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[ICON]永田町異聞

永田町異聞

新恭

某全国紙の社会部記者として13年活動した後、ファッション業界に転じ、アクセサリーショップ8店舗を運営。

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官房機密費を暴露した野中広務の真意を測る

内閣官房長官に一任され、ときの政権が内密に使える便利なおカネが、いわゆる「官房機密費」だ。

2002年から2009年まで毎年、14億6000万円が予算計上され、内閣情報調査室の活動に充てる2億円ほどを差し引いた残りの12億円余りを官房長官の裁量で使ってきた。

野党対策や飲み食い、外遊する議員への餞別、はては女性問題の尻拭いに使われたなど、昔からとかく噂が絶えることがない。

使途は問われず、領収書はいらない、会計検査院もノータッチ。早い話、私的流用しても分からない。

それでも、元手は国民が汗水流して納めた血税だ。無関心ではいられない。

今になってなぜか、このカネの使途をごく一部ながら暴露し、いわくありげな風情を漂わせているのが小渕政権で官房長官をつとめた野中広務氏だ。

先日、TBSのニュース番組でぶちまけた内容を、一昨日も、くりかえし記者団に説明した。

官邸の金庫から毎月、首相に1000万円、衆院国対委員長と参院幹事長にそれぞれ500万円、首相経験者には盆暮れに100万円ずつ渡していたという。

衆参の国対関係者に野党工作として機密費を渡していたのは政界では常識になっているが、首相経験者に、中元・歳暮にしては高額な現ナマをプレゼントしていたとは、あきれるほかはない。

それよりも、ジャーナリズムにとって深刻なのは「世論操作のため複数の政治評論家にもカネをばらまいた」という事実だ。

想像はしていたが、カネを配った当の本人が言っているいるのだから、リアティは100%といえる。

「前の官房長官から引き継いだノートに、政治評論家も含め、ここにはこれだけ持って行けと書いてあった。持って行って断られたのは、田原総一朗さんただ1人」

わざわざ良い意味で名前を出してもらった田原氏はさぞ嬉しかったことだろう。

「政治家から評論家になった人が、『家を新築したから3千万円、祝いをくれ』と小渕総理に電話してきたこともあった」

あつかましい御仁もいるものだ。ペンや輪転機や電波をバックに、金品をたかるなど、ジャーナリストの風上にも置けないではないか。

むろん、そうしたカネは、政権にメリットがある、つまり社会的に影響力のある大物評論家にしか渡らないだろう。

そういえばあの著名評論家・・・などと、想像してみるのもむなしいが、これでは、ペンの矛先が鈍るのもむべなるかな、である。

かつての社会党同様、地下水脈で自民党と結びつき、批判、追及ポーズをとるだけの、馴れ合い評論家だったことになる。

評論家には定年がないから、おそらく、今も活躍されているのではないだろうか。

野中氏は「国民の税金だから、政権交代を機に改めて議論し、官房機密費を無くしてもらいたい」と、このタイミングでの公表に、もっともらしい理由をつけている。まことにスジが通っているようにも聞こえる。

ただし、ここは冷静な視点も必要だ。最近の民主党批判の典型的パターンを思い起こしていただきたい。

「たしかに自民党はこういうことをしてきた。しかし、民主党はその政治を変えるという期待を担って政権交代したのだから、変えられなければ国民への裏切りだ」

変革の過程における試行錯誤など一切無視して、現状を断罪し、過去を免罪する。視聴者や読者を妙に納得させるレトリック。

自民党など野党はもちろん、それこそ多くの政治評論家やジャーナリストがこれを利用して、世論を誘導しているフシがある。

野中氏は、その流れを鋭く洞察し、明らかに利用しているようにも思えるのである。具体的に言うとこういうことだ。

自らが会長をつとめる全国土地改良事業団体連合会が、昔からの犬猿の仲、小沢幹事長の判断でばっさり予算を半減させられたのは周知の通りだ。
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