勝間和代のニュースな仕事術

2010年4月21日

出生率を上げるために若年層の雇用問題を解決しよう!

第38回 子ども手当法成立

 それでは、公的支出を上げれば出生率が上がるかというと、実はそんなに単純ではありません。下のグラフの傾きから計算すると、対GDP比で0.5%支出を増やしても出生率は0.06%しか上がりません。日本の場合、現在の1.37が、せいぜい1.43になる程度です。もちろん、支出を増やさないよりはいいですが、まだまだ子供向けの手当の額は小さいのです。

少子化対策と出生率
(先進諸国における家族・子供向け公的支出と出生率との相関)
出所:社会実情データ図録 OECD(2007)のSocial Expenditure Database(SOCX)と世銀(WDI)の資料から作成

コンビニのバイトすら狭き門

 では、どうすれば出生率が上がるでしょうか。その答えは「若年層の雇用」にあります。最近、私たち親世代が顔を合わせると、子弟の就職がいかに大変か、という話になりがちです。就職先が決まらない。決まっても長時間労働のうえ、月の手取りが残業代を合わせても20万円にもならない…。コンビニエンスストアでのアルバイトですら、狭き門になっています。

 少子化の大きな原因の一つは、未婚化・晩婚化が進んでいることですが、背景には、安定して働ける環境がないため、若年層が結婚できないことがあります。

 具体的なデータとして、女性が結婚相手の男性に求める年収と、実際に男性が稼いでいる年収を見てみましょう。その間には大きなギャップがあります(下のグラフ参照)。

未婚男性の年収と未婚女性の期待年収のギャップ
注:25〜34歳の若者を対象とした2003年の厚生労働省助成調査の結果による
出所:山田昌弘 著『パラサイト社会のゆくえ』(筑摩書房)

 東京の場合、女性の約40%は年収600万円以上の男性を希望しますが、実際の年収が600万円以上の男性は、25〜34歳でわずか3.5%しかいません。

 つまり、子ども手当は確かに有効なのですが、本当に少子化問題や不況を解決しようと考えたら、若年層の安定雇用を実現しないと、効果は非常に薄くなってしまうのです。

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著者プロフィール

勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家、公認会計士。1968年東京都生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応義塾大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得。以後、アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガン証券を経て独立。3女の母。著書に『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』『効率が10倍アップする新・知的生産術 自分をグーグル化する方法』『お金は銀行に預けるな』『決算書の暗号を解け!』『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』など多数。印税寄付プログラム「Chabo!」参加著者。公式ブログ「私的なことがらを記録しよう!!

このコラムについて

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日経ビジネスアソシエで好評連載中の「勝間和代のニュースな仕事術」。経済評論家の勝間和代さんが、話題のニュースを題材に仕事力を高める方法をアドバイスします。

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