池田信夫 blog

Part 2

広告収入に依存した地上波テレビ局は滅亡に瀕しているが、衛星やケーブルによる有料テレビの視聴時間はむしろ増えている、と今週のEconomistの特集は伝えている。平均的なアメリカ人は週37時間もテレビを見ており、これはYouTubeなどのオンラインビデオの10倍以上だ。アメリカのテレビは600チャンネル以上あり、最強のテレビ局は4大ネットワークではなく、コムキャストである。


問題はテクノロジーではない。有料テレビのほとんどはSDTVで、PCでも受信できる。HDTVを売り物にした地上波テレビの視聴者は、アメリカでは10%に満たない。日本の「ワンセグ」のような携帯放送はうまく行っておらず、日本と韓国以外には広がらないだろう。3Dはヒットしているが1日中見るものではなく、ニュースを3Dで見る人はいない。その普及は、ヘビーユーザーに限定されるだろう。

イノベーションは、技術ではなくコンテンツで起こっている。PCでSNSなどと結びつけてターゲットを絞った双方向ビデオが流行する一方、BSkyBやMTVは数億人の視聴者をもつグローバル企業になりつつある。昔ながらの広告モデルは新興国では有効なので、古い番組を新興国に輸出するビジネスも有望だろう。

他方、日本のテレビ局は死にかけている地上波をデジタル化によって延命しようとし、もうかっているアナログ放送を来年7月には止めてしまう。これによって1億3000万台のテレビのほぼ半分が(有料の)ゴミとして捨てられ、広告収入も半減してテレビ局の経営は危機に直面するだろう。アナログTVの代わりに人々が買うのは、7チャンネルしか見えない地デジTVではなく、無限のチャンネルが見られるiPadだろう。

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コメント一覧

  1. 1.
    • kkay1974
    • 2010年05月03日 22:24

    それでも政府は必死にテレビ局らを延命しようとするのでしょうね。

    税金を湯水のように使って、はぁ~

  2. 2.

     わあー、今回も面白いなあ!
     明日、家内の実家を訪ねるが、義父からは「このテレビは本当に見られなくなるのか?」と再び尋ねられるだろう。
    「本当ですよ。だから今、画面の上下に黒い帯が出ているでしょ」と説明する予定だが、今回の投稿を拝見して、新しいテレビ受像機を勧めるのは止めようかとも思っている。
    「おまえが買い換えた方がいいよと言うから買い換えたけど、こだなつまんねエ番組ばっかやってんだったら、買い換えなんてスンダなかった」と来年言われそうだからだ。

     じゃあ、何を勧めたらええンだ? 相手は70超えたジイさんだ。ipadじゃあねえだろ? ・・・こうやって、地上波テレビ局は、老人視聴者も失うんだっぺな。

  3. 3.
    • takanoyasunali
    • 2010年05月04日 02:15

    スカパーで見ればいいだけの話なんだが、無料で手軽に情報を知りたいという人は結構いるだろうから、地上波で海外のニュースを翻訳して放送すればいいんですよ。
    私はNHKをもう一チャンネル増やして、ニュースを一日中流していればいいと思いますよ。緊急で放送する必要があれば、増やしたチャンネルの電波帯を使えばいいだろうし。

  4. 4.
    • ikuside5
    • 2010年05月05日 04:33

    とても共感できます。地上派のテレビをまったく見なくなるわけではないですが、他メディアでも同じようなコンテンツがあふれている状態にすでになりつつありますし。地上波の優位性は皆無ですよね。なによりもやる気のない放送局が多いです。関東のローカル放送なんて酷いもんです。休日は横並びで公営ギャンブル垂れ流しですし。地域のコンテンツの掘り起こしも下手で、もっとなにか他にあるだろう?と思わせるばかり。存在価値は全くないですね。

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