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「一人前でありたい」
 国谷裕子が語る仕事-4
写真
自分にチャンスを与えよう

一日一日を
積み重ねるしかない

 よく長い間「クローズアップ現代」を続けてこられましたねと言っていただくことがあるのですが、私にはあまり17年間という実感がありません。いつも緊張感の中で毎日、納得がいったか、視聴者に届いたかと問い続けては、またすぐ次へと進んでいかなければならないからでしょう。

 週最後の放送日である木曜日の朝に「ああ、あと一日頑張れば」と思えることもあれば、テーマが難解で非常に不安が残ったまま目覚めて、この不安を克服しなければと気持ちを鼓舞することもあります。ただ、朝のリズムは壊さないようにしています。朝起きて新聞を取りに行き、観葉植物の様子を見、カーテンを開け、コーヒーをいれ、今日もきちんと同じことができたから大丈夫だと、心のペースを調整する。そうやって一日一日を積み重ねてきました。

 準備時間はつねに足りない、との動かし難い事実を受け入れるには、やるだけのことはやって放送に臨んでいるのだと自分自身を納得させるしかありません。俳優の高倉健さんへのインタビューがあれば、たくさんの活字資料を読みつつ、数多くの主演映画を寝る間も惜しんで観(み)続けます。また、多くの議論がある地球温暖化問題では、京都議定書以前から積み重なってきた経緯がありますから、読み込む資料は必然的に相当な量になります。ゲストの方が、あるはっきりとした視点を持っていらっしゃる場合には、私はその方のお話を伺いながら、一方で異なる意見も提示できるようにしておかなければなりません。そのため、ゲストの著書に加えて異なる立場の方々の著作も読み込んでおきます。

 どの仕事もそうだと思うのですが、最後は、できるかぎりのことはやった、という実感が背中を押してくれるのです。

苦手なことに気づいている。
それは次への一歩

 今日まで私にとっての仕事とは、自分の苦手なものを克服する場だったという気がしています。一つひとつ、自分のコンプレックスや、力のなさを仕事の中で乗り越えようとしてきました。そして周囲の人々にも鍛えられました。苦手なことやコンプレックスを持っている人は、それを避けずに一歩、踏み出してほしい、それは、とてもやりがいのある仕事につながっていくはずです。

 若い人の中には、仕事というものは自分の思いや、やりたいことをかなえる場だと考えている方も多いでしょう。しかし実際には希望通りの仕事にはなかなか就けない厳しい現実があります。それでも今日の仕事の中に、次につながる芽を発見できるかもしれません。私自身、なぜ今この仕事をやっているのかと考え込んでしまう時期がありました。でもその仕事はどこかで自分のチャンスにつながっていました。目指す仕事に就いていなくても、まだその仕事を見つけていなくても、今自分は鍛えられていると感じられる体験が、次の一歩、次の自分を用意してくれるのではないでしょうか。(談)

くにや・ひろこ ●キャスター。大阪府生まれ。父親の海外勤務にともない、幼稚園時代からニューヨーク(NY)、サンフランシスコ、香港と日本を行き来しながらすごす。79年、米国ブラウン大学(国際関係・国際経済専攻)卒業。帰国後、家庭用品メーカーに就職。81年、NHK「7時のニュース」英語放送アナウンサー、ライター。再び渡米、衛星放送のNY発キャスター。88年帰国、総合テレビ「ニューストゥデイ」、BS1「世界を読む」などを経て93年から総合テレビ「クローズアップ現代」キャスター。ほかに「ベルリンの壁崩壊」「湾岸戦争勃発」「クリントン大統領に聞く」「日本のがん医療を問う」など多数の番組キャスターを担当。放送ウーマン賞、菊池寛賞(制作スタッフとともに受賞)などの受賞歴がある。「クローズアップ現代」公式サイト http://www.nhk.or.jp/gendai/

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