2010-04-30 10:10:10

意見を吸い上げ、即実行する仕組み

テーマ:ベンチャー経営
先日フィリピンに来たとき、どの航空券を買おうか迷った
・明日すぐにフィリピンに行く必要があるが、
・日本に帰る日取りが読めていない

成田発のOpen航空券を買おうか、
成田発の往復航空券を買って帰りの分を捨てるか、色々考えたが、
大坂まで新幹線で行って関空発のセブパシフィック片道航空券で乗るのがよいとわかった。

セブパシフィックというのは、フィリピンの格安航空会社で、
略称でセブパシと呼ばれている。

で、セブパシの片道航空券をオンラインで購入し、
のぞみに乗って東京から関空まで行った。

だが、関空のセブパシのチェックインカウンターで、
「このままですとお客様を乗せることはできません」
と言われた。

なぜか、というと、片道チケットでは、下記の人を載せられないのだという。
・非フィリピン人で、
・労働ビザなどのビザが既にパスポートに貼られてない人が、
・フィリピンから出国する航空券を紙で持たない場合

フィリピンは、往復航空券があれば日本人はビザなしで渡航できる国だ。
だからはいつもは何の問題もなかった。

ただ今回は、片道航空券。
そして僕の労働ビザはあいにく申請途中。
だから、どうしても帰りの航空券を今すぐここで買ってほしい、とのことだった。

「片道航空券を御社のウェブで買うとき、そういった類の警告は一切出なかったんだけれど」
と言うと、そういった警告は一切出していないのだと言う。

だから僕は次のように抗議した。

「どれだけのお客さんが、フィリピンのビザ事情や御社のポリシーに通じていると思いますか?」
「セブパシなら片道航空券で行ける、そう思ってわざわざ東京から新幹線に乗って来た」
「そしたら、片道ではダメで、往復を買ってくれ、と言われている始末」
「僕の気持、わかりますか?」
「地上職員のあなたたちが悪いわけじゃない。」
「ただ、ウェブサイトに書いてほしいと言っている」
「そうじゃなきゃ、また僕と同じ目に会う人が出てきますよね?」

ふと横のカウンターを見ると、全く同じトラブルを抱えている人がいた。
地上職員の人に、こういったトラブルは何件来ているのかと聞いた。
「1日1~2件位ですかね (苦笑)」
とのことだった。

これを解決する手段としては、
片道航空券を販売したときに、画面のどこかに警告を出す。
ただそれだけ。
こんなもん、1万円もかからないでできるはず。

そしてこれをやるだけで、
忙しい時間帯のチェックインカウンターでもめる客1.5人/日×時間20分×365日×時給1000円、
年間18万円は節約でき、顧客の印象もよくなる。

で、こんなことは、僕が話した地上職員は百も承知なはず。
じゃあなぜやらないのか。

ここから先は想像になるが、
意見を現場から吸い上げて即座に実行する仕組がないか、
形式上あっても、実際には動いていないんだろうと思う。

だから、現場ならだれしもが気づいていることが即座に実行されず、
現場が、毎日毎日、不毛な問題にダラダラと取り組まざるを得ないのだと思う。

・現場が思いついたアイデアを、すぐ上に上げやすいか
・上がってきたアイデアを、まっとうな意見かどうかきちんと判定できるか
・まっとうな意見だとわかった場合に、即座に実行できるか

これが品質を分けるのだと思う。

セブパシのように安さを求めると、どうしても質を高くできない部分がある。
それはしょうがない。
そしてそれはお客さんも(多くは)納得してくれると思う。

けれども、コストをかけないで質を高める方法はいっぱいある。
そしてそれは、多くの場合現場から生まれてくる。



数ヶ月前に、「ANA的対応か、JAL的対応か 」で、このツイッターを取り上げた。

JALとANAの両社に、マイルをハイチに寄付したいと要望を送ってみた。JAL の回答:「そのようなサービスはございません」、ANAの回答:「過去にもお客様ご要望で四川大地震などで臨時対応したことがあり、早速担当部署に検討させます」。ユーザーと向き合う姿勢がまるで違う。

今なら、「それは間違いだ」って言える。

ユーザに向き合う態度が違うんじゃない。
会社の上層部が、現場にいるスタッフと向き合う態度が違うんだ。

つまり、旧JALの現場スタッフが悪いんじゃなくて、
恐らく、旧JALの上層部が、現場スタッフに対して適切な態度を取っていなかったんだと思う。
旧JALの現場スタッフが検討することさえしなかったというのは、そういうことだと思う。

ANAだって、「やる」とは別に言っていない。
最終的には、コストの問題で「やらない」という決断を下すかもしれない。
でも、現場は現場の意見を上に挙げることができる。
ANAが「やる」と即答したのは、「その意見を上と検討します」ということだと思う。

品質は、現場の細かい努力の積み重ねで獲得されるものだと思う。
だが、現場がいかに頑張っても、
マネジメントがしっかりしていなければ、
現場の努力が品質改善に結びつかないんだと思う。

現場の努力は、
品質改善の必要条件だが、 (=現場の努力がないと、品質改善できない)
十分条件ではない。 (=現場の努力だけでは、品質改善できない)

だから、現場から上がってきた真っ当な意見をいかに即座に実行できるか。
このマネジメントの仕組が合わさって始めて、品質改善の十分条件になるんだと思う。

高価格で提供した場合に高品質にできるのは当たり前だが、
低価格と高品質を両立できるかどうか。
ここは、経営力の巧拙が特に問われる分野なのだと思う。




ではひるがえって、自分自身の会社、レアジョブはどうなのか。


実は、うちの会社でも、ちょっとやり方を変えた。

講師か正社員、インターンのことしかいつも書いていないが、
うちのアルバイトの人も、意識が高くてとっても優秀。

で、あるときアルバイトの1人が、4ページにもわたるレポートを書いてきてくれた。
その内容を一言でいうと、「アルバイトの意見をもっと吸い上げてほしい」
ということだった。

ナルホド、と思って、意見を共有する仕組みを作り、動かし始めた。

・アルバイトスタッフが、作業中に何か問題点に気付く
・それを3~5行で「改善提案」としてまとめ、メーリングリストに投げてもらう
・僕やCTOが、早い時は10分で、遅い時は1日で返事をする
・即座に実行すべしと判断された意見は、即座に実行する

この仕組をつくってみて、
いいなぁ、なんでもっと早くやらなかったんだろ、と思う。
既にいくつかアイデアを実行した。

現場の意見を吸い上げて、判断して、よいものは即実行。

レアジョブはまだまだ発展途上のサービスだけれど、
これを続けていけば、もっともっと良いサービスになることができると思う。




(セブパシを批判する内容を上に書きましたが、
 セブパシはけっこう、「飛行機が落ちる率」が低いことを書いておきます。
 山崎豊子著「沈まぬ太陽」を見る限り、飛行機を落とさないためには現場が重要なようです。
 おそらく、ある程度は、意見を吸い上げる仕組みがしっかりしているのだと思います)

コメント

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1 ■無題

で、帰りの分を買わなくても乗れたんですか?
それとも結局買ったんですか?

2 ■私も同じような目に遭いました

こんにちは。
私もセブパシには本当にイヤな目に遭ってばかりです。格安航空会社といいつつもプロモ以外の料金はフィリピン航空よりも高いという詐欺のようなビジネスをしている会社です。私が知人とその家族とセブにいったときにWeb予約で席が広い非常口の席を有料で予約しました。子供も年齢を入力して予約をしました。空港に行くと「お子さんはその席には座れません。」と言われ、「それならなぜWeb予約の時に警告を出さないのか?子供というのはわかるでしょ?」ときくと「あなたが規定を読んでいないだけ」と突きつけれられ、結局払い戻しもなく、1,200ペソを損した経験があります。安かろう悪かろうの典型的な会社です。私はよほどのことがない限り乗りません。

3 ■無題

沈まぬ太陽
山崎豊子さんの著作ですよー
山田になってます。。
揚げ足取りですいません。

現場の意見を上にあげられるか、以前、JASだった時代にくってかかったことがあります。
当然、今回のクレームについて御社でどう対応するか連絡しろ言った記憶が蘇りました。
こうやってお客の側も企業の教育と言ってはおこがましいですが、改善を追及する姿勢も大事だろうなあと思います。

4 ■無題

今回書かれているようなことを、私たち生徒はいつもレアジョブに対して感じていますよ。
なんでこんな簡単なリクエストにも応えていただけないのかと。

>けれども、コストをかけないで質を高める方法は
いっぱいある。
>「どれだけのお客さんが、フィリピンのビザ事情や御社のポリシーに通じていると思いますか?」
>恐らく、JALの上層部が、現場スタッフに対して適切な態度を取っていなかったんだと思う。
全く同感です。
ぜひそのまま御社に当てはめてみてください。

アルバイトや社員の方の意見の前に、まず顧客である私達生徒の意見を吸い上げ実施するのが最優先事項だと思いますが、いかがでしょうか?

5 ■Re:無題

>airさん

帰りのOpen航空券を買いました。
その券自体はそんなに高くなかったのですが、往復新幹線代を考えると・・・でした

6 ■Re:私も同じような目に遭いました

>Akiraさん

いつもブログを勉強させてもらっています! フィリピンの会社は、一般的にこういう吸い上げる仕組みは弱そうですよね。

7 ■Re:無題

>オレ様さん

そうですね、そういうフィードバックがあってこそ品質は伸びていくのだと思います。フィードバックなしの品質改善は、ひとりよがりになりがちなので。

8 ■Re:無題

>ほづみさん

顧客である生徒様の意見を吸い上げ実施するためには、顧客と一番接しているアルバイトや社員の意見を吸い上げる仕組みが必要だ、というのが記事で意図でございます。

レアジョブには生徒様から様々なリクエストを頂きます。
生徒様全体の満足度を最大化するため、下記の点でご要望には優先順位をつけさせていただいております。

・そのご要望を叶えるタスクの費用対効果は、他のご要望の場合と比べ、良いか・悪いか
・そのご要望は他にも多くの生徒様から頂いているか
・そのご要望をかなえた場合に、他の点でデメリット・副作用が生じないか

「なんでこんな簡単なリクエストにも応えていただけないのか」という印象になってしまい、たいへん申し訳ございません。

ただ、生徒様1人・講師1人からすると「簡単なリクエスト」でも、講師1000人・生徒様全体に対して適用する、という点で、
デメリットの方が大きくなったり、他のタスクの方が優先事項が高くなってしまう場合がございます。

このコメント欄では個別具体的な回答ができかねるため、具体的にはカスタマーサポートまでお問い合わせいただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

9 ■Re:無題

>オレ様さん

山田→山崎 に修正しました。ありがとうございます!

10 ■確かに^^;

私も中間管理職で、しかも本部よりのポジションにいます。
現場の意見をすぐに吸い上げる事が如何に大切かを実感しています。

結構、現場に意見するよりも、今の時代はメールで要望を伝える事ができるので、案外そっちを優先しなくてはいけない事もありますが。

大切な事は、実行する立場の人が、鋭い感性を持ってるか?と思います。現場での経験を踏んでいて、尚且つやる気のある人なら、1聞いただけで10わかると思うんです。

あと、直接じゃなくても、日々の出来事で自分は何を教えられているかを知ることが出来る人が、スタッフにいるか?だと思います。

という事で、今回の記事は勉強になりました^^

これからもレアジョブ頑張って下さい^^/
先日提案した私の意見もよろしくお願いしますw

11 ■Re:確かに^^;

>Yasuさん

コメントありがとうございます。
色々考えさせていただくことがあり、今日新たなエントリを1つ書きました。

ご提案、本文に書いた法則・優先順位に則ってという形になりますが、生徒様の満足度向上につなげていきたいと考えております。

よろしくお願いいたします。

12 ■無題

なるほど。すごい遠回りの上大変でしたね。確か新しいターミナルに着く会社ですよね。
帰りの券を買わなかったとしてもそんなに節約になったんですか。乗ってみたかっただけなんじゃ。
それにしても・・、毎日ブログのネタが次からでてきますね。よほど回転の早い人なんだろなぁとは思っていますが。同い年とは。

13 ■会社のポリシーではないですよね

ちょっと気になったので書きますが、フィリピンへのビザ無し渡航で復路のチケットが必要なのは、外務省のHPにちゃんと書いてあります。ご覧になったことはないのでしょうか。

http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info4_S.asp?id=013#1

「どれだけのお客さんが、フィリピンのビザ事情や御社のポリシーに通じていると思いますか?」
とカウンターで憤慨されたそうですが、これはあちらの国の法律なので、セブパシを批難するのは筋違いではないですかね。

「僕の気持、わかりますか?」
気持ちは理解できても、航空会社がお国の法律をねじ曲げる訳にはいかないでしょう。

あと、フィリピンは基本出稼ぎをする国民の国なので、フィリピンへ帰ろうとして片道航空券を買おうとしたときに、「往復航空券が必要です」などというメッセージが出てくれば紛らわしいだけです。旅慣れていない海外の旅行者で無い限り、ビザ無しの片道チケットを買ってしまうケースは少ないでしょうし、全体の比率から言えば僅かかと思います。セブパシがあえて警告を出さないのも、まれなケースのために下手に警告を増やして、メインの利用者を混乱させないのが目的ではないでしょうか。

なお、ANAのサイトでアメリカへの片道チケットの購入手続きを確認しましたが、ビザ無し渡航に往復航空券が必要である、などという警告は出てきませんでしたよ。なぜか考えてください。

生意気な言い方かもしれませんが、入国に関する法律を事前に調べるのは自己責任の範疇だと思います。旅行会社を通してこのような経験をされたのなら旅行会社の責任であり、落ち度ですが、ご自身で格安チケットを調達なさるのならば、ご自身が旅行会社と同じ機能を果たしているわけですよね。

最後に、この様な内容のブログに特定の会社名を出すのは、個人的に共感でき兼ねます。このようなトラブルがあったことを伝えるのに特定の団体名を出す必要はなく、内容からも攻撃的な態度が見受けられました。

14 ■無題

入国審査の段階で復路の航空券が必要というのはフィリピンの法律ですが、
「片道航空券の客を乗せない」のは、航空会社のポリシーとのことでした。

「券は売るけれど乗せない」 というシステムだったため、
注意書きは出しているのか尋ねたところ、
出していないとのことでした。

なお、ANAのページには、ビザや復路用航空券についての注意書きは、不十分ながらですが、ありました。
http://www.ana.co.jp/int/airinfo/guide/visa/index.html


> 最後に、この様な内容のブログに特定の会社名を出すのは、個人的に共感でき兼ねます

おっしゃる通りかと思います。
一個人の匿名のブログだったら良いのですが、「レアジョブ」という会社名を出している以上、それ相応の注意をすべきだと思います。
この点は修正いたします。

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