普天間問題 鳩山首相、すべて県外は難しいと愚直に表明し理解と協力を求める
就任後、初めて沖縄を訪問した鳩山首相は、普天間移設について、すべて県外は難しいと愚直に表明したうえで、理解と協力を求めた。しかし、「最低でも県外」の公約をほごにされた沖縄県民は猛反発し、5月末までの決着は、風前のともしびとなっている。
普天間問題、運命の5月。
ついに、鳩山首相が沖縄の地に立った。
正念場を迎える首相にとって、厳しい長い1日となった。
鳩山首相は「大変厳しい1日だったことは、その通りであります」と述べた。
午前10時40分、県内移設に反対する県民らが、沖縄県庁を取り囲み、「総理は県民の声を聞けー! 辺野古移設を断念せよ! 」と抗議の声を上げ、辺りは物々しい雰囲気となった。
県民らのボルテージが沸騰する中、注目の鳩山首相と仲井真沖縄県知事との会談が始まった。
少しでも沖縄県民に近づくためか、黄色のかりゆしを着て会談に臨んだ鳩山首相。
しかし、黄色は県内移設反対のイメージカラーとなっている。
「県民大会の状況からもうかがえますよう、県外移設の実現を期待する声が高まっております」と、県民の声としては、「県外移設」と慎重な言葉を選んだ仲井真知事。
そして、鳩山首相は、「すべてを県外にということは、なかなか現実問題として難しいということに直面をしております。ぜひ、沖縄の皆様方にも、またご負担をお願いをしなければならないなと、その思いで、きょう(4日)もまいった次第でもございます」と、県外への全面移設は困難との認識を表明した。
仲井真知事は、「かなり県民の思いとのずれがあるなぁというのが、まあ実感ですね」と述べた。
会談で鳩山首相は、具体的な移設案を示さなかった。
政府は、キャンプ・シュワブの沿岸部としていた現行案を、くいを打ち込む桟橋方式などに修正し、鹿児島・徳之島への一部移転案を柱に最終調整している。
午後2時すぎ、鳩山首相が、普天間基地に隣接する小学校の屋上に向かった。
爆音をとどろかせ、鳩山首相の頭上を飛んでいく。
続いて行われた沖縄県民との対話集会で、鳩山首相は、「沖縄の皆さま方にご負担をお願いをしなければならない状況であるということを、あらためて申し上げなければならないこと、本当につらいことではございますが」と述べた。
しかし、鳩山首相の言葉を信用できない住民から、厳しい言葉が飛んだ。
集会参加者は、「総理大臣、あなたは少なくとも最低でも県外とおっしゃいました。政治家の人の言葉は、すごく重みがあります」と話した。
また、小学校教諭は「(ヘリが)墜落したら、はたして、わたしたちは、子どもたちをどのように守ったらいいのかという思いで、いつもヘリを見上げています」と話した。
1時間余り行われた集会が終わった直後、1人の住民が鳩山首相のもとへ詰め寄る場面もあった。
さらに、普天間の住民からの「沖縄全体のことを考えてください」、「良心はないのか!! 」、「友愛政治はどうなっている」、「恥を知れ、恥を!! 」との厳しい声を背に、鳩山首相が次に向かったのは、移設検討地の名護市辺野古のキャンプ・シュワブ。
視察後、基地建設に反対の立場を取る稲嶺名護市長との会談が始まった。
ここで鳩山首相は、「やはり、日米同盟を維持していく中での抑止力の観点から、沖縄の皆さん、あるいは沖縄の周辺の皆さま方に引き続いて、ご負担を、やはりお願いをせざるを得ないという」と述べ、日米同盟や北東アジアへの抑止力のため、基地機能移設などの負担をあらためて強調した。
会談後、稲嶺市長は、「はっきりと県外ということを言ってほしかった。ただ、そういうことがなかったことが、残念で、とてもまた心外であります」と述べた。
今回の訪問の締めくくりとなった記者団の質問で、海兵隊の抑止力や、日米同盟の重要性について、2009年の選挙戦の時点からわかっていたのではと問われると、鳩山首相は、「海兵隊の存在というものを、このことを学べば学ぶにつけて、沖縄に存在している米軍の存在全体の中での海兵隊の役割というものを考えたときに、それがすべて連携をしていると。それを浅かったと言われれば、あるいはそのとおりかもしれませんが」と、自らの認識不足を認める形となった。
そして東京では、社民・福島党首が、「とにかく、県内はだめだというふうに思っています。辺野古の海を埋め立てるのが自然の冒涜(ぼうとく)であればですね、それは桟橋でも、それは自然への冒涜じゃないですか?」と述べた。
そして、自民・谷垣総裁は、「沖縄県民のお気持ちからすれば、裏切りと映ることも、これは明白であります」と述べた。
4日午後8時すぎ、沖縄・那覇をたった鳩山首相。
沖縄からの厳しい声に加え、東京では、連立与党内からの逆風、そして野党からの追及が待っている。
(05/05 01:05)