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 研究:ネット右翼と嫌韓流

D 第4回 警察の手先として行動したネット右翼 06/03/03 C 第3回 キリストの幕屋とは? 05/11/24
B 第2回 「つくる会」の本質は右翼ファシスト 05/10/22 A 第1回 「つくる会」教科書反対運動の妨害にあらわれたネット右翼 05/10/11

 

 研究:ネット右翼と嫌韓流

(投稿)  

第4回 警察の手先として行動したネット右翼

 

  

05年8月4日朝、都政を革新する会の北島邦彦事務局長は、ネット右翼と警察が一体となった「暴行罪」のデッチあげで不当逮捕。
しかし、そのでたらめさがあまりにも明白で、いつもは検察の言いなりの裁判所さえ勾留を認めず、2日後に釈放。

 

国鉄闘争の幕引きを狙った国労中央本部による臨時全国大会開催(02年5月27日)に際して、
ビラまき・説得活動をおこなった反対派国労組合員は、警察と一部役員の結託によって「暴力事件」をデッチあげられ、
同年10月に10人が逮捕、8人が起訴。未決勾留は1年3か月の長期におよんだ。写真は03年12月22日、
不屈の獄中闘争のうえ保釈をかちとった被告たち。裁判は、検察側の証拠・証人が次つぎと破綻をきたし、勝利的に前進している。 

 

 

 1 反対派を警察へ売り渡すことを目的に登場

 今回は、ネット右翼が05年夏の杉並での教科書採択をめぐる攻防のなかでおこなった行動をふり返りながら、彼らの位置と存在を確認していきたいと思います。

 

 05年8月4日と12日、杉並区教育委員会で区立中学校の教科書の採択が予定されていた日、「つくる会」教科書に反対する人びとがそれまでの継続的な運動の積み重ねのうえに、杉並区役所前に大挙集まりました。
 これにたいして、「つくる会」派右翼とともに、「2ちゃんねる」をつうじて呼びかけ合ったネット右翼が4日で十数人、12日で数十人ほど現場に登場しました。彼らネット右翼は、杉並区で山田区長が「つくる会」派右翼や「チャンネル桜」(極右の衛星テレビ局)と結びついて扶桑社版「つくる会」歴史・公民教科書を採択しようとしていることを後押しし、その手先となり手助けをするために現れたのです。
 彼らは「嫌韓流」のTシャツを着け、「つくる会教科書賛成」「反対派は中国・韓国の手先」などと書いた紙を挑発的に示し、「つくる会」の一味であることを自認して集結しました。
 彼らはネット上で「反対派をおちょくってやろう」などと示し合わせてきたわけですが、実際におこなったことは以下のようなことでした。

  ◆低水準で軽薄なパフォーマンスの裏にこめられた悪質な意図

 第一に、「つくる会」教科書に反対して区役所前に結集した人びとをすべて「中核派だ」「過激派だ」と大声でふれ回ったことです。これは、「中核派」「過激派」のレッテルを貼れば、運動の勢いを削ぎ、なにかしら傷をつけられるのではないかという浅はかな意図にもとづいています。
 これはまた、戦前の日本で、天皇制国家とその政策に少しでも批判的な人々をすべてひっくるめて「アカ」(=共産党)と呼んで攻撃したのと同じやり方です。
 第二に、道ばたをうろついて冷やし中華や駄菓子の食べ歩きをおこないました。彼らはしきりとこれを「2ちゃんねる的おちょくり」として押し出し、反対派を腐したような気になりたいようですが、自己満足的パフォーマンス以上の効果を上げることはできず、結果としては単に失笑を買い、相手にされなかっただけでした。これは彼らなりに考えぬいた「作戦」だったようですが、彼らが日ごろなれ合い、たむろしている世界(「2ちゃんねる」の右翼的スレッド)が、狭く閉じた自己満足の領域にすぎないことを明らかにしたにすぎません。
 第三に、しかしこのような軽薄なパフォーマンスの背後で彼らネット右翼がじつに悪質な意図をいだいて杉並に登場してきたことを見のがすわけにはいきません。それは端的に言って、「つくる会」教科書に反対する人びとを警察に逮捕させるということでした。そしてこれこそ、ネット右翼の「反対派をおちょくってやろう」の真の意味だったのです。 

  ◆「被害届」で北島事務局長を警察に売り渡す

 8月4日朝9時過ぎ、都政を革新する会の北島邦彦事務局長が、ネット右翼の男Aにたいし「暴行をふるった」として警察に逮捕されました。Aはそのときのようすを得々とネット上で次のように語っています。

8時ころに区役所に来ると、もう2人がいて嫌韓流の本を持って役所の南口のスロープにいた。挨拶してちょっと様子をビデオにとる。ここで件(くだん)の男〔北島事務局長〕と黒シャツの人?とひと悶着(もんちゃく)。ちょっとミスしたが、途中より録画済。……
 役所正面へ移動。ビデオにとってると、件の男を含めて3人ほどがいちゃもん的にビデオ撮影やめろと言ってきた。構うとろくなことにならないと思い無視して一通り録画してみんなのところに戻ろうとしたとき、件の男が私のデイバッグをつかみ後ろ側に引っ張られた。やばいと思い、すたこらさっさと移動し、110番通報。以下警察車両と杉並警察署にて事情聴取。最初は被害届けだすつもり無かったんだけど、警察の一人が出せというので勢いで出してしまった (「2ちゃんねる」への8月4日当日の書き込みより)

 要するにAは、反対派の人びとにビデオカメラを向けて無断撮影をおこなったこと、しかもそのことを北島事務局長らに抗議されてもやめずに挑発的にビデオ撮影を続けたこと、そしてその抗議にたいして「110番通報」をしたことをみずから認めているわけです。Aは携帯電話でだれかと連絡を取りながら、この自覚的な挑発行為をおこなっていました。
 Aは、「警察の1人が(被害届を)出せというので勢いで出してしまった」などと多少弁解めいた言い方をしていますが、要するに彼は、無断ビデオ撮影をおこない明示な形で抗議を受けた挑発者であるにもかかわらず逆に「被害者」になりすまし、「これは犯罪だから加害者を処罰してくれ」と自覚的に申し出たということです。
 このことは、北島事務局長逮捕の3日後のAの言葉に、より明確に表現されています。彼は「2ちゃんねる」への8月7日の書き込みにおいて次のように言っています。

ところで俺が暴行されて車で事情聞かれたとき、ワクテカしながら警察官の人が被害届けだすか?と聞いてきたよ。よっぽど中華喰いじめたいんだろうなあと思ったよ。現時点で公安の重要度は過激派(中核・書く丸)>>>ちゃねらだから、暴力行為に出ない限りは心配無用

 当て字を乱用したこの手の雑文を読み慣れていない方にはわかりにくいと思いますが、要するに、「警察が被害届を出せと強く求めてきたので、俺は『警察はよっぽど中核派を弾圧したいんだろうなあ』と思って被害届を出した。公安警察にとっての弾圧対象としては、ネット右翼よりも過激派のほうがはるかに重要だから、俺たちの方から暴力行為に出なければ自分たちが警察にやられる心配はまったくない。みんな安心して、反対派を挑発し、警察に売り渡そう」というきわめて恥知らずな呼びかけなのです(「ちゃねら」とか「ちゃねらー」とは「2ちゃんねる」の熱心な利用者、「2ちゃんねらー」のこと)。

  ◆警察の弾圧を自分たちの成果と誇る

 他のネット右翼の連中は、Aの挑発―警察へのたれ込み―被害届提出―北島事務局長の逮捕をはやし立て、持ち上げました。たとえば、「先日のOFFではちゃねらーの力により中核派の一人が逮捕されました!」と(「2ちゃんねる」への8月7日の書き込みより)。
 そこではさらに、8月12日の「作戦内容」として「人間の鎖を更に囲む」「プラカードを掲げる」とならんで「中核派を釣り上げる」ことが言われています。そして次のように言っているのです。

公安や警察が許可無し、プラカード持ちのちゃんねらを捕まえる事は無いと思います。微罪で警察が連行するのは何か目的が有るときのみで、今回の目的は中核派の逮捕です。8/4も概ね警察はちゃんねらに好意的でしたよ。おちょくってたじおんぐ氏〔Aのこと〕におとがめ無しでもわかると思いますが……何があっても手を出さないよう、ふれないよう、相手が触ってきたら「おまわりさーん、過激派にころされますー!!」で 

 このように呼びかけあって8月4日と同12日に区役所前に登場したネット右翼は、小泉政権・石原都知事―東京警視庁が「つくる会」教科書反対派を何か口実をつけて弾圧しようとしているということを明確に意識して、その手先としての役割を果たそうとしたのです。それがどれほど反動的で犯罪的なことか、それは現在の日本の治安情勢を考えてみればいっそうはっきりします。

 

 2 戦時型治安弾圧体制めざして繰り返される不当弾圧・不当逮捕 

 いま小泉政権は、アメリカ・ブッシュ政権と一緒になって、泥沼的危機に陥っているイラク侵略戦争・占領をさらに絶望的に続けようとしています。そればかりか、やはりアメリカと手を結んで中国・北朝鮮にたいする侵略戦争を構えています。
 このことは、昨年の10月29日に日米の外務・防衛閣僚がワシントンDCで発表した「日米同盟・未来のための変革と再編」(いわゆる「中間報告」)を見ればはっきりします。詳細を述べることはできませんが、この中間報告について、翌日の『東京新聞』は、「日米『共に戦う』前面に」「基地軽減より抑止力維持」「武力行使の一体化懸念」の大見出しで報じています。また『琉球新報』はやはり見出しで、「日米共同交戦を検討」(05年11月3日付)あるいは「米軍再編“主敵”は中国」(同11月19日付)と報じています。
 このように外に向かって侵略戦争を準備する小泉政権は、内に向かっては、その戦争遂行のための国内体制を整えることに全力をあげています。民営化による労働組合の破壊もその重大な戦略的な環です。そして、平和・民主主義・人権といった「戦後的なもの」すべてを粉砕し、労働者人民の権利を根こそぎ奪いとろうとしています。この大きな流れのなかに、急速に具体化しつつある憲法・教育基本法の改悪攻撃もあります。
 このような攻撃と一体でおこなわれているのが、戦時型治安弾圧体制づくりです。これは共謀罪の新設策動をはじめさまざまな側面でおこなわれていますが、その一環として、このかんの(とりわけ04年以来の)、一連の不当弾圧・逮捕事件があります。言論の自由・表現の自由・集会の自由などとして戦後にあって当然の権利として行使されてきた多くのことがらが、いまや警察によってさまざまな言いがかりをつけられ、逮捕・拘禁・家宅捜索というとんでもない弾圧にさらされるようになっているのです。
 この一連の不当弾圧・逮捕事件については、二つの事例と年表をそれぞれ資料の@Aとしての最末尾に掲載してあります。
 それらの資料を具体的に検討すればよくわかるように、現在の不当弾圧・不当逮捕は、都政を革新する会のような革命的左翼からスターリン主義=共産党、そして労組員・市民・僧侶まできわめて広範な人びとにまで向けられるようになってきています。警察権力によるこのような治安弾圧の状況を意識して、「つくる会」教科書に反対する人びとを警察に逮捕・弾圧させようとして蠢(うごめ)いたのが8月4日・12日のネット右翼だったのです。

 

 3 「俺たちは右翼じゃない」と叫ぶ彼らこそ現代版右翼の一典型

 ここまで検討してきたことをふまえてもう一度05年8月4日と12日の状況をふり返ってみると、次のようなことが言えます。
 

 @教科書採択日の8月4日、反対運動の声の高まりのなかで、区教育委員会は社会科の教科書については採択できず、「つくる会」教科書採択のキーパーソンである納冨教育長さえ「どれでもいい」とまで言わざるをえないところまで追い詰められた。これに危機感を燃やした山田区長は8月12日に向けて、なんとしても「つくる会」教科書の採択をおこなわせようとして執念を燃やしてのぞんでいた。
 A「つくる会」としても、当初確実視していた杉並における「つくる会」教科書の採択がきわめて危機的であることを認識して愕然(がくぜん)とせざるをえなかった。しかも、杉並の運動、とりわけその8・4効果によって、「つくる会」教科書は全国で予想外のほぼ全敗的状況に追い込まれていった。そのため、8月12日は「つくる会」副会長の藤岡信勝氏が陣頭指揮に立って数百人の右翼・ファシストを前夜から区役所前に動員し「背水の陣」でのぞんだ。
 B「つくる会」教科書推進のファシスト石原都知事とそのもとにある東京警視庁は、100人前後の私服・公安警察を先頭に大規模な布陣で反対運動をなんとか弾圧したいと虎視眈々(こしたんたん)と弾圧の機会を狙っていた。
 Cネット右翼は、このような状況のなかで、とりわけ警察が反対運動をなんとか弾圧したがっていることを感じ取り、「反対派をおちょくる」「中核派を釣り上げる」と称して警察の弾圧の卑劣な手先となってふるまった。 
 とくに8月12日には北島事務局長に的(まと)を定めて、「おれたちは『つくる会』じゃない、ただの2ちゃんねらーだ」などとわめき散らし、執拗(しつよう)にまとわりつく行為に出ました。これも4日で「味をしめた」彼らネット右翼が、あわよくば8・4逮捕の再現を狙ってあらかじめ意志一致しておこなった挑発行為=作戦だったのです。

  ◆「つくる会」派右翼の別働隊として、警察の弾圧の水先案内人として

 戦時型治安弾圧体制づくりのために「ことあらば」と機会をうかがっている警察に呼応し、「被害」をデッチあげて反対派の人びとを獄中に放り込むことに少しもためらいを感じないネット右翼――彼らは、人権感覚のカケラも持ち合わせていない腐敗したやから、悪質な右翼と言わざるをえません。
 また、全国から動員された数百人の「つくる会」派右翼と杉並区民を中心とするやはり数百人の反対派が区役所前で対峙(たいじ)・対決するというきわめて緊張した構造のなかでしきりに反対派に挑発行為を繰り返したという意味では、「つくる会」派右翼と完全に一体化していたと言ってけっして過言ではないでしょう。
 05年8月4日・12日、ネット右翼は「つくる会」派右翼の別働隊として、また警察の弾圧の水先案内人としての位置と役割をもって登場したのです。

  ◆中国・韓国・北朝鮮にたいする差別的・排外主義的憎悪が最大の動機

 彼らネット右翼はしきりと、「自分たちは右翼じゃない」「自分たちは『つくる会』じゃない」「ただの2ちゃんねらーだ」などと、ネット上でも現実世界でも自己主張しています。しかしそれはまったくナンセンスです。
 中国や韓国に異様な悪感情をたぎらせ、差別的・侮蔑(ぶべつ)的・排外主義的言辞をわめき散らし、また「左翼」「市民運動」「マスコミ」などへの陰湿な悪罵(あくば)を投げつけ、「つくる会」教科書に大賛成し、反対派の人たちへ誹謗(ひぼう)中傷を叫び、「被害」をデッチあげて警察に売り渡すことを良しとするネット右翼。彼らを右翼と明確に規定して、まったくなんの間違いもありません。
 「つくる会」に会費を納めている正会員かどうかはともかく、彼らは杉並での「つくる会」歴史教科書採択に歓声を上げ、逆に全国での「つくる会」教科書の採択率の低さにへこんでいる、「つくる会」一派=「つくる会」教科書推進派であることは、まったく明らかです。
 彼らがこれまでの右翼と異なっているのは、組織や団体に属さず(あるいは属さないという装いをとりつつ)、インターネット上で形成されたゆるいネットワークを基礎にして呼びかけあい、なれ合い、蠢いているという点です。
 また従来の右翼が、「皇室を中心とした日本の伝統」的なものに規定されて演説し行動し、国粋主義・排外主義をアピールするのにたいし、ネット右翼はそうした見てくれや気取りや装いをあらかじめ放棄して、最初から中国・韓国・北朝鮮の人びと(在日を含む)にたいする嫌悪感・侮蔑・嘲笑(ちょうしょう)・差別・排外主義を最大の動機としているのも非常に特徴的です。
 しかし、まさに民族差別・民族排外主義こそが右翼やファシストの思想のもっとも本質的な中心部分です。ネット右翼は、最初からそのもっとも本音の部分をむき出しにして登場している現代版の右翼の一典型と言うことができるでしょう。

 

 2月末、「つくる会」が崩壊的危機に瀕していることが明るみに出ました。長い内紛のすえついに八木秀次会長の解任という事態にまで立ちいたっています。これは05年夏の教科書採択戦で大敗北をこうむったことを決定的原因としています。8月4日・12日杉並を頂点とする「つくる会」教科書採択反対の全国的闘いがきわめて大きな意味をもっていたことを今日あらためて明らかにするものにほかなりません。

(by深見 潔)

 

 資料@ このかんの不当逮捕――二つの事例(いずれも05年11月14日付『東京新聞』の「こちら特報部」より。やや要約修正しています)

 

 沖縄で平和祈念の僧侶が突然の公務執行妨害容疑で不当逮捕 

 

 10月29日、沖縄県の米軍嘉手納(かでな)基地第2ゲート前。午前7時半、ときおり小雨のぱらつく中、太鼓を手にした白装束の僧侶ら十数人が座り込みを始めた。僧侶らは「非暴力、不服従」のインドのガンジーに倣う日本山妙法寺の一行。同月沖縄各地を歩いてきた。年1回、ことしで19回目の「平和祈念行脚(あんぎゃ)」だ。基地前の1日行動も恒例だった。当日は土曜日。太鼓を打ち誦経(ずきょう)する一方、基地に出入りする米兵の家族らにビラを渡した。
 午前11時ごろ、沖縄署の2台のパトカーが来た。座り込みの場所を歩道に移し、一行の車両を移動するよう命じた。僧侶の1人、木津博允上人(69)が1台のパトカーに近づくと、車は急発進した。木津さんは倒れかけた。「危ない」。木津さんは停車したパトカーに詰め寄った。やがて同署の地域課長が現場に急行し、木津さんは公務執行妨害容疑で逮捕された。逮捕された際、木津さんは首を痛め、数日間断食。逮捕に抗議し、取り調べには黙秘している。
 沖縄平和市民連絡会の当山栄事務局長は「今回の事件は反基地運動全体への弾圧だ。これから本格化する米軍再編への反対闘争に対する牽制(けんせい)だろう」と語る。一方、日本山妙法寺の関係者は「国内で逮捕者が出たのは1973年に神奈川県の相模原で、ベトナム戦争に向かう米軍戦車の前で座り込んで以来。戦前の法難(弾圧)の時代に回帰しつつある」と懸念する。
 〔木津さんは、19日間も勾留されたあと、11月17日に不起訴で釈放された。〕

 

 マンションから米軍厚木基地を監視していて「住居侵入」で不当逮捕 

 

 10月15日に神奈川県大和市で、マンションの8階踊り場から米軍厚木基地を監視していた市職員3人(そのうち2人は第三次厚木爆音訴訟の原告団所属)が住居侵入容疑で逮捕された。5年以上にわたり月1回、踊り場から定点観測を続けてきた。当日は2日後に夜間離着陸訓練が始まるとの情報を得ての行動だった。3人は自宅などの家宅捜索後、逮捕の翌々日には処分保留で釈放されたが、このうちの1人はこう語る。
 「現場に着いて双眼鏡を出すや、制服警官がきた。『基地を監視している』と言うと不審なので身分を明かせと。1人が免許証を見せ、2人が拒むと逮捕だと告げられた。あわてて2人も免許証を見せたが『いること自体、違法だ』と取り合わない。その間、退去しろの一言もなかった」
 警察側は逮捕された1人に「住民から苦情があった」と説明したという。だが、管理組合長宅では取材に「そんな人たちが出入りしていたことは知らないし、住民の苦情も聞いていない。まして届け出たこともない」と話す。

 

 

 資料A このかんの主な不当弾圧・逮捕事件

 

 ▼反戦運動関係

◎2004年
・2月27日 立川の自衛隊官舎ビラ入れで3人を「住居侵入」で逮捕・起訴。12月、東京地裁八王子支部で無罪判決。05年12月、東京高裁で逆転有罪。被告・弁護団が上告中。
・3月3日 東京で社会保険庁職員が休日に自宅近くでビラ配布したことを「国家公務員法違反」として逮捕・起訴。
・11月2日 アパート契約にかんする「詐欺罪」で沖縄で1人を、関連で東京で2人を逮捕。
・12月3日 東京都立板橋高校の元教諭が「君が代」斉唱時の着席を呼びかけたことを「威力業務妨害」として在宅起訴。
・12月23日 東京都葛飾区のマンションで共産党の区議会報告を配布していた1人を「住居侵入」で逮捕・起訴。
◎2005年
・2月7日 福岡で免許証の住所にかんする「免状不実記載」で1人を令状逮捕。
・2月21日 東京都杉並区でペンネームで宅配便の手続きをしたことを「有印私文書偽造・同行使」として1人を令状逮捕。
・2月28日 東京・JR蒲田駅で「障害者」の介助を拒否した駅員に抗議した1人を「暴行」で逮捕。
・3月4日 東京で居室契約をめぐる「詐欺罪」共犯で1人を令状逮捕。
・3月4日 都立高校の卒業式での「日の丸・君が代」強制に抗議するビラまきで、町田の野津田高校前で2人、同8日、亀有の農産高校前で1人を「建造物侵入」で逮捕。
・5月31日 東京でアパート契約にかんする「詐欺罪」で2人を令状逮捕。
・6月23日 免許証更新時の住所にかんする「免状不実記載」で1人を令状逮捕。
・7月13日 静岡で住民票にかんする「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」で1人を令状逮捕。
・7月13日 東京都江戸川区役所でビラをまいていた2人を「公務執行妨害」で逮捕。
・8月4日 東京都杉並区役所前でネット右翼の執拗な無断ビデオ撮影に抗議した北島邦彦事務局長を「暴行」で逮捕。
・8月15日 靖国神社抗議行動で千鳥ケ淵で2人、九段北で4人を「公務執行妨害」で逮捕。
・10月7日 「免状不実記載・同行使」で福岡で4人、東京と三里塚で各1人の計6人を令状逮捕。関連で逮捕が相次ぐ。
・10月12日 東京都江戸川区役所前でビラをまいていた1人を「公務執行妨害」で逮捕。
・10月15日 米軍厚木基地に隣接するマンションで基地を監視していた市職員ら3人を「住居侵入」で逮捕。
・10月29日 沖縄市の米軍嘉手納基地前で基地撤去を求めて座り込んでいた日本山妙法寺の僧侶・木津博允上人を「公務執行妨害」で逮捕。
・11月8日 横浜で集会場申し込みで「有印私文書偽造・同行使」で1人を令状逮捕。
・11月10日 東京で住民登録にかんする「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」で3人を令状逮捕。
・12月20日 1人が早稲田大学文学部構内でビラをまいたところ教職員が「逮捕」、牛込警察署に引き渡す。
◎2006年
・ 1月15日 東京・山谷のデモで1人を「公務執行妨害」で逮捕。
・ 2月13日 広島でアパート契約にかんする「詐欺罪」で1人を令状逮捕。

 

▼労働運動関係

・2002年10月 国労組合員と支援の10人を「暴力行為等処罰に関する法律違反」で令状逮捕、8人起訴。同年の5・27国労臨時大会でのビラまき・説得活動にたいする弾圧。
・2005年1月13日 全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部の武建一委員長をはじめ執行委員4人を「強要未遂」「威力業務妨害」で逮捕、全員起訴。3月9日、武委員長など2人を再逮捕、役員2人を新たに逮捕。さらに12月には「政治資金規正法」違反で大阪門真市議の戸田ひさよし連帯労組近畿地本委員長を逮捕。同時に武委員長も再々逮捕。

 

 

 

 研究:ネット右翼と嫌韓流

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第3回 キリストの幕屋とは?

  

靖国神社で戦前、兵士は死を決意させられ、財閥のための戦争で殺し殺されていった。小泉首相は05年10月に姑息にも拝殿を避けながら参拝を強行した。

 

 1 「つくる会」「日本会議」を牛耳るカルト的・宗教的右翼団体

 前回、「つくる会」にしても、この「つくる会」ときわめて密接な関係にある全国的な改憲右翼組織「日本会議」(旧「日本を守る国民会議」)にしても、「実際の会員のかなりの部分が特定の諸団体の構成員によって占められてい(る)」と指摘しました。そして、その「特定の諸団体」とは「統一教会であり、生長の家であり、キリストの幕屋であり、さらに神道系の諸団体などで」あり、「これらはすべて、宗教の装いをとったカルト的右翼団体」と書きました。 
 事実、「日本会議」理事長で明治神宮崇敬会理事長の戸澤眞氏は勝共連合の元顧問ですし、上田埼玉県知事が県教育委員就任を要請した高橋史朗氏(明星大学教授 つくる会副会長)は、生長の家青年部=日本青年協議会の共同創設者で、統一教会のイデオローグです。高橋史朗氏は、「つくる会」と「日本会議」が共同で03年1月に「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)を結成する際に中心的役割を果たし、発足後は運営委員長をつとめました。また、生長の家青年部=日本青年協議会の現代表・服部守孝氏は「つくる会愛知」代表であり、「救う会」(「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」)の愛知代表でもあります。
 杉並区教育委員会において「つくる会」歴史教科書の採択に最も中心的な役割を果たした大蔵雄之助氏も、勝共連合=統一教会の新聞『世界日報』に主筆格で繰り返し執筆してきた経歴の持ち主です。
 このように、「つくる会」にしても「日本会議」にしても実際には、宗教の装いをとったカルト的右翼団体がそのかなりの実体を占めています。
 今回は、その中でも次第にその存在と影響力を拡大しつつあると言われる、キリストの幕屋についてもう少し詳しく見てみましょう。

 

 2 「『つくる会』が講演すると、その団体が動員される」 

 03年の1月26日に、東京の砂防会館において1200人を集めて、上でふれた「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)の設立集会が開かれました。これについて、日本の戦争責任資料センター事務局長の上杉聰(さとし)氏は、直後に発表した「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』」と題する論文の中で、次のように分析しています(以下、教科書情報資料センターのホームページより引用)。

〔高橋史朗氏らこの団体の役員に名を連ねている顔ぶれなどから、この集会が「つくる会」と密接にかかわりあっていることを指摘したうえで〕結論から述べるならば、私の確認し得たところによると、〔この集会の〕裏の事務局は「日本会議」が仕切り、役員の選定はすべて同会議の専従職員が交渉し、当日の聴衆には関東の宗教団体を組織動員したというのである。……
 26日の聴衆のうち女性は全体の約3割を占めていたが、その半数ないしそれ以上が、異様な髪形をした〔髪を長くして三つ編みにしそれを頭にまきつける〕女性たちであったことが複数の参加者から報告されている。彼女たちは日本会議の有力な構成団体であるキリストの幕屋と呼ばれる宗教団体のメンバーであることが、その容姿から確認できる。……
日本会議とは、すでに述べたように、1997年に「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」が合体して結成されたのだが、「国民会議」は、なんといっても右翼文化人を中心としつつ旧軍関係者とも共闘する組織であった。ところが「守る会」の方は、神社本庁・生長の家・仏所護念会・念法真教・モラロジーなど宗教・修養団体が中心となり、そこに曹洞宗管長・日蓮宗管長なども名前を連ねる宗教関係者中心の団体であった。
日本会議の結成は、文化人中心の「国民会議」(実際には右翼的政治団体もいた)が、献身的で巨大な財政力・組織力・動員力を持つ宗教団体連合の「守る会」と合体することにより、国民動員的な巨大組織を目指したものであった。…… 
 とくに「つくる会」の結成から一昨年〔01年〕の採択戦までは幅広く文化人が加わり、保守的市民層にある程度の支持を広げてきたが、小林よしのりが藤岡信勝に追われるようにして脱会したことなどにより、「つくる会」は現在、日本会議にいっそう頼らざるを得ない状況に陥っている。

 小林氏にしてみれば藤岡氏に「追われるようにして脱会した」かどうかは異論があるところかもしれません。それはともかく、かつては「つくる会」の宣伝係として大いに名をはせ、また「つくる会」歴史教科書執筆者の1人でもあった漫画家の小林よしのり氏は、キリストの幕屋について次のように語っています。
 以下は、みずから編集する雑誌『わしズム』vol.17(03年7月刊)からの引用です。

  「つくる会」の中に、ある宗教団体が入り込んでいます。入り込んでるという言い方は失礼かな。「つくる会」の人が運動を進める上で、ある宗教団体を入れたのですね。その宗教団体というのはユダヤ教が母体です。それがあの会を支持している。だから、「つくる会」がシンポジウムや講演を主催すると、その団体が動員されます。当初わしは、それは穏やかな団体だと思っていました。それでもわしは一度だけ、「つくる会」内部で問題にしたことがありました。「大丈夫なのか」と。
 そうしたら西尾幹二さん〔「つくる会」初代会長で現名誉会長、歴史教科書執筆者〕が「あそこは日本の国家を考えた団体だ」と説明しました。西尾さんがいうのだから大丈夫なのだろうとわしは思いました。…… 
 ところが、『つくる会』が内部に、その宗教団体を抱える矛盾が、そのシンポジウムで噴出しました。なぜか。その団体はユダヤ教が母体で、ユダヤ教といえばイスラエル支持です。イスラエルは当然アメリカが後ろに控えている。わしはアラブとイスラエルどちらの側にも立つ気もありません。非常に複雑な、根の深い問題がある。けれど、圧倒的にイスラエル支持の立場をとるその団体は、『つくる会』の内部でも、わしに対して猛烈な憎悪を持ってくってかかってきました。壇上で、わしが話しをしている間、延々と野次がやまない。野次を飛ばす男は、その宗教団体の人で、同時に「つくる会」の東京支部長でした。また会場の整理係もその団体の人たちがやっていて、みなが「反・小林」で一致し、わしの発言を妨害しました。

 3 キリストの幕屋――その教義と実践

 ・キリストの幕屋、正式団体名は「宗教法人 原始福音・キリストの幕屋」。
 ・1948年に、聖書研究会を開いていた手島郁郎(てしまいくろう 1910〜1973)氏が進駐軍に抵抗したため追われる身となり、阿蘇山に潜伏中、神の召命を受けて伝道を始めたとされている。1961年に宗教法人になる。現在の代表は手島千代子氏。支部は海外を含め約90カ所。
 ・聖典・教典:旧約聖書、新約聖書
 ・機関誌:『生命の光』(バス停などにつるされている)
 ・崇拝対象 唯一絶対神(ユダヤ教・キリスト教)およびイエス・キリスト

  ◆凶暴な超軍事国家イスラエルを崇拝

 教団名に「キリスト」の文字が入っていながら、本人たちはキリスト教の一派ではないと明言。また、既成のキリスト教派と違ってユダヤ民族の信仰であるユダヤ教にも重きをおいているところが一つの特徴。
 手島氏は、生前にはイスラエルのユダヤ教関係者とも親交をもち、信徒とともに「聖地巡礼」(ユダヤ教・キリスト教の聖地としてのエルサレムへの訪問)をおこなっています。幕屋では、キリスト教の原点となるユダヤ民族の歴史ばかりか現在のイスラエルの国家とその文化についても重視しており、「聖地巡礼」・「聖地留学」を大事な信仰活動の一部ととらえています。そのため、日本におけるイスラエル・ロビーとしての役割を果たしていると見られています。
(写真 イスラエル軍によるジェニンの大虐殺で完全に破壊されたパレスチナ人難民キャンプ【02年4月】)
キリストの幕屋の信者たちの「つくる会」運動への取り組みの異様なまでの熱心さは有名です。彼らは講演会やシンポジウムに全力で参加するのはもちろん、「つくる会」には家族全員が入会すると言われています。
 とくに副会長で歴史教科書執筆者の藤岡信勝氏とは密接なつながりをもち、講師として積極的に呼んでは全国で講演会をおこなってきました。
 また、01年の教科書採択を前にして、西尾幹二氏著の歴史教科書『国民の歴史』を信者が自腹で何十冊も購入し、議員や企業役員、あるいは近所の人などだれかれかまわず配ったり送りつけたりして、「つくる会」内部でも物議をかもしました。
(写真 キリストの幕屋がばらまいた西尾幹二著『国民の歴史』)
 2002年、愛媛県の中高一貫校に「つくる会」教科書を採択させる運動の際には、「直前に『つくる会』が全国から組織動員し、各戸ビラ入れをおこなったほか、松山市街にも200人近い集団を登場させ、宣伝活動をおこなった。大半はキリストの幕屋であると言われる」と先に引用した上杉論文は指摘しています。
 幕屋は、戦争動員施設=靖国神社への参拝にもきわめて積極的に取り組んでいます。彼らは「拝殿の前で最敬礼し、心からの感謝をご霊前に捧げる。グループで参拝する時は祈り、賛美歌を歌う」(大阪キリストの幕屋主事・神藤耀氏)そうです。そして、首相・閣僚の公式参拝の実現を強く要求しています。
 彼らは「古事記」「日本書紀」の神話を「日本建国の歴史」として信奉し、それを「イスラエルが旧約聖書を建国のよりどころにしている」ことになぞらえています。
ところで、聖書の世界から遠く隔たった現在のイスラエルは、アメリカが戦後直後、その中東支配・中東石油支配のために人工的に形成した半植民地国家であり、アメリカの強力な支援をバックにパレスチナ人にたいする虐殺と迫害を繰り返しているきわめて反人民的な超軍事国家です。そのようなアメリカの半植民地的軍事国家を崇拝しているところにも、幕屋のきわめて反動的本質がはっきりとあらわれています。

 ◆強烈な民族主義と反民主主義

 幕屋は彼らの信仰の根本をなす「我らの信条」の第一で次のように宣言しています。
「私たちは、日本の精神的荒廃を嘆き、大和魂の振起を願う」。普通のキリスト教関係とはちょっと結びつきにくい「信条」です。
 また、彼らが創始者・ 手島郁郎氏の言葉として掲げている文章の中に次のようなものがあります。以下、幕屋のホームページ内の「戦後教育の誤り」からの引用です。

 終戦直後のことですが、進駐軍の軍政官、その他が日本の学校教育を指導しました。そして、「日本が戦争を起こしたりするのは、戦前の教育が悪かったのだ。『末は博士か大臣、大将か』という考えが間違っている。民主主義の時代において、大事なことは、みんなが平凡で善良な市民になることである」。このような教育目標をかかげて徹底的に指導しました。……
しかし、このような誤った戦後の民主主義の教育というものが、今の全学連の騒ぎに発展していったのだ、と私は睨んでおります。民主主義教育というものは、立派な人間をつくりません。……私は聖書を深く読めば読むほど、民主主義というものには反対です。……
 神に聴いて政治が行なわれることが理想です。愚かな人間がただ寄り集まって、その多数決で決めてゆくような政治社会が良い社会だとは思えません。

 何らかの活動をしている人が特定の宗教の信者であることや、その宗教団体の活動が見た目風変わりなものであること、それ自体はなんら非難する理由にはあたりません。また、信仰の問題は心の問題として、その人の内心の自由です。
 しかし、キリストの幕屋は明らかに「宗教の装いをとった右翼団体」と呼ぶにふさわしい教義内容をもち、そればかりか他の反動的・右翼的諸団体とも連携して「つくる会」運動など政治的活動を組織的・積極的に実践しています。
 彼らはキリスト教的な言辞をあやつりながら、実際には強烈な民族主義的・反民主主義的主張を叫び、「法の下での平等」や「教育の機会均等」といった戦後民主主義的価値観への憎悪をかき立てつつ反動的政治活動をおこなう、宗教の形態をとった極右ファシスト集団にほかなりません。

 ◆「つくる会」運動の構造

 八木秀次氏や藤岡信勝氏、そして西尾幹二氏を代表人格とする「つくる会」は、これまで見てきたように、実際にはキリストの幕屋や統一教会、そして生長の家など宗教の形態をとった極右ファシスト集団を実働部隊として展開されています。
 そして重要なことは、この運動が、いまや小泉首相や奥田日本経団連会長など日本の帝国主義(独占的な大企業・大銀行とその政治的代表者による支配体制)の中枢によって全面的にバックアップされているということです。
 「つくる会」運動の内実と全体像はだいたい以上のようなものです。そして、その中にネット右翼も独自の位置と役割をもって登場してきました。次回はいよいよ、この問題について考えてみましょう。

(by深見 潔)

 

 研究:ネット右翼と嫌韓流

(投稿)  

第2回 「つくる会」の本質は右翼ファシスト

「扶桑社 新しい歴史教科書 支持」を手に持つ前夜から動員された「つくる会」派支持者(05年8月12日、杉並区役所前)  

 

 1 新たな装いをとって登場した右翼=「つくる会」

 前回、「『つくる会』教科書の採択か否かのかかった8月12日の杉並区教育委員会の当日、『つくる会』教科書賛成派右翼の人たちが大量に動員されました」と書きました。そして、「彼ら『本隊』とはちょっと違った動きをしていた『別働隊』がいた……それが『ネット右翼』」などと書きました。
 今回は、「研究:ネット右翼と嫌韓流」という本来のテーマからは少しはずれてしまうかもしれませんが、ものごとの全体像を知るために、この「本隊」の人々がどういう連中だったのかについて述べておかなければならないと思います。つまり、「つくる会」派の本隊はどのような組織・人々で構成されているのかということです。

 ◆「つくる会」と街宣右翼はどう違う?

 私たちは「右翼」という言葉を聞くと普通、黒い宣伝カーで「君が代」を大音量で流しながら戦闘服を着てがなり立てている人たちを思い浮かべます。「つくる会」の面々は「自分たちはそういうのとは違うのだ」と言いたげですが、実際にはその主張の内容は大差なく、「つくる会」は右翼そのものです。
 彼らは自分たちのつくった歴史教科書を「バランスがとれている」などと表現しますが、彼らの「バランス感覚」はお世辞にも明治以来の日本の侵略戦争・植民地支配のあやまちを少しでも反省するようなものではありません。
 彼らの戦争への「反省」はつまるところ、「やり方がまずかった。もっとうまくやれば勝てた」というもので、そうした恨みつらみを教科書の記述ににじませることによって、「日本の歴史のよくないことも書いてある」「バランスがとれている」などと自画自賛しているわけです。まさにこれは右翼の主張そのものです。
 ただ、「つくる会」にはこれまでの右翼と違うところがたしかにあります。それは――
 第一に、「つくる会」が、反戦運動や労働組合運動、市民運動など労働者民衆の大衆運動にたいして右翼大衆運動を組織して対抗しようとする点です。8月12日がそのいい例です。
 第二に、これまでの復古的な色彩の強い右翼とは違ってなにかしら「新しさ」とか「改革」とか現状変革的なイメージを売り物にしようとする点です。
 第三に、労働運動の組織的壊滅ということを明確な目的意識としてもっている点です。
 このような特徴をもつ右翼を、とくにファシストと言います。ファシストの典型は、第1次・第2次大戦間に登場したイタリアのファシスト・ムッソリーニ、ドイツのナチス・ヒトラーなどです。また、日本の北一輝とその影響を受けて1936年2・26事件を引き起こした青年将校たちもそうした人々でした。

 ◆ファシスト・右翼には共通の特徴がある

 こうしたファシストや右翼一般(街宣右翼にせよネット右翼にせよ)には共通の特徴があります。それは、<国家主義・国粋主義・民族主義を強く主張し、他国・他民族にたいする差別・蔑視・排外主義をあおり、それにもとづいて自国のおこなう(おこなった)戦争や植民地支配を賛美・称揚する>ということです。
(写真 並んで閲兵するヒトラーとムッソリーニ【1937年9月 ベルリン】) 
 ここで言う「国家主義」「国粋主義」というのは、たんに「日本が好きだ」などと言うにとどまらず、国家(あるいはその「象徴」とされている天皇)を至上のものとし、国家の利益のために諸個人が奉仕し犠牲となることを良しとし、諸個人が国家にたいし権利を主張したり異議申し立てすることを非難し攻撃する考え方です。
 今、日本の国家=帝国主義(独占的な大企業・大銀行とその政治的代表者による支配体制)は、きわめて深刻な危機に見舞われています。そして、それを「打開」するために、日本を再び戦前のような戦争国家へと転換しようとしています。ファシストや右翼は、上のような言動によってそうした動向の牽引(けんいん)車ないし手先として登場しているのです。このことも、かれらの重要な特徴の一つと言うことができます。

 2 「つくる会」を実際に支えている諸団体

  「つくる会」は、八木秀次氏(高崎経済大学地域政策学部助教授 「つくる会」公民教科書の執筆者)を会長(第3代会長)とし、藤岡信勝氏(拓殖大学日本文化研究所教授 「つくる会」歴史教科書執筆者 元共産党員の転向右翼)らを副会長とし、西尾幹二氏(電気通信大学名誉教授 「つくる会」歴史教科書執筆者 「つくる会」初代会長)を名誉会長としています。
(写真 記者会見する八木秀次氏と藤岡信勝氏。 都合の悪い質問をはぐらかし、得手勝手な歴史観を吹聴しつづける「つくる会」の代表たち) 
 この藤岡信勝氏は、杉並で歴史・公民の教科書採択がおこなわれた8月12日、数百人の「つくる会」派の先頭で杉並区役所前に登場し、あろうことか「教科書執筆者は採択過程にかかわってはならない」という法令を公然と破って教育委員会の傍聴にまで乗り込み、教育委員会に圧力を加えてみずからの「歴史教科書」を採択させたきわめて悪辣(あくらつ)な人物です。
  また八木秀次氏は、みずからが執筆し「つくる会」が編集して05年3月に産経新聞社が刊行した『国民の思想』という本の中で「民営化とは精神革命であり左翼の一掃である」と述べています。これは、「つくる会」教科書と現在の民営化(=労組破壊)攻撃が二つにして一つの攻撃であることを、彼らの側からはっきりと表明したものにほかなりません。
  この「つくる会」ときわめて密接な関係にあるのが、旧来からの全国的な改憲右翼組織である「日本会議」(旧「日本を守る国民会議」)です。日本会議の会長は元最高裁判所長官の三好達氏、同副会長は東京大学名誉教授の小堀桂一郎氏と神社本庁総長の工藤伊豆氏、同理事長は明治神宮権宮司の田中安比呂氏、日本会議国会議員懇談会会長は自民党の麻生太郎氏、同国会議員懇談会会長代行は自民党の中川昭一氏です。

  ◆宗教の装いをとったカルト的右翼団体が中心

 このように、「つくる会」にしても「日本会議」にしても代表は著名人を立てていますが、実際の会員のかなりの部分が特定の諸団体の構成員によって占められています。それは、統一教会(世界基督教統一神霊協会)であり、生長の家であり、キリストの幕屋であり、さらに神道系の諸団体などです。これらはすべて、宗教の装いをとったカルト的右翼団体です。
 統一教会(原理研、勝共連合)は霊感商法で大問題になったことで有名です。また生長の家は、80年代初頭に右翼学生運動「反憲学連」を組織したことで知られている天皇制右翼です。その点、キリストの幕屋という団体については、あまりなじみのない人も少なくないのではないでしょうか。このキリストの幕屋は今、「つくる会」のなかでも次第に実体と影響力を拡大しつつあると言われています。
 ともあれ、こうした宗教の装いをとったカルト的右翼団体が「愛国度」を競い合って推進しているのが、「つくる会」運動の実態と言ってけっして過言ではありません。8月12日、杉並区役所前には「つくる会」派が数百人の規模で押しかけ、山田区長・納冨教育長の応援団としてふるまったわけですが、それらの動員のかなりの部分は、じつはこうしたカルト的宗教団体の組織動員によるものだったのです。

(by深見 潔)

 

 研究:ネット右翼と嫌韓流

(投稿)  

第1回 「つくる会」教科書反対運動の妨害にあらわれたネット右翼

 

 1 「つくる会」派の大量動員と対決して闘われた8・12

「つくる会」教科書の採択に直ちに撤回の闘いが呼びかけられた(8月12日昼すぎ 杉並区役所前にて)  

 「つくる会」教科書の採択か否かのかかった8月12日の杉並区教育委員会の当日、「つくる会」教科書賛成派右翼の人たちが大量に動員されました。その数は数百人という規模です。彼らは、徹夜で区役所前を占拠し、あわよくば教育委員会傍聴券の独占を狙いました。8月12日の闘いは、杉並・親の会や教育労働者・保護者、多くの労働者民衆が、このような右翼の大量動員・威圧行動に一歩もひるまず逆に区役所前集会で彼らを圧倒して、闘いぬかれたのでした。
 そして、このような杉並を天王山とする闘いは、杉並で「つくる会」歴史教科書の採択を許したものの(公民は阻止)、「東京で50%、全国で10%」の採択を狙っていた「つくる会」派の目算を大破産に追い込むという大きな成果をあげました。「つくる会」教科書の採択率は、全国レベルで「歴史で0.4%、公民で0.2%」。やはり、懸命に闘った甲斐があったのです。杉並では、採択された歴史教科書の撤回に向けて、すでに闘いが力強く開始されています。

 

 2 「ネット右翼」って何?

 さて、あの現場に居あわせた方は、「つくる会」派の「扶桑社賛成!」という異様なコールや、臆面もなく侵略戦争の歴史を正当化し居直る演説をけっして忘れることはできないと思います。あのような現場を体験することをとおして、「つくる会」教科書のおぞましさや危険性、その本質をますます実感されたことと思います。
 ところで皆さんは、彼ら「本隊」とはちょっと違った動きをしていた「別働隊」がいたことに気づかれたでしょうか。そう、「つくる会」教科書採択反対のたたかいを中傷するボードをもってうろつき回ったり、駄菓子や冷やし中華の食べ歩きをしたり、「つくる会」教科書反対派の人たちにからんだり因縁をつけたり、あるいは勝手に写真を撮ったりしていた20代から30代の比較的若い男性たち、あの連中です。彼らの服装や人相風体はおしなべてだらしなく、およそ「愛国者」らしからぬもので(笑)、だれもがいぶかしく感じたと思います。
 結論から言うと、彼らは「ネット右翼」と呼ばれている連中です。ネットとはインターネットのこと。今インターネット世界にはこの都革新のホームページを含めて無数のサイトが開かれ存在していますが、その中で「2ちゃんねる」という「掲示板」を利用する者を中心として、「つくる会」や「チャンネル桜」がつね日ごろ宣伝しているような、侵略戦争美化、憲法改悪や自衛隊海外派兵に大賛成の主張を鵜のみにし共感している者が増えているのです。

 

「つくる会」教科書採択反対のたたかいに敵対して登場したネット右翼(05年8月4日 杉並区役所前) 

 

 3 現代版の新たな右翼勢力

 彼らは日ごろ、反戦平和を訴える市民運動や中国や韓国の「反日」の闘いに対する不満やいらだちを覚え、陰湿で右翼的で差別排外主義的な心情をむき出しにした主張を、自分のパソコンから「2ちゃんねる」などの「掲示板」や自分の「日記」に書き込んでいるのです。
 そうした、日ごろはネットという仮想現実の世界でなれ合い群れつどっていた連中が、この日ばかりは「つくる会」教科書を杉並区で通すために、そして反対運動を妨害するために、呼びかけ合って杉並に集結し、現実世界に集団でその姿を現したのです。彼ら「ネット右翼」の見た目がいかにけったいであったとしても、見すごすわけにはいきません。というのも、彼らも現代版のれっきとした右翼の一勢力なのですから。

(by 深見 潔)

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