意見を吸い上げ、即実行する仕組み
テーマ:ベンチャー経営・明日すぐにフィリピンに行く必要があるが、
・日本に帰る日取りが読めていない
成田発のOpen航空券を買おうか、
成田発の往復航空券を買って帰りの分を捨てるか、色々考えたが、
大坂まで新幹線で行って関空発のセブパシフィック片道航空券で乗るのがよいとわかった。
セブパシフィックというのは、フィリピンの格安航空会社で、
略称でセブパシと呼ばれている。
で、セブパシの片道航空券をオンラインで購入し、
のぞみに乗って東京から関空まで行った。
だが、関空のセブパシのチェックインカウンターで、
「このままですとお客様を乗せることはできません」
と言われた。
なぜか、というと、片道チケットでは、下記の人を載せられないのだという。
・非フィリピン人で、
・労働ビザなどのビザが既にパスポートに貼られてない人が、
・フィリピンから出国する航空券を紙で持たない場合
フィリピンは、往復航空券があれば日本人はビザなしで渡航できる国だ。
だからはいつもは何の問題もなかった。
ただ今回は、片道航空券。
そして僕の労働ビザはあいにく申請途中。
だから、どうしても帰りの航空券を今すぐここで買ってほしい、とのことだった。
「片道航空券を御社のウェブで買うとき、そういった類の警告は一切出なかったんだけれど」
と言うと、そういった警告は一切出していないのだと言う。
だから僕は次のように抗議した。
「どれだけのお客さんが、フィリピンのビザ事情や御社のポリシーに通じていると思いますか?」
「セブパシなら片道航空券で行ける、そう思ってわざわざ東京から新幹線に乗って来た」
「そしたら、片道ではダメで、往復を買ってくれ、と言われている始末」
「僕の気持、わかりますか?」
「地上職員のあなたたちが悪いわけじゃない。」
「ただ、ウェブサイトに書いてほしいと言っている」
「そうじゃなきゃ、また僕と同じ目に会う人が出てきますよね?」
ふと横のカウンターを見ると、全く同じトラブルを抱えている人がいた。
地上職員の人に、こういったトラブルは何件来ているのかと聞いた。
「1日1~2件位ですかね (苦笑)」
とのことだった。
これを解決する手段としては、
片道航空券を販売したときに、画面のどこかに警告を出す。
ただそれだけ。
こんなもん、1万円もかからないでできるはず。
そしてこれをやるだけで、
忙しい時間帯のチェックインカウンターでもめる客1.5人/日×時間20分×365日×時給1000円、
年間18万円は節約でき、顧客の印象もよくなる。
で、こんなことは、僕が話した地上職員は百も承知なはず。
じゃあなぜやらないのか。
ここから先は想像になるが、
意見を現場から吸い上げて即座に実行する仕組がないか、
形式上あっても、実際には動いていないんだろうと思う。
だから、現場ならだれしもが気づいていることが即座に実行されず、
現場が、毎日毎日、不毛な問題にダラダラと取り組まざるを得ないのだと思う。
・現場が思いついたアイデアを、すぐ上に上げやすいか
・上がってきたアイデアを、まっとうな意見かどうかきちんと判定できるか
・まっとうな意見だとわかった場合に、即座に実行できるか
これが品質を分けるのだと思う。
セブパシのように安さを求めると、どうしても質を高くできない部分がある。
それはしょうがない。
そしてそれはお客さんも(多くは)納得してくれると思う。
けれども、コストをかけないで質を高める方法はいっぱいある。
そしてそれは、多くの場合現場から生まれてくる。
数ヶ月前に、「ANA的対応か、JAL的対応か 」で、このツイッターを取り上げた。
JALとANAの両社に、マイルをハイチに寄付したいと要望を送ってみた。JAL の回答:「そのようなサービスはございません」、ANAの回答:「過去にもお客様ご要望で四川大地震などで臨時対応したことがあり、早速担当部署に検討させます」。ユーザーと向き合う姿勢がまるで違う。
今なら、「それは間違いだ」って言える。
ユーザに向き合う態度が違うんじゃない。
会社の上層部が、現場にいるスタッフと向き合う態度が違うんだ。
つまり、旧JALの現場スタッフが悪いんじゃなくて、
恐らく、旧JALの上層部が、現場スタッフに対して適切な態度を取っていなかったんだと思う。
旧JALの現場スタッフが検討することさえしなかったというのは、そういうことだと思う。
ANAだって、「やる」とは別に言っていない。
最終的には、コストの問題で「やらない」という決断を下すかもしれない。
でも、現場は現場の意見を上に挙げることができる。
ANAが「やる」と即答したのは、「その意見を上と検討します」ということだと思う。
品質は、現場の細かい努力の積み重ねで獲得されるものだと思う。
だが、現場がいかに頑張っても、
マネジメントがしっかりしていなければ、
現場の努力が品質改善に結びつかないんだと思う。
現場の努力は、
品質改善の必要条件だが、 (=現場の努力がないと、品質改善できない)
十分条件ではない。 (=現場の努力だけでは、品質改善できない)
だから、現場から上がってきた真っ当な意見をいかに即座に実行できるか。
このマネジメントの仕組が合わさって始めて、品質改善の十分条件になるんだと思う。
高価格で提供した場合に高品質にできるのは当たり前だが、
低価格と高品質を両立できるかどうか。
ここは、経営力の巧拙が特に問われる分野なのだと思う。
ではひるがえって、自分自身の会社、レアジョブはどうなのか。
実は、うちの会社でも、ちょっとやり方を変えた。
講師か正社員、インターンのことしかいつも書いていないが、
うちのアルバイトの人も、意識が高くてとっても優秀。
で、あるときアルバイトの1人が、4ページにもわたるレポートを書いてきてくれた。
その内容を一言でいうと、「アルバイトの意見をもっと吸い上げてほしい」
ということだった。
ナルホド、と思って、意見を共有する仕組みを作り、動かし始めた。
・アルバイトスタッフが、作業中に何か問題点に気付く
・それを3~5行で「改善提案」としてまとめ、メーリングリストに投げてもらう
・僕やCTOが、早い時は10分で、遅い時は1日で返事をする
・即座に実行すべしと判断された意見は、即座に実行する
この仕組をつくってみて、
いいなぁ、なんでもっと早くやらなかったんだろ、と思う。
既にいくつかアイデアを実行した。
現場の意見を吸い上げて、判断して、よいものは即実行。
レアジョブはまだまだ発展途上のサービスだけれど、
これを続けていけば、もっともっと良いサービスになることができると思う。
(セブパシを批判する内容を上に書きましたが、
セブパシはけっこう、「飛行機が落ちる率」が低いことを書いておきます。
山崎豊子著「沈まぬ太陽」を見る限り、飛行機を落とさないためには現場が重要なようです。
おそらく、ある程度は、意見を吸い上げる仕組みがしっかりしているのだと思います)
1 ■無題
で、帰りの分を買わなくても乗れたんですか?
それとも結局買ったんですか?