日本航空は、サンパウロ路線の運休を正式に発表した。10月から「日本の翼」が飛来しなくなる。これまで、日系コロニア、日本企業は再三にわたり同路線の維持・継続を訴えてきたが、願いはかなわなかった。日本航空の公共交通機関としての姿勢を疑わざるを得ない。同社だけではない。巨額の債権放棄を最小限に抑えたい日本政策投資銀行や3メガバンクの意向も大きかったのだろう。さらに、日本政府の無策ぶりにも怒りがこみ上げる▼世界の先進各国の航空会社はブラジルへの乗り入れを継続している。アジア各国をみても、中国のエアー・チャイナ、韓国のコリアン・エアーが定期路線を飛ばしている。なぜか。ブラジルが世界経済の中で大きな発展を遂げ、パートナーとして不可欠だからだ。日本企業も遅ればせながら数年前から投資の拡大や市場調査などで毎日のように日本をはじめめ北米などからビジネスマンが往来している。こうしたブラジルの立場は銀行が一番良く理解しているはずなのだが、目先のことだけを考え将来有望なブラジルを見捨てた。日本政府も同様だ。この欄で何度も書いたことだが、サンパウロ路線は米国との航空協定の不平等を是正する以遠権を獲得するために長年かかって勝ち取った路線だ。ある意味で国威の象徴とも言うべき路線をみすみす手放したことになる▼昨年12月、ブラジル日本文化福祉協会、ブラジル日本都道府県人連合会、ブラジル日本商工会議所は、国土交通大臣、日本航空社長にそれぞれ、サンパウロ路線の存続要望の嘆願書を送っていたが、何の返事もなく踏みにじられた。日系コロニアをはじめブラジルで事業展開をしている日本企業の駐在員は見捨てられたことになる。日本の国際化の最前線で活動している海外の日本人、日系人を支援するのが日本政府の役割だろう。30数年間定期航空路線として歴史を積み重ねてきた同路線が運休されることをどう考えるのか。日航関係者の話では、同路線は黒字路線に転換することは容易だという。その努力もせず、安易な方法を選択した日航の企業体質では再建などおぼつかないのではないか。▼間もなく日伯議員連盟会長の麻生太郎氏が来伯する。今回のサンパウロ路線の運休について、麻生氏の考えをぜひとも聞いてみたいと思う。(鈴)
2010年4月29日付
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