ALS原因遺伝子特定 徳島大2教授、世界初治療薬開発に弾み 2010/4/29 10:40
運動細胞が壊れ全身の筋肉が次第に動かなくなる難病「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症」(ALS)の新たな原因遺伝子を、徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部の梶龍兒(りゅうじ)教授と徳大病院の和泉唯信臨床教授(ともに神経内科)が世界で初めて突き止めた。「オプチニューリン(OPTN)」と呼ばれる遺伝子で、あらゆるタイプのALSにOPTNの変異が関与しているとみられる。ALSの発症メカニズムの解明と根本的な治療法の確立に道を開く画期的な発見で、28日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載される。
ALS患者の1割は遺伝性。これまでに見つかった原因遺伝子はそのうちの一部の症例に当てはまるだけだった。
梶教授らは、広島大学原爆放射線医科学研究所との共同研究で、遺伝性の6症例を精査した。いずれにも見られたOPTNの変異に着目し、非遺伝性の症例でも調べたところ、同様の変異を確認。ALSにOPTNが深くかかわっていると結論付けた。
梶教授らによると、OPTNは緑内障にも関係することで知られる遺伝子。OPTNが変異し機能を失うと、がんや炎症を引き起こすタンパク質「NFκ(カッパ)B」が細胞内で増殖。異常にたまったタンパク質が運動細胞を死滅させALSが発症するとみられる。
ALSとNFκBの関連は、ほとんど注目されていなかった。NFκBの抑制剤は既に実用化されており、ALSの治療薬開発にも大きな弾みがつく可能性がある。
治験が視野に
厚生労働省神経変性疾患に関する調査研究班の中野今治研究代表の話OPTNが非遺伝性のALS発症に関与している可能性を示すもので注目される。NFκBの阻害薬による治験が視野に入ったことも大きな成果。
ALS 体を動かす神経が徐々に侵され全身の筋肉が動かなくなる原因不明の難病。感覚や知能に影響はないが、症状が進行すると自発呼吸もできなくなる。有効な治療法は見つかっていない。厚労省によると、発生割合は1年間で10万人に1人程度。国内の患者数は2009年3月時点で約8300人。県内では約80人。