それでは、公的支出を上げれば出生率が上がるかというと、実はそんなに単純ではありません。下のグラフの傾きから計算すると、対GDP比で0.5%支出を増やしても出生率は0.06%しか上がりません。日本の場合、現在の1.37が、せいぜい1.43になる程度です。もちろん、支出を増やさないよりはいいですが、まだまだ子供向けの手当の額は小さいのです。
(先進諸国における家族・子供向け公的支出と出生率との相関)
コンビニのバイトすら狭き門
では、どうすれば出生率が上がるでしょうか。その答えは「若年層の雇用」にあります。最近、私たち親世代が顔を合わせると、子弟の就職がいかに大変か、という話になりがちです。就職先が決まらない。決まっても長時間労働のうえ、月の手取りが残業代を合わせても20万円にもならない…。コンビニエンスストアでのアルバイトですら、狭き門になっています。
少子化の大きな原因の一つは、未婚化・晩婚化が進んでいることですが、背景には、安定して働ける環境がないため、若年層が結婚できないことがあります。
具体的なデータとして、女性が結婚相手の男性に求める年収と、実際に男性が稼いでいる年収を見てみましょう。その間には大きなギャップがあります(下のグラフ参照)。
東京の場合、女性の約40%は年収600万円以上の男性を希望しますが、実際の年収が600万円以上の男性は、25〜34歳でわずか3.5%しかいません。
つまり、子ども手当は確かに有効なのですが、本当に少子化問題や不況を解決しようと考えたら、若年層の安定雇用を実現しないと、効果は非常に薄くなってしまうのです。