北朝鮮の特殊作戦部隊

 特殊作戦部隊とは、「・・・全朝鮮人民軍最強のエリート部隊であり、朝鮮民主主義人民共和国軍のユニークな前衛部隊である」。

−金日成(前北朝鮮指導者)

初めに

 朝鮮人民軍(KPA)の特殊作戦部隊(SOF)は、敵後方地域において襲撃を実行し、偵察及び情報作戦を遂行することを任務とする。非正規戦戦術で訓練されたKPA SOF部隊は、秘密浸透及び撹乱戦術により、大韓民国(ROK)後方に第2戦線を創出しようと試みるだろう。加えて、朝鮮半島外の標的に対する襲撃が、恐らく実行され得る。

戦力及び組織

 人民武力部(MPAF)は、SOF部隊を軽歩兵、偵察、又は狙撃の3カテゴリーに分類している。軽歩兵作戦は、中隊又は大隊規模部隊により軍事、政治、又は経済標的に対して実施される戦闘作戦である。組規模の部隊は、情報収集のための偵察又は情報資料の獲得を実行する。狙撃作戦 (厳密な狙撃任務と混同すべきではない。)は、組規模部隊で実行される外は、基本的に軽歩兵と同じである。

 MPAFは、70,000人のSOFが構成する軽歩教導指導局(TUGB)と偵察局(RB)の2つの主要司令部を統制する。TUGBとRBは、前方及び機械化軍団のSOF部隊と合わせて、23個SOF旅団及び18個独立SOF大隊から成る。

特殊作戦部隊の任務計画立案

図:特殊作戦部隊の任務計画立案

 TUGBは、全SOF部隊の中央訓練及び指導司令部であり、戦略及び軍団級SOF任務のための訓練司令部及び戦時統制当局ともなる。TUGBの配下には、8個軽歩兵旅団(3個空軍狙撃旅団を含む。)、2個航空陸戦旅団、及び2個 海上狙撃旅団が存在する。RBは、ROKへのSOFの浸透及び偵察作戦の計画を任務とする主要情報組織である。RBの配下には、9個偵察大隊(海軍及び地上軍の大隊を含む。)及び1個狙撃旅団が存在する。

 前方軍団(第1、第2、第4、第5)の統制下には、4個偵察大隊、3個狙撃旅団、及び3個軽歩兵旅団が存在する。機械化軍団配下には、5個偵察大隊及び4個軽歩兵旅団が存在する。

SOFの配置

図:SOFの配置

任務(戦略/作戦/戦術)

 戦略SOF部隊は、偵察及び襲撃任務により国家目標を支援する。特に、これらの部隊は、標的の情報資料を獲得し、ROKの文民及び軍人の行動を報告し、 打撃後見積を実施し、敵の意図を確認する。典型的な任務は、国家級砲兵、飛行場、保管施設、防空陣地、並びにROK/US後方地域の指揮・統制・通信・情報(C3I) 資産の位置標定及び破壊に関係する。加えて、戦略部隊は、敵の重要人物の誘拐及び暗殺を含む作戦も実施し得る。

 作戦SOF部隊は、軽歩兵及び偵察任務により軍団目標を支援する。作戦軽歩兵部隊は、緊要地形及びC3I資産を標的とし、ROK/US予備部隊を遅滞させ、師団(それ以上)指揮所を攻撃するであろう。加えて、これら部隊は、 敵の意図を確認し、SCUD/FROG及び長射程砲のための標的情報資料を獲得し、打撃後見積を実施し、ROK/US予備部隊の位置を特定する。

 戦術SOF部隊は、軽歩兵作戦により師団及び旅団目標を支援する。軽歩兵部隊は、旅団及び師団指揮所を攻撃し、師団及び旅団の機動を支援するために緊要地形を奪取し、ROK/US予備部隊を撃破する。 機動部隊の固有偵察中隊は、戦術偵察を遂行する。偵察中隊と軽歩兵大隊は、破壊目標を捕捉する。これら目標は、防空基地、部隊集結地、砲兵陣地、及びC3I資産を含む。

地上部隊の作戦

■攻撃12〜24時間前

 制限された視界又は漆黒の援護の下、作戦級及び戦術級SOF部隊は、ROK文民又はROK軍人に偽装して、DMZへの侵入を試みるだろう。これは、 地上及び事前に構築されたトンネルを通して、5人から10人の偵察組により行われるだろう。

10人の偵察組

図:10人の偵察組

 DMZが主として山地であるため、SOFは、離脱又は回避のための掩蔽、隠蔽、安全地域、及び数多くの経路を確保するために、この地形を利用するだろう。低地は、掩蔽及び隠蔽を確保するために、その分厚い雑草、高い草地、及び森林が利用されるだろう。

図:錯雑地形を横断するSOFチーム

 一旦ROKの主防御を突破すれば、作戦級及び戦術級部隊は、ROK/USの軍事作戦に対して緊要である 事前選定された標的の未探知の基地に到達することを試みるだろう。典型的な標的は、港湾、飛行場、兵站所、接近経路、鉄道線、C3I資産、及びその他の増援地域を含む。

 戦略任務を有するKPAのほとんどのSOF部隊は、空路及び海路によりROK/US後方地域に浸透を試みるだろう。空路では、これは、アントノフAn-2 COLT、及びMD 500Eヘリ (ROKAFのものに似せて改修及び塗装)で実施されるだろう。ゴムボート、小型潜水艇、高速艇、及び商船は、多くの水路浸透能力の一部しか反映していない。

飛行場に対する空挺襲撃

図:飛行場に対する空挺襲撃

 標的襲撃に先立つ時間、偵察警戒隊は、標的に関する詳細な情報資料を収集し、攻撃を遅滞又は妨害し得る障害物(地雷、 鉄条網等)を除去しようと試みるだろう。部隊兵士は、その時、任務目標に関する詳細なブリーフィングを受け、装備の点検を実施し、DMZ(H時)の主浸透を待機するだろう。

隠密SOF活動

図:隠密SOF活動

■H時

 H時、ROK/US後方地域内に事前配備されたSOF部隊は、大規模な砲撃及びロケット攻撃がDMZ北方から開始されたとき、標的を攻撃するだろう。これは 、緊要防御地域を弱体化し、ROK/US部隊に対して最適な混乱を創出することを意図している。同時に、追加のSOF部隊は、DMZを通過し、空路により浸透し、韓国海岸に上陸するだろう。

 砲撃が停止するや否や、第1梯隊SOF偵察部隊は、ROK/US前線の抵抗の弱点を調査するために前進するだろう。間隙が見つかれば、浸透が試みられる。成功すれば、軽歩兵SOF資産は、 緊要な敵標的と交戦し続けるだろう。目標の占領又は破壊が達成されたとき、SOF部隊は、戦果を確固たるものとし、ROK/USの対応を否定するために、後続歩兵及び機械化部隊に位置を迅速に譲る。

■撤退/後退

 SOF部隊は、陣地の放棄を強制されたとき、遅滞、又は援護部隊として行動するものと予想される。SOF部隊は、接近及び攻撃案が制限される地形を占領することにより、優勢な追撃部隊に対する火力を大幅に増大させようとするだろう。

結論

 KPA SOFは、非正規戦戦術における広範囲な経験を有する。朝鮮戦争の前例に基づき、北朝鮮のSOF兵士は、錯雑地形を利用し、ROK/USの戦線に浸透し、第2戦線を確立し、 わずかな兵站支援と共に連合軍後方内で運用されるものと予想される。任務に応じて、SOF部隊は、ROK/USの緊要軍事標的の無力化を試みるだろう。

 主要集結及び指揮センターは、新たな朝鮮戦争の開始時点でROK/USに対して否定され、質的優勢と米国の適時増援能力は、著しく減じられるだろう。この理由のため、KPAは、SOFが近代的なROK/US部隊に対する勝利の達成 を倍増する重要な部隊であると信じている。

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最終更新日:2004/03/19