体脂肪を減らすという触れ込みで、ダイエットをしている中高年の人気を集めているサプリメント「α(アルファ)リポ酸」を飲んで、震えや動悸が起きたケースがあることが分かってきた。
αリポ酸は体内に存在し、糖をエネルギーに変えて燃えやすくする働きがある。ところが加齢とともに減り続け、二度と作り出すことはできないと言われている。そこで、手軽に補給できるサプリメントが数年前から中高年に人気となっている。
震えや動悸の正体は「低血糖症」
大手メーカーからも発売されていて、
「それほど食べていないはずなのに太る、ダイエットをしてもなかなか以前のようにはやせられない、年齢とともにそのような変化を感じたら、ぜひα−リポ酸をお試しください」などと宣伝している。
震えや動悸の正体は「低血糖症」だ。独立行政法人国立健康・栄養研究所は、αリポ酸を摂取して自発性低血糖症になる人もいるとホームページで注意を促している。
低血糖症は一般的には糖尿病の治療に用いられるインスリン注射を打つ時などに起こる。ところがインスリンを摂取していないにもかかわらず低血糖症になることがあり、「自発性低血糖症」と呼ばれている。
自発性低血糖症を引き起こす「インスリン自己免疫症候群(IAS)」は1970年に見つかり、世界で300例程度が報告されている。その9割は東アジアで特に日本に多い。特定の白血球の型がIASの発症に関係していると考えられている。この型を持っている人は欧米人では1%未満なのに対し、日本人は4〜8%と高いからだ。
また、αリポ酸が原因と見られるIASも報告されている。
厚生労働省研究班(東京女子医大糖尿病センター内潟安子教授)が行った全国アンケート調査で、αリポ酸を飲んで震えや動悸が起きたケースが2007〜09年の3年間で少なくとも17件起きていた。
独立行政法人国立健康・栄養研究所のホームページには、こんな例が掲載されている。
34歳の女性はαリポ酸を2週間程度、摂取した後に動悸と手足の震えが起こった。48歳女性は1か月程度飲んでいたら、冷や汗、吐き気、めまい、寒気の症状が出た。36歳女性は1か月で空腹時の異常な飢餓感、震え、発汗異常、思考力低下、浮遊感が現れた。35歳男性は4か月続けていたら、発汗や震えの症状が出た。23歳女性は3日間にわたって過剰に摂取したら、空腹時の手足の震え、舌のしびれ、全身の皮膚に発赤や発疹があった。いずれの場合も摂取を止めたら回復した。
サプリを過信してはいけない
国立健康・栄養研究所の情報センター長、梅垣敬三さんは、
「健康ブームでサプリメントを飲む人が増えて、健康被害の報告も増加傾向にあります。ほとんどの人はサプリメントのいい情報しか知らないで飲んでいますが、飲む前に健康被害がありうることを知っておくことが大事です」
といっている。
サプリメントや健康食品による健康被害はほかにもたくさんある。
厚労省・医薬食品局食品安全部の担当者は、
「健康被害の事実はありますが、なぜそうなるのか、どのくらいの量を摂取すると症状が出るのか、といったことは明らかになっていません。そもそも食事や運動で健康維持するように心がけて、サプリを過信しないことです」
と注意を促している。