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「言葉」と「文章」と「文脈」(context principle) 【しばらく休みなので再掲載】
明日から土曜まで東京へ出張なので，今週はしばらく記事やコメントが書けません．一応，ノートパソコンと FOMA は持っていくけどね (今月はパケット代が4000円近く残っているので，通信料金は心配してない)．と，いう訳で，昨年９月に書いた文章を今日は再掲載します．
上の写真は日本基督教団が使ってる『讃美歌21』(1997, 日本基督教団出版局，￥7600)のＡ５版です．私は視力が悪いので，普通の人が使ってる 日本基督教団出版局 讃美歌 に載っている「Ｂ６版」が読めないので, (今まで使っていたＢ６版は新しい信者さんに寄附した)，このばかでかいＡ５版を使ってるのだけど，基本的にピアノやオルガンの楽譜用に作られているので重たい(笑) お金を惜しんでＡ６版を買うと，字の小ささに後悔します．(^^;)聖書も「新共同訳」のＢ６版をお薦め
以前は『讃美歌Ｉ』『讃美歌II』『こどもさんびか』などに分かれていたんだけど，牧師や教会の考え方によって使い分けるのが大変ということで，１つに統一したというのが教団の言い訳らしい．いま思いだしてみると，キリスト教との付き合いは長くて，横浜の幼稚園からなんだな．もっとも，そこは近辺にたくさんある，大学までエスカレータ式の私立の附属小学校への予備校みたいな所で，しつけや読み書きがすごくうるさかった記憶がある．通っていた市立小学校の隣の丘の上にそういったお嬢様学校があったんだけど，いざ「平民」に落ちてしまうと，彼女たちとは全くの別世界になり，接触もなくなる．そして，良い所のお坊ちゃまのお嫁さんになっていくのかなと思うと，何となく可哀想に思えたりして．
＃ その良い所のお坊ちゃまが安倍みたいな奴だと悲惨だー(笑)
キリスト教でも，イエスの言葉のことを「ロゴス」(ギリシア語で λογοｓ，語尾の σ シグマは ｓ に変化し，正確な発音は「ろーごす」)と言うが，「ロゴス」にはもう一つ「理性」という意味がある．例えば，λογον σισωμι ろーごぬ しーそみ と他動詞と組み合わせると (ギリシア語コイネー方言 (イエスが生きていた頃の地中海共通語) では４格の目的語を他動詞の前に持って行って２語他動詞へ変化できる．だから ｓ が４格の ν に語尾変化してる)「〜を説明する」という意味へと換えることができる．
(これを「熟語」などと言ってるバカは論外だから相手にしない．また格変化はドイツ語式に数字にしている．奪格は７格，呼格は８格．スラヴ語の造格を５格，前置格を６格とすると，ほぼ全欧州の文法が網羅できると，高校時代にドイツ語を特訓してくれた言語学者が教えてくれた)
つまり，「ろーごぬ しーそみ」の例で示したように，「言葉」というのはあくまでそれが語られた・記述された「文脈」の中で理解されるべきなのである (あえて「解釈」という言葉は使わない．主観的になるからだ)．特に福音教会や原理主義系の人に多いけど，(カトリックでもプロテスタントでも時々いるけど)，聖書の一部分だけの「言葉」や「一文」だけを取り出して，それだけを後生大事に念仏しているのは，私は間違っていると思う． その段階で仏教や神道から抜けきっていないことがバレバレだからだ．
例えば，分かり易い例として，ルカによる福音書 16章１節〜18節 を引用してみよう．長い文章だが，ちょっと付き合って欲しい．
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「不正な管理人」のたとえ
1 イエスは、弟子たちにも次のように言われた。「ある金持ちに一人の管理人がいた。この男が主人の財産を無駄遣いしていると、告げ口をする者があった。
2 そこで、主人は彼を呼びつけて言った。『お前について聞いていることがあるが、どうなのか。会計の報告を出しなさい。もう管理を任せておくわけにはいかない。』
3 管理人は考えた。『どうしようか。主人はわたしから管理の仕事を取り上げようとしている。土を掘る力もないし、物乞いをするのも恥ずかしい。
4 そうだ。こうしよう。管理の仕事をやめさせられても、自分を家に迎えてくれるような者たちを作ればいいのだ。』
5 そこで、管理人は主人に借りのある者を一人一人呼んで、まず最初の人に、『わたしの主人にいくら借りがあるのか』と言った。
6 『油百バトス』と言うと、管理人は言った。『これがあなたの証文だ。急いで、腰を掛けて、五十バトスと書き直しなさい。』
7 また別の人には、『あなたは、いくら借りがあるのか』と言った。『小麦百コロス』と言うと、管理人は言った。『これがあなたの証文だ。八十コロスと書き直しなさい。』
8 主人は、この不正な管理人の抜け目のないやり方をほめた。この世の子らは、自分の仲間に対して、光の子らよりも賢くふるまっている。
9 そこで、わたしは言っておくが、不正にまみれた富で友達を作りなさい。そうしておけば、金がなくなったとき、あなたがたは永遠の住まいに迎え入れてもらえる。
10 ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。ごく小さな事に不忠実な者は、大きな事にも不忠実である。
11 だから、不正にまみれた富について忠実でなければ、だれがあなたがたに本当に価値あるものを任せるだろうか。
12 また、他人のものについて忠実でなければ、だれがあなたがたのものを与えてくれるだろうか。
13 どんな召し使いも二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」
律法と神の国
14 金に執着するファリサイ派の人々が、この一部始終を聞いて、イエスをあざ笑った。
15 そこで、イエスは言われた。「あなたたちは人に自分の正しさを見せびらかすが、神はあなたたちの心をご存じである。人に尊ばれるものは、神には忌み嫌われるものだ。
16 律法と預言者は、ヨハネの時までである。それ以来、神の国の福音が告げ知らされ、だれもが力ずくでそこに入ろうとしている。
17 しかし、律法の文字の一画がなくなるよりは、天地の消えうせる方が易しい。
18 妻を離縁して他の女を妻にする者はだれでも、姦通の罪を犯すことになる。離縁された女を妻にする者も姦通の罪を犯すことになる。」
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イエスは15節で決定的な解答を出していることが分かりますね．この管理人は確かに悪い人間だった，しかし彼はそれを罪だと知っていながら，あくまで悪人を演じ続けて死んだ．そこまでファリサイ派の人たちは正しい人・悪人を演じられるか，と問うたのです．興味のある人はドストエフスキーの『罪と罰』を聖書を参考にして読まれると良いでしょう．
実はこの箇所は，旧約聖書の アモス書 ８章４節〜７節 と深く絡んでいます．
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商人の不正
4 このことを聞け。貧しい者を踏みつけ／苦しむ農民を押さえつける者たちよ。
5 お前たちは言う。「新月祭はいつ終わるのか、穀物を売りたいものだ。安息日はいつ終わるのか、麦を売り尽くしたいものだ。エファ升は小さくし、分銅は重くし、偽りの天秤を使ってごまかそう。
6 弱い者を金で、貧しい者を靴一足の値で買い取ろう。また、くず麦を売ろう。」
7 主はヤコブの誇りにかけて誓われる。「わたしは、彼らが行ったすべてのことを／いつまでも忘れない。」
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つまり，イエスはアモス書のこの部分を引用して，人々を諌めたという訳です．どんなに小さい不正でも，神は必ず見ている，と．だから，不正をするなら堂々と，悪人を演じるなら堂々と，と説いたのです．
こうして見てみると，私が引用した聖書の文章というのは単一の単語や文章だけを引用しただけでは意味が分からないようになっていることが分かると思います．こういうのを哲学では「コンテキスト感覚 (context principle，英和辞典には「文脈の原理」と直訳されてる)」と言うらしいけど；大江健三郎の小説もまさに聖書と同様，一部分だけを読んだだけではさっぱり訳が分からない．大江の小説を，何がノーベル文学賞作家だと投げ出してしまう人が多いのは，この「コンテキスト感覚」を理解していないせいじゃないかなと思ってます．
分かり易く言うと，長い文章を読んで要約する訓練がなされていない，長い文章を書きつづる訓練が出来ていない証拠です．日本の学校教育で「哲学」がようやく高校で「倫理」として教えられるのも，本来小学校高学年から教えられるべき「哲学」を習っていないせいじゃないかと思ったりする．中学受験の際に「国語」で点差が一番開く論説文の長文読解は，実はこの「コンテキスト感覚」なのだ．主観的でなく論理的な文章をたくさん読み込み，知らず知らずのうちに「哲学」が身に付いているかどうかが問題なのである．朝日新聞の天声人語を毎日ノートに書写するように命じた祖父には大変感謝している．
もし，語学に堪能な方ならば，洋書屋で大江健三郎や村上春樹などの日本作家の小説のペーパーバックを手にとってみられると良いかなと思います(恐らく次の日本人ノーベル賞作家は村上春樹でしょう)．ノーベル賞に値する文学作品というのは外国語に翻訳された際に，全体丸ごとで分かり易い文章であって，決して「解釈」などが入り込むすきまのない，「言葉」の意味で議論するすきまのない，理科系の論文のような世界なのです．そういう意味で，日本人だから外国語を学ぶ意味が分からないなどという屁理屈を言っている人などは「自ら世界を閉ざしてしまった巻き貝」のようなものだと言って良いでしょう．そういう人は醤油をかけて網の上で炭火焼きにしないと，「死刑」の意味は分からないのではないでしょうか．
＃ 分からない人は親御さんにフランキー堺の「わたしは貝になりたい」って映画を見たことがある？ と聴いて下さい(笑) テレビ版は所ジョージですが．
これが，ここ一年ほど，他の人のブログにて，私のコメントへ攻撃を加えた人への回答です．なお，匿名にてコメントされた方は遠慮なく削除させて頂きます．それと，ネット上にて私が本名を出さないのはプライバシー侵害によって生活を乱されたくないという理由があります．自らの本名を出したい方はどうぞ，しかしそれを他人に押し付けるのは憲法違反ですし，私から見れば「広告」にしか見えません．
＃ 半年前，集英社文庫から文庫本が出た某少女マンガ家は作者紹介で某国立大卒という学歴を出していました．彼女が自ら出したのか，編集が勝手に出したのかは知りませんけど(私はデビュー時から知ってましたが)，マンガという世界に「学歴」を持ち込んで，果たして売り上げが上がるのか，私は疑問です．マンガを読んでいれば，この人はどのくらいの教養があるのかくらいは自然と分かります．一般書もそうですね．学歴を見て本を買うのは，同じ分野の専門家くらいのもんです．一般の方々なら，へーそう，エライんだね，位のものでしょう．その辺を誤解している「学歴コンプレックス」にまみれた人が私は一番嫌いです．
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日本の「大学」で学位を取れなく，アメリカの Degree Mill (学位製造所) にカネ積んで紙切れを買って来たバカにはつける薬がない．どうせ自分じゃ英文も書けない，工業出身のくせにでかいつらばかりして．所詮，教育学部出身なんてのはこの程度なんだろうな．
＃ 口惜しかったら，ラテン語とイギリス英語で論文でも書いてみろ．日本で幾ら名前が売れようと，そんなのはクソみたいなものです．興味がある人は岡山での学会で会いましょう(笑)
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