第60回　 歪んだ優越感 テレビ番組でタイで男を買う日本女性のリポートをしていた。 主に20代から40代までの女性がタイに男を買いに行くという。 テレビの映像では、 クラブの舞台上でビキニブリーフだけの若いクラブボーイの集団が 客に向かって腰をくねらせたりしながらアピールをする。 客席の最前列には日本の20代の若い女性が熱心に見入っている。 日本女性のタイの男性買春が増えているそうだ。 20代の女性は二人の男性を店から連れ出した。 費用はクラブの飲食費と男性二人を連れ出す費用でわずか3000円。 彼らは屋台で食事をしたが三人分で食事代金は500円。 その後、女性はタクシーで自分のホテルへ二人の男性を連れ込み、 朝まで過ごした。 朝、ロビーに現れた女性へのインタビューで彼女は言った。 「日本の男とはタダでもつきあいたくない。 タイではたった3000円で女王様の　ようになれるから」と言った。 楽しかったか？の問いに 「凄く楽しかった、人生観が変るほど楽しかった、アハハ」 また他の女性はタイの男性が欲しいという物を片っ端から買い与えていた。 行き先々で財布からお札を矢継ぎ早に取り出す女性の姿は異様に見えた。 絶対にいやとは言わないそうだ。 たぶん彼女らはズルズルと深みにはまるだろう。 フィリピンかどこかは忘れたが、アジアの男性に夢中になった女性作家がいた。 作家になる前にアジアの男に嵌り、日本から定期的に通ってその顛末を 文章にして話題になり作家になったようだが、 いつだったか本に書いた男とはもう別れて 別のアジアの男とつきあっていると言っていた。 彼女たちは一様に「日本の男と違ってやさしい」と言うが、 そのやさしさが何に向けられているのかわかっているのだろうか？ すでに一人前の大人の女性の行動にいろいろ言いたくはないが 現地で男を買いあさる日本女性の姿が日本の印象を変えてしまうのが恐ろしい。 さらに、少年のような印象のタイのお相手の男性は 「女性がコンドームを使わないので困ります。ボクたちはエイズが怖いのです」と 　困惑していた。 「どうしてコンドームを使わないのか」と女性にインタビューすると 「自分は大丈夫だと思っているから」と、なんとも無責任な返事があった。 彼女は知らないのだろうか？ タイでは現在HIVやエイズ感染者が100万人もいるという事実を。 それに比べて日本はまだ1万人足らずだ。 だが安心はできない。週刊誌のタイトルを見てぞっとした。 「援交で小学生がHIV感染」 「先進国で唯一感染者が増え続ける日本の怖い現実」 買春は世界でも悪名高い日本男性の専売特許かと思っていたら 日本女性も負けてはいないようだ。 最近のヴェトナム旅行では、 同じホテルに宿泊していた中年男性と夫が話していた席に同席した。 男性は話の中で言った。 「欧米では有色人種として差別されるが、アジアでは優越感に浸れるから 　アジアしか旅行をしない」 現地のメコン川デルタツアーで一緒になった30歳代の日本人男性は ボートを漕いでいた女性に5万ドン（邦貨で350円くらい）のチップをあげた。 チップはあげなくてもかまわない国だが、あげるとしたら相場は2千ドンだから 破格の額だ。 彼は言った。 「チップが高いのはわかっているけれど、たったの350円で喜んでくれるなら 　安いもの」 つまり女性がタイで男を漁るのも、アジアしか旅行をしない男性も 旅行先での大判振る舞いも、究極は歪んだ優越感ということになるのか。 金銭で優越感に浸るということは裏を返せば劣等感ということにもなるはず だからなんとも哀れで悲しい。 HOME TOP 　NEXT