【バンコク=山本大輔】タイのアピシット首相は3日夜、国民向けにテレビ演説し、長引く政治混乱の収拾策として、王室の政治利用の禁止など五つの条件に国民が同意するならば、11月14日に総選挙を実施すると表明した。タクシン元首相派は、幹部会を開いて4日にも正式な対応を決めるとしている。
元首相派が受け入れを表明すれば、1カ月半以上にわたって続くタイ騒乱が収束に向かう可能性がある。ただ、元首相派が求めてきた下院解散・総選挙の時期と首相が表明した11月14日にはなお大きな開きがある。
アピシット首相は2日、和解に向けたロードマップ(行程表)を一両日中に発表する考えを明らかにしていた。
首相は総選挙を実施する前提として、(1)王室の政治利用の禁止(2)貧困層の福祉向上など社会経済政策の改革(3)メディアの中立性の確立(4)死傷者が出た先月の衝突に関する独立機関による真相究明(5)憲法改正や恩赦などを含む政治改革――の5項目を挙げた。すべての当事者がこれに合意した場合、11月14日に総選挙を実施するという。
元首相派はこれまで即時の下院解散、総選挙を求めてきたが、同派幹部の一人は、「政府の提案を歓迎する。今夜にも指導部で相談し、明日にも結論を出したい」と述べた。同派が提案を受け入れた場合は、商業地区の占拠や反政府集会が解散に向かうとみられる。
元首相派と対立してきた市民グループや、空港占拠などで知られる反元首相派の「民主主義市民連合」(PAD)の対応も注目される。