市場に1兆5000億円の資金を供給。午後にも1兆円を供給した。3日間連続でぶち込んだ資金の総額は7兆円にもなった。しかし市場は日持ちしない。 日本国内への影響では、野村アセットマネジメントや住信アセットマネジメントが、AIG関連投信の新規契約・解約を停止した。債券の値付けができなくなったため。また、リーマン・ブラザーズが破綻したため、財務省が発行を予定していた国債のうち、同社が落札していた1287億円が発行できない、という事態も起きた。落札代金が支払えないためである。国内の主要銀行のリーマン向けの債券額は総額にして3200億円で、うち1400億円については保全されていない。 アメリカのバブル的狂乱が終焉を迎えるにあたって、世界各国から巻き上げた多額の資金が紙屑になろうとしている。日本も一蓮托生で余波が襲いかかってくる趨勢だ。小泉改革といってこの数年来、日本の運命をすべてアメリカに委ねるようなことをやってきたし、金融資産を投げ売りしてきたからである。最先端の経済改革のような顔をしてやってきた市場原理、新自由主義改革というものの犯罪性が白日の下に暴露されようとしている。 90年代から金融自由化 米国の圧力で 90年代半ばから“金融ビッグバン”といって大騒ぎして米国の圧力で金融自由化がはじまった。外国為替法が改悪され、直後から日本国内にアメリカ金融業界が殴りこみをかけ、「自由に資金を日本に持ち込ん」で、大銀行や大企業の買収・乗っ取りをはじめることとなった。破たんした旧長銀(現在新生銀行)や旧日債銀(現在あおぞら銀行)を日本政府から二束三文で買いとると、株価を巧妙に釣り上げて売り逃げしたり、株式の利ざや稼ぎでボロ儲けしたり、しまいには郵政民営化で郵貯350兆円まで分捕るなど、横暴な振る舞いをくり返してきた。 大手金融機関の整理過程を見てみると、金融庁や財務省が圧力を加える形で、事は進行した。80年代後半に生じたバブルで、銀行は土地や株、債券や為替などの投機に預金を貸し出したり、銀行自身もバブルに熱中して、「賭博」に負けた。その損失が「不良債権」と称して公的資金で補填されて、弱り切ったところから息を吹き返す過程で、キレイに外資にのっとられてきた。 金融ビッグバン以後、規制が取っ払われた金融機関は資金を「自由」に海外の株式や債券に投資できるようになり、短期に儲けて不良債権を処理するとして、国民の預金や年金資金の多くを米国の株式などの市場に投じてきた。日銀が低金利政策をやっているからなおさら、外資が「円キャリー・トレード」などで資金を調達していくことにもなった。そしてアメリカの証券会社などが、日本で低金利の資金を調達して日本企業を買収するというバカげたことがやられてきた。 アメリカ政府は自民党政府にたいして毎年「年次改革要望書」を突きつけ、実行させてきた。それによって、持株会社の解禁、NTTの分離・分割、金融監督庁の設置、企業における時価会計の導入、大規模小売店舗法の廃止、BIS規制、三角合併の解禁、郵政民営化などが要求され、一連の規制緩和を立て続けにおこなっていった。 ルールを緩めて得をしたのはアメリカ資本と大企業や巨大銀行で、そろって史上空前の利益を叩き出し、その余剰資金にファンドやハゲタカ外資がまぶりつく。投資先に困るほど「もてあましている金」が溢れて、金利の高い米国市場に流れ出すというシカケである。国内では、従来の金融方式(金融の中心は銀行で、銀行は貸付・返済が中心だった)から証券金融(株で資金を調達する直接投資型の金融・ギャンブル)へと切り替わっていった。 外資が日本企業乗取り ホリエモン騒動等 安く買った株を高く売り抜けるために、企業に徹底的にコスト切り下げを要求する手口も露わになった。労働者を搾り上げて儲かった資金は、米国債券を買い取ったり、米国のサブプライムローンなどに投機したり、ゴッソリ持ち逃げされたほか日本企業を外資が買い取る資金にもなった。 企業乗っ取りとして象徴的だったのはホリエモン騒動。メディアが騒ぎ上げたニッポン放送の争奪合戦は、外資のメディア支配という要求にそって、堀江貴文氏のライブドアがフジサンケイグループ乗っとりに走っただけであるが、ホリエモンはリーマン・ブラザーズ証券から800億円もの資金を借り入れ、その後押しでニッポン放送株を35%取得、筆頭株主になった。結果的には乗っとりならなかったものの、フジテレビからは約1400億円をせしめた。 その陰で、リーマン・ブラザーズ証券が1000億円超を儲け、もともとニッポン放送株を大量に持っていた米投資運用会社サウスイースタン・アセット・マネジメントも売り抜けて17億円以上もの利益をあげ、村上ファンドも30億円前後を手に入れたりした。 似たようなやり方でゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリルリンチ、日興コーディアルを買収したシティグループなどが暴れ回り、ダイエー、西武、カツラで有名なアデランスにいたるまで、すでに日本の主要企業の約四割は外資に乗っ取られたとされている。 そして庶民は貧困化して日銭暮らし。若者に職はなく、中小企業はヒイヒイいって、年老いたらホームレスや孤独死、自殺するほかない運命が強いられてきた。「金は天下の回りもの」ではなく、巨大資本が握って放さない。しかもアメリカに垂れ流しだから、みなが貧乏になってきたのである。そして、モノが有り余っているのに買えず、実需はますます冷えきってきた。 日本の銀行や企業、保険会社は主に外国ファンドに資金を委ねている。銀行が米国市場に持ち出しているといわれている国民の約150兆円の預金や年金資金は、いずれおとずれる株の暴落で50兆〜70兆円になり、さらにドルの暴落で40兆〜50兆円にまで減ってしまうといわれている。政府・民間資金をすべてひっくるめたら、米国債買いなどで400兆円は上回るという指摘もある。 敗戦後つづく売国政治の上に、中曽根政府からとくに小泉政府以後の日本売り飛ばし政治の結末が、無惨なる結果としてあらわれようとしている。アメリカ仕込みの竹中、さらにホリエモンや村上ファンドなどが、「最新式の経済学」などといって威張ってきたが、それはならず者のイカサマバクチの屁理屈にすぎなかったことが歴然としたものとなった。日本の平和と繁栄のためには独立が不可欠であることを、身にしみて思い知らせることになった。 |