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うつ病が増えていると言われ、うつ病には「抗うつ薬」よりも「抗精神病薬」がよく効くと言われ、そして、最近は「抗てんかん薬」の使用が増えています。
これはいったいどういうことでしょうか?

臨床でわかってきている事実を並べてみましょう。
(1) いろいろあるの「精神疾患」の多くに、大脳の萎縮を認めます。
(2) 大脳萎縮を認める患者さんの多くに、(a) もの忘れ(作業記憶の障害)、(b) 情緒不安定(気分のむら)、(c) 過敏性(過剰反応、ないしは「神経質」さ)、を認めます。
(3) 大脳萎縮は大脳全体に一様なものではなく、患者さんごとに各部位の萎縮程度がさまざまでバラツキがあります。
(4) 脳波検査をすると、種々の脳波異常が認められます。

結論から言うと、これらの条件を満たす「病態」に、わたしは 「脆弱脳症候群」 という病名をつけました。
仮に英語名をつければ Fragile Brain Syndrome (フラジャイル・ブレイン・シンドローム) とでもなるのでしょうか。


DSM‐IVにはもちろん、そのような分類はありません。アメリカが世界に使用を推奨する(実際には推奨と言うよりも「押し付け」ですが)DSM-IIIは1980年代、DSM-IVは1990年代に作られたという点で考え方が古めかしいのですが、DSM-IVの問題はそれだけではありません。
DSMは,「疾患の ”本質” ・疾患の ”原因” などという誰にもわからないことは無視するべきである」という大前提に立って考えられており、
(i) 病因論(疾患の本質の追及)に踏み込むことを避けて,精神症状のみを論理的かつ統計学的に処理し分類したものであるため,
(ii) 診断基準が明確になり,今まで主観的傾向にあった精神疾患の診断が客観的なものになり,
(iii) 医療スタッフ側の意見や技量の差異による診断の食い違いが最小限になった、
という点で,革新的な診断基準であったと思われていました。そして,今もそう思われています。

けれども実際には、DSM-IVの重要な特徴であるとされる前記(i)〜(iii)を裏返しにすると,それぞれ
(i) DSMは類型分類にすぎず,疾患の本質に基づく真の診断基準ではない
(ii) 確率での診断しか下せないため,むしろ不明確な診断しか下せず,また,どの項目(どの精神症状)を選んで確率(可能性)を論じるかは診断者の好みに任せられている(極端な言い分に聞こえるかもしれませんが,現状はそうなっています)という点で,一層主観的な診断基準になってしまっています。そして,同じ理由で
(iii) 診断のばらつきは大きくなった。しばしば遭遇する顕著な例として診断に十分な時間をかける精神鑑定を挙げられます。すなわち,その鑑定医がどの分野を専門にしているかによって鑑定結果に大きな食い違いが生じることが多いのです。
それにも拘らず,現状では治療・研究はすべてDSMに依拠し(論文の多くは国連版のICD-10ではなく米国版のDSM-IVに準拠して書かれています),実証医学(EBM、 Evidence-based Medicine)の議論も精神医学の分野はDSM>に準拠し,その結果多くの混乱が生じています。
それでも,グローバル・スタンダードの地位を築いてしまった DSMに対しては表だっては誰も楯つきません。というよりもDSMを無視して議論する論文など,どの学術誌・学会誌も受理せず掲載しないから,表に現れることはありません。そして,そもそもDSMの問題点に気づいていない人が多いのです。
しかし,当の米国内ですら,DSM-IV策定の立役者(米国精神医学界の重鎮)たちが引退したりして居なくなった今,あまりにも問題点の多いDSM-IVを見直して,新たに第5版“DSM-V”を策定する動きが出ており,その内容は大幅に変更される見通しです。さすがは米国と言うべきなのか, 「米国の(いまだに他国が妄信している) DSM-IVは間違いだらけだから作り直そう」 という動きは米国自体から生まれてきているのです。とはいえ,やはり一国の,一部の考え方を全世界に押しつけるべきではありません。なぜならば,全世界が一国の考え方を無条件に受け入れるには,精神医学の分野はまだまだ未成熟で未解明なことが多すぎるからです。今はまだグローバル・スタンダードを策定する次期ではなく,それを他国に押しつける時期でもありません。
(注) DSM-4(正確にはDSM-W) とは、アメリカ精神医学会が定めた「精神疾患の診断分類とその診断基準のマニュアル」です。何度か改訂されてきて、現在のバージョンはDSM-IV-TR(DSM第4版の第3改訂)です。
疾患分類にはこのほかに、ICD-10というWHO(世界保健機構)が定めた国際疾病分類もありますが、精神疾患に関していうとDSM-IIIやDSM-IVに準じています。


 脆弱脳症候群のおもな症状はどのようなものか。
「脳波の乱れ」によって、いろいろな症状が出現しますが、主なものを挙げると以下の通りです。

(1) もの忘れ。
2階にあがってから、「あれっ? 今何を取りに来たのだろう?」
家事をやっていて、「あれっ? 今何をやっていたんだろう?」
パソコンを立ち上げてから、「あれっ? 今何のためにパソコンを立ち上げたんだったろうか?」
外出してから、「あれっ? カギをかけたろうか?」とか、「火を消してきたろうか?」など、
脳波の乱れによって、思考がブツブツ途切れてしまうこともあり、作業記憶 (working memory ワーキング・メモリ) がかき消されてしまうために、以上のようなもの忘れが多くなったり、集中力や思考力が低下したりします。

(2) 情緒不安定。
急に不安になったり、 急にイライラしたり、 急に涙が流れたり、 情緒が不安定になります。
気分のムラが生じやすく、 また、 気分が晴れ晴れしなくなります。
脳波の乱れが、情緒的な安定性を損ないます。 1日のうちでも気分の波があったり、 日によって気分にムラがあったり、 あるいは、 もっと長期的な周期で気分にムラが生じたりします。

(3) 過敏性。
過敏性は、 種々の刺激に対する過剰反応であったり、 「神経質」を生じたりします。
食器のカチャっと鳴る音が耳障りに感じる。 TVの音などが大きいと耳障りに感じ、 静かな場所を好む。
TVのCMなどチラチラする画面が目障りに感じる。 まぶしい光が目障りで、 部屋を暗くすることを好む。
ひとの言動に過剰に反応する。 ひとの言動に神経質で、 対人関係が苦手である。 
脳波が乱れる場合、 ときに光刺激などに対して脳波がそれらの刺激に同期(同調)するように乱れる場合が多く、その際に過敏性が生じやすいのです。 むかし、 ポケモンのアニメのチカチカする刺激で具合が悪くなる(意識が遠のいたり、けいれんを起こしたりする)子供がいましたが、 これは過敏性の1例です。


 脆弱脳症候群の原因はなにか?

では、脆弱脳症候群の原因は何でしょうか?
実は、脆弱脳症候群は珍しいものではありません。
脆弱性は、体質的なものなのです。 たとえば、
(a) 肌が体質的に弱い人は、疲れた時に皮膚の炎症(湿疹、じんましん、アトピーなど)が生じやすいものです。 
(b) 胃が体質的に弱い人は、疲れた時に胃の炎症(ストレス性胃炎、胃潰瘍など)が生じやすく、胃痛・吐き気・嘔吐などを生じます。 
(c) 呼吸器が体質的に弱い人は、疲れた時に気道の炎症を生じやすく、 カゼをひきやすかったり、ぜんそく発作を起こしやすかったりします。
 
このような体質の人は実はそんなに珍しくありません。 そして、同様に
体質的に脳が疲れに弱い人は、疲れた時に 「脳の炎症」 を生じます。
これが、脳波が乱れる原因であり、 脳が萎縮する原因なのです。
同様に、 原因不明の膀胱炎、 子宮内膜症、 副鼻腔炎(蓄膿)、 口内炎などなど、体質的な脆弱性が関わっているらしい病気はかなりあると思われます。

【 疲れの原因 】
疲れ(慢性疲労)の原因としては、 
(a) うつ病
(b) 統合失調症
などが考えられます。

先ほどあげた (1)もの忘れ (2)情緒不安定 (3)過敏性 のほかにも、 脆弱脳症候群では種々の症状が出現します。

 脳波異常の持続性  現れる症状
 短時間生じる挿間性エピソード(情緒不安定・衝動性)  ● 急な流涙・号泣,睡眠中の急な流涙、不安・憂うつの増強
 ● イライラ・激昂・暴力行為(刃物を振り回す・物に当たるなど)
 ● 自傷欲求の出現・増強,衝動的な自傷・自殺企図
 ● 叫びだしたくなる衝動・発狂しそうになる恐怖
 ● 運動発作(痙攣発作・脱力発作など)
 ● 知覚発作(錯視・幻覚など),自律神経発作(腹痛・頭痛・嘔吐など)
 短時間生じる意識レベルの低下  ● 意識喪失(一瞬の意識の途絶)
 ● 眠気,急な睡魔(ナルコレプシー)
 思路(思考)の寸断  ● もの忘れ,集中力の低下,勘違い・聞き間違いの増加
 ● 強迫行動(確認癖など),それに伴う強迫的儀式(安心感を得るためのおまじない行動)
 ときに数日以上の期間持続する病相性エピソード  ● 脱抑制状態(過食など)・意識の変容(多幸気分・躁状態・軽躁状態・躁うつ病,霊的体験・憑依状態など)
 ● 被暗示性・被影響性の亢進
 ● 不安・恐怖感を伴う意識の変容,幻覚・妄想状態
 ● 一人でいられない寂寥感・不安感・取り残され感
 ● 多重人格(多重自我状態,「別人格」の出現)
 ● 反応性の亢進による過敏性・情緒不安定
 ときに数日以上の期間持続する意識レベル・精神機能の低下 ● 認知機能の低下(集中力・思考力・理解力の低下など)
 ● 現実検討能力(洞察力)の低下
 ● 意識もうろう状態(無気力・無感動・反応性の低下など),あたかも知能レベルが低下したような理解力・疎通性の低下(会話が迂遠で了解性が低下する)
 ● 現実感喪失,離人状態,亜昏迷状態
 ● 知覚過敏性(音・光・言葉・生活音などに対する過敏,舌先・肛門など身体各部位の疼痛・知覚過敏),振り回され感
 ● いわゆる「トラウマ」や「フラッシュバック」の出現


             

A. 薬物療法
脳波の乱れが原因ですから、抗てんかん薬がよい効果を発揮します。
しかし、抗てんかん薬(脳波の乱れを改善する薬)、 抗うつ薬(気分を明るくし、元気を出す薬)、 抗精神病薬(堂々巡りのマイナス思考を止めて、神経の疲れをとる薬)などによる 「薬物治療」 を行うだけではダメで、 「疲れをとる工夫」 「疲れないようにする工夫」など 「生活習慣を変える心がけ」 が 重要です。
薬の服用によって症状を改善しつつ、 生活習慣を変えて悪循環を断ち切っていく工夫が 何よりも効果があります。

薬物治療のうち、 主に使用される 「抗てんかん薬」 について、ここでは説明します。
(1) 抗てんかん薬
抗てんかん薬としては、1剤で治療に用いられる薬剤、他剤で効果が不十分なときの併用薬剤などがあります。
なお、次項の漢方薬も、抗てんかん薬(ないしは、情緒安定薬)としての効果を発揮します。
一般名 略号 商品名 1日量 注意点(有効血中濃度・副作用など)
バルプロ酸 VPA デパケン、デパケンR、
セレニカ、セレニカR、
ハイセレニン、バレリン
400-1200mg 有効血中濃度50-100μg/ml
ラモトリギン(LTG)血中濃度を上昇させろので、LTGとの併用時に要注意。
副作用: 窒素代謝に影響し、高アンモニア血症をきたしやすい。(眠気・ふらつき・脱力など)。 脱毛。
カルバマゼピン CBZ テグレトール 200-600mg(1200mgを超えない) 有効血中濃度6-12μg/ml
副作用: 眠気、ふらつき。 薬疹。
フェニトイン PHT アレビアチン、
ヒダントール
200-300mg
250mg点滴静注(生食100mlで)
有効血中濃度10-20μg/ml
副作用: 眠気、ふらつき。 集中力の低下。 薬疹(服用後すぐではなく、数週間してから出現することもあるので要注意)。 イライラ感、興奮。 血中濃度上昇(中毒症状)としては眠気、ふらつき、眼振など。
ゾニサミド ZNS エクセグラン 200-400mg(600mgを超えない) 有効血中濃度10-30μg/ml
副作用: 眠気、ふらつき。 薬疹。
フェノバルビタール PB フェノバール 30-200mg
50-100mg皮下または筋注
有効血中濃度10-30μg/ml
副作用: 眠気、ふらつき。 イライラ感、興奮。
ラモトリギン LTG ラミクタール 200-400mg
バルプロ酸併用時100-200mg
バルプロ酸(VPA)との併用時に、LTG血中濃度が上昇するので要注意。
副作用: ときに眠気、ふらつき。 薬疹。
クロナゼパム CZP リボトリール、
ランドセン
2-6mg 有効血中濃度10-70ng/ml(0.01-0.07μg/ml)
他剤で効果不十分な場合の併用薬。
副作用: 眠気、ふらつき。
ジアゼパム DZP ホリゾン、
セルシン
2-40mg
5-10mg筋注または静注(ゆっくりと)
抗てんかん薬としては、一般に経口では使用せず。 静注はゆっくり行わないと呼吸停止するので要注意。
副作用: 眠気、ふらつき。
ニトラゼパム NZP ベンザリン、
ネルボン
5-15mg
(睡眠薬としては5-10mg)
有効血中濃度20-100ng/ml(0.02-0.1μg/ml)
他剤で効果不十分な場合の併用薬。
副作用: 眠気、ふらつき。
クロバザム CLB マイスタン 10-30mg(40mgを超えない) 有効血中濃度100-数100ng/ml、N-デスメチルクロバザム(CLBの代謝物)として1000-数1000ng/ml((基準値はなく、筆者の経験上の数値。CLBとN-CLBの両方に臨床効果がある。)
他剤で効果不十分な場合の併用薬。
副作用: 眠気、ふらつき。
トピラマート TPM トピナ 200-400mg(600mgを超えない) 他剤で効果不十分な場合の併用薬。
副作用: 眠気、ふらつき。
ガバペンチン GBP ガバペン 1200-1800mg(2400mgを超えない) 他剤で効果不十分な場合の併用薬。
副作用: 眠気、ふらつき。

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(2) 漢方薬
漢方薬のなかには、抗てんかん薬として(すなわち、情緒安定薬としても)効果を発揮するものがあります。
 
一般名 商品名 1日量 注意点
柴胡加竜骨牡蛎湯
(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ツムラ12
クラシエ12
6.0-7.5g(または18錠)
分2-分3食前服用
漢方薬は原則「食前服用」だが、「食後」に服用しても十分に効く。また、漢方薬と言えば効果発現までに何週間も要すると思われているが、実際には効果は服用開始後数日中には現れる。
副作用: 眠気、だるさ。 胃腸症状(胃痛、下痢、便秘など)。

B. 精神療法など
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C. 周囲のかかわり方
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