ニュース特報

2010年04月28日号

【陸山会事件】
毎日新聞、「<検察審査会>経験者2議決評価…政治とカネ、うやむやだめ」と報道、本誌編集長「良い記事だと評価する」とコメント


●毎日新聞配信記事
 毎日新聞は28日、「<検察審査会>経験者2議決評価…政治とカネ、うやむやだめ」という見出しで次の記事を配信した。
 小沢一郎民主党幹事長の政治資金規正法違反事件で、「市民目線からは許し難い」として小沢氏を起訴すべきだと27日に議決した検察審査会。その前日にも、鳩山由紀夫首相の不起訴処分を「妥当」としたが、首相の説明に疑問を投げかけるなど、注目を集めている。審査員を経験した市民からは二つの議決を評価する声があがった。【大場弘行】

 「小沢氏と秘書は『親分と子分の関係』。うやむやにさせず、裁判でちゃんと真実を知りたかった」

 数年前に首都圏で検察審査会の審査員を務めた男性会社員(44)は、小沢氏の事件の審査結果を気に掛けていた。

 審査員に選ばれた当初は、聞き慣れない法律用語に戸惑いを覚えた。初めて読む資料に苦戦しながら、克明な事件の内容に引き込まれた。被害者、加害者双方が自分の家族の姿と重なったこともあった。「起訴されれば被害者は報われるが、加害者の人生は大きく狂う」。議決前には、重圧を感じたという。

 男に睡眠薬を飲まされ意識を失っている間に暴行されたと女性が申し立てた事件では、検察官の考えと庶民感覚の違いを思い知らされた。検察は「飲み物や尿から薬の成分が検出されていない」として不起訴にしたが、男は同じ手口を繰り返していた疑いがあった。

 全審査員に発言の機会が与えられ、担当検事にも説明を求めた。審査3回目で「不起訴不当」を議決した後、男は再び不起訴となったが、別の事件で裁判にかけられたという。

 「司法の本当の役割は真実を明らかにすること。有罪、無罪を決めるのは検察じゃない」。その思いから、鳩山首相の議決で、政治家の刑事責任を問いづらい政治資金規正法の改正に踏み込んだ点を「庶民感覚で社会を変えるきっかけ作りができる審査会の役割を果たした」と評価する。

 審査員経験のある団体職員の男性(44)は、小沢氏への起訴相当議決が全会一致だったことに「聞いたことがない」と驚きを隠さない。議決文で小沢氏を「絶対権力者」と表現した点を「検事が法的に解釈した小沢氏と秘書との関係が、よほど市民感覚とかけ離れていたのだろう」とみる。

 自身の体験から「1人の判断だと、主義、思想によって偏りが出るかもしれないが、11人で議論すれば庶民感覚が生かされると思った」と振り返った。感情論に左右されるとの批判もあるが、男性は「審査会なら起訴されるべきだった事件が闇に葬り去られることを防げる」と審査会の意義を考えている。

 【ことば】検察審査員 選挙人名簿から無作為のくじで選ばれ、11人で審査を担当する。不起訴処分の当否を市民感覚で判断するという制度の趣旨から、弁護士など法曹関係者は除外される。欠員が生じた時のために補充員も選ばれる。任期は半年で、旅費や日当が出るが、審査内容については守秘義務も課されている。毎年約7300人が選出されている。

 ◇09年審査申立件数、前年の1.3倍

 検察審査会への、09年の審査申立件数は08年の1.3倍になったことが最高裁のまとめで分かった。09年5月に権限を強化する改正検察審査会法が施行され、「起訴相当」を2回議決すれば対象者が強制的に起訴されるようになったことが背景にあるとみられる。

 最高裁によると、09年の審査申立件数は2613件で、前年の2006件を上回った。過去5年間では05年の2609件から減少していたが、増加に転じた。

 09年の起訴相当議決は11件で不起訴不当議決は113件。起訴相当や不起訴不当とされた事件に対し、検察が判断を示したのは140件で、一転して起訴されたのは36件だった。起訴相当議決は、05年5件、06年15件、07年9件、08年13件で推移している。【北村和巳】

●本誌編集長のコメント
「良い記事だと思う。1人でも多くの人に読んでもらいたいと思い、取り上げた。東京地検特捜部は真摯にこの記事を受け止めるべきである。検察官と庶民感覚と違う事例は経済事件にも少なくない。検察は公訴機関であって裁判所ではない。われわれは、80%有罪でも20%無罪だと思えば起訴しない、という捉え方は犯罪のプロを喜ばせるコメント、木の葉を沈めて石を浮かせる考え方である。」

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