日本航空のサンパウロ路線の廃止が再燃した。先週末、日本のマスコミが一斉に報道し、在日ブラジル関係者に衝撃が走った。日航本社内で検討されている再建計画が、公式発表ではなく、漏洩したのか、意図的にマスコミに流されたのか。日航広報部は、「何一つ決まっていない」と打ち消しに躍起となっている。だが、日航の再建は予想以上に困難なことは伝わってくる。既に公表されている再建案より大ナタを振るわなければ、管財人や銀行団が承知しないということだろう▼最終的にサンパウロ路線を継続しようとするなら政治決着しかない。もともと、サンパウロ路線は、政治路線だった。日本と米国の航空協定は不平等で米国は日本からの以遠権を自由に行使できたのだが、日本は米国から第3国への以遠権が認められなかった。それを長年かかって獲得したのがサンパウロ路線だった。実現したのは1978年の移民70年祭だった。日系コロニアにとっても悲願だったが、日本政府にとっても日航にとっても同様だった。以来、31年間、「日本の翼」は両国間を飛び続けてきた。かつては、ブラジルのヴァリグ航空とともに両国を結ぶ直行便として競い合ったが、ヴァリグが経営不振で撤退した後も日航は孤塁を守ってきた▼筆者は今回のサンパウロ路線廃止の報を東京で知った。3日付け読売新聞朝刊の一面トップ記事だった。驚きというより落胆だった。3月下旬にサンパウロから満席のJAL便に搭乗、日本に向かった。以前に比べると機内食やサービスの低下は否めない。しかし、「日本の翼」の心地よさは変わらない。乗務員の人たちは以前にも増してかいがいしく働いている姿を目の当たりにした直後だけに、サンパウロへ戻るのが憂鬱になる▼政治決着を期待しても、今の政権にその英断を下せる政治家がいるとは思えない。日本企業がようやくブラジルに目を向け始め、これから両国間の往来が激しくなろうというときに、大所高所から判断できないとすれば、少なからず国益を失うことになりはしないか。日系コロニアはじめ日本からブラジルに進出している企業の人たちが様々な形でサンパウロ路線の存続を訴えるしか方法は残されていない。(鈴)
2010年4月6日付
|