「起訴相当」。東京第5検察審査会が下した議決は、民主党の小沢一郎幹事長の地元である県内に27日、大きな波紋を広げた。県民からは議決に理解を示し、説明を求める意見が相次いだ。夏の参院選を目前にして「政治とカネ」が改めて問われる事態に、同党や後援会からは驚き、戸惑う声が挙がり、他政党からは進退を問う声が聞かれた。
検察審査会の議決について、県民50人(男女各25人)に盛岡市大通の民主党県連前で聞いた。8割を超える41人が「適切」と答え、再捜査を求めた。「間違っている」は6人にとどまり、小沢氏に逆風が吹き付けた。
小沢氏が今後取るべき対応については「さらに説明が必要」と、説明責任を果たすよう求める声が18人と最も多かった。二戸市、介護職員、西井愛さん(31)は「説明してから辞職するべきだ。ただ辞めるだけでは逃げることになる」。盛岡市本町通の無職、潮田満之さん(78)は「カネのことをはっきりしてほしい」と話した。
ただ、「党役職辞任」「議員辞職」と、何らかの形で責任を取るべきだと考える人は26人に上った。同市三ツ割の主婦、伊藤敏子さん(66)は「県人として、潔く議員も辞めたほうがよい」と話す。奥州市水沢区の男性団体職員(52)は「民主にクリーンな政治をしてほしい」と訴える。
一方、小沢氏を支持する声も。検審の議決は「間違っている」とした盛岡市下厨川の団体職員(58)は「岩手にとって必要な人だ」と擁護した。同市中央通、会社員、田代和夫さん(68)は「検審の判断は間違っていると言えないが、政治家として(小沢氏)認めている」と困惑した表情を見せた。【山中章子、安藤いく子】
小沢氏の地元後援会は一様に平常心を装った。小野寺伝・水沢後援会会長は「小沢先生は法に触れるようなことをしていないと言っている。それを信じる」と話した。幹事長辞任を求める党内外の声には「政権交代して日が短い。国民のため、頑張ってもらいたい」と続投を支持した。
後援会幹部は「参院選に影響は出るかもしれないが、我々は、小沢先生を支えていくだけだ」と強気の姿勢をみせた。別の幹部は「意外だ。起訴する、しない、で再び混乱が広がるのではないか」と先行きを案じた。
民主党県連の工藤堅太郎代表は「信じられない。検察が精査した結果、不起訴にした。報道で(審査会の)意識が偏っている。気分、流れで判断されたらたまったものではない」と憤った。参院選を前にした議決であり、影響を懸念する。「国民の良識に期待する。有権者に会って理解を得たい」と述べ、火消しに懸命だ。
連立政権を組む社民党県連合の伊沢昌弘幹事長は「検察の再捜査で、国民の納得が得られるよう期待する」と判断を委ねた。
野党からは、小沢幹事長の説明責任を問う声が高まった。自民党県連の鈴木俊一会長は「議決は非常に重い。国民の多くは納得していない。説明責任は一層増した」と指摘した。共産党県委員会の菅原則勝委員長も「『常識』を反映したもので、尊重すべきだ」とコメント。公明党県本部の小野寺好代表も「世論調査でも、国民の多くは小沢幹事長の説明は不足だと見ている。今回の議決は当然だろう」と述べた。【湯浅聖一、山口圭一】
==============
<問1>検審の判断をどう思うか
適切だ 41(21)
間違っている 6 (3)
わからない 3 (1)
<問2>小沢氏の取るべき対応は
党役職辞任 14(11)
議員辞職 12 (4)
さらに説明が必要 18(10)
現状のままで良い 4 (0)
わからない 2 (0)
※( )内は女性
毎日新聞 2010年4月28日 地方版