「無能野郎」「氏ね」中傷氾濫…2ちゃん本印税差し押さえの“秘策”は有効か
2010年05月04日14時29分 / 提供:産経新聞
匿名の悪意に対抗する“一手”となるか−。インターネット掲示板「2ちゃんねる」上の書き込みをめぐる名誉棄損訴訟で、原告側が2ちゃんねる関連本を発行した出版社から元管理人へ支払われる印税の一部を、損害賠償金として差し押さえることに成功した。ネット上の書き込みによる名誉棄損訴訟は後を絶たないが、相手側が賠償金の支払いに応じない場合、差し押さえ対象となる資産を確定させる挙証責任は原告側にあるため、回収のハードルは高い。抜本的解決策はあるのか−。
■IPなしで“犯人”特定は至難の業
《この無能野郎、氏(死)ね》
《人殺し、早く逮捕されろ》
《○○は何もしないで給料もらってます》
《○○は△△の布教活動してる》
ネット上の掲示板やホームページ(HP)にあふれる誹謗(ひぼう)中傷の書き込み。中には、名前や住所、勤務先がさらされているものや、卒業アルバムの写真が流出している場合すらある。
しかし、書き込みが明らかに名誉棄損にあたる場合でも、誰がどのパソコンから書き込んだかを、名指しされた被害者が独力で特定することは至難の業だ。このため、被害者は掲示板やHPの管理者、プロバイダーに、書き込み主のネット上の住所にあたるIPアドレスを開示するよう求めることになる。だが、管理者らがこれに応じず、訴訟に発展するケースもあるのだ。
ネット上の悪質な書き込みをめぐっては、最高裁が今年3月、男性被告が自身のHP上で、ラーメンチェーンの運営会社を「カルト団体が母体」などと掲載したことについて、名誉棄損が成立するとの初判断を示した。また、4月には同じく最高裁が、プロバイダーに悪質書き込みの発信者情報を開示するよう求めるなど、被害者保護を重視した判決が相次いだ。
その一方で、いったん名誉を傷つけられた被害者が、名誉を回復するまでの道のりは依然として厳しいことも事実だ。
今年1月、新潟合同法律事務所(新潟市)のHPに「『2ちゃんねる』に対する損害賠償金を回収!」と題する文章が掲載された。これは同事務所の斉藤裕弁護士が掲載したもので、2ちゃんねる上の書き込みをめぐり、2ちゃんねる関連本の印税の一部、数十万円を差し押さえたことが表明されていた。
しかし、斉藤弁護士は「賠償金を回収するまでには、数年間もの時間を要した」と振り返る。
回収までの道のりはこうだ。
事の発端は数年前、2ちゃんねる上で見つかった誹謗中傷の書き込みだ。中傷された人物から依頼を受けた斉藤弁護士は「名誉棄損にあたる」として、IPアドレスなど発信者情報の開示▽書き込みの削除▽慰謝料−を求めて、当時、2ちゃんねるの管理人だった「ひろゆき」氏こと西村博之氏を提訴するなどした。いずれも請求は認められたが、西村氏側は書き込みの削除以外には応じなかったという。
そこで、斉藤弁護士が目をつけたのが、2ちゃんねるの“派生商品”だった。
■賠償金回収の決め手はメール
2ちゃんねるは、1日の書き込み数が数十万件とも言われる、日本最大級の掲示板だ。書き込み内容から生まれた書籍、ドラマも少なくない。その代表格が、平成16年に書籍化された『電車男』だ。
この作品は、「電車男」というハンドル名を持つ2ちゃんねるユーザーの男性が、電車内で出会った女性へのアプローチ方法などについて、掲示板内で相談。これに返答した他ユーザーとのやり取りが書籍化されたものだ。書籍を基に制作された映画は興行収入30億円超とも言われるヒット作となった。
斉藤弁護士は、『電車男』の発行元である新潮社が西村氏へ支払う印税を差し押さえようと考えた。しかし、新潮社は「印税債権を持っているのは、管理人の西村氏ではなく都内の会社」だとして支払いを拒否した。さらに、「『電車男』は増刷予定がないので、今後は収入が見込めない」とも告げられたという。
『電車男』での印税差し押さえはあきらめたものの、この数カ月後の20年6月に、斉藤弁護士は『電車男』と同じく2ちゃんねる上の書き込みを元にした書籍『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』が新潮社から出版されたことを知る。
このため、斉藤弁護士は新潮社を相手取り、西村氏に渡る予定の印税を原告に支払うよう求め、東京地裁に提訴した。
今回、印税の支払い先に指定されていたのはシンガポールの法人だったが、西村氏が振込先を指定するメールを送っていたことなどから、東京地裁は「西村氏個人に帰属する債権と認められる」と認定して和解を勧告、昨年12月に和解が成立した。和解金として、新潮社から数十万円が原告に支払われた。
■印税の回収に成功しても「焼け石に水」
「シンガポールの法人が事実上のダミー会社と認められた。2ちゃんねるをめぐる訴訟で、まとまった賠償金を回収した例は珍しい」
斉藤弁護士は和解の意義をこう説明した後、次のように語った。
「賠償金が回収できずに泣き寝入りする人もたくさんいる。効率的な対策を進めるためにも、被害者同士の情報共有をもっと活発化させるべきだ」
こうした賠償金回収にあたり、原告側にとって最も大きなハードルとなっているのは、差し押さえ対象の資産を原告側が探し出して立証しなければならないという点だ。
しかし、西村氏は資産が1億円以上ともうわさされる一方、実際の所有状況についてはほとんど明らかになっていない。斉藤弁護士によれば、2ちゃんねるの広告を扱う都内の会社は、西村氏が代表となっているものの、西村氏の父親の家が本店所在地として登録されていた。財産開示の申し立ても行ったが、西村氏の協力は得られなかったという。
さらに、差し押さえることができた印税は数十万円程度。斉藤弁護士は「そもそも『ブラック会社〜』は西村氏が書いた本ではないから、印税収入自体がそんなに多くない。差し押さえはできたが、原告が受けた被害に比べて、焼け石に水のようなもの」と嘆く。
2ちゃんねるに関する訴訟を約30件扱った経験のある篠崎正巳弁護士(第一東京弁護士会)によれば、損害賠償金を回収するため、数年前に都内の西村氏の自宅マンションを訪れたが、「室内にあったのは冷蔵庫やテレビなど、生活必需品にあたるものばかりで、差し押さえはできなかった」と明かす。また、「収入が入る金融機関の口座も突き止めることができなかった」(篠崎弁護士)という。
また、西村氏は数年前に転居して以降、公の場にほとんど姿を現さず、「所在がつかめない状況にある」(篠崎弁護士)ため、賠償金回収はさらに困難になっている。
ただ、篠崎弁護士はこうも指摘する。
「そもそも、名誉棄損の被害者が訴訟を起こすのは、無責任な書き込みをやめてもらいたいからであって、そのために発信者のIPアドレスを知る必要がある。お金が欲しいわけではない。情報開示に応じないなど、無責任な管理者には刑事罰を与えられるような法改正が必要だ」
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