人民元の現預金、米を1兆ドル上回る “危ういバブル”膨張
中国の「人民元バブル」が世界を揺るがしている。東京の銀座や秋葉原でブランド品、家電製品を買う中国人観光客の多さが象徴するように、中国の個人や企業などの保有する現預金の合計額(M2、ドル換算)が、米国のM2を約1兆ドル(約94兆円)上回ったことが2日、各種統計から明らかになった。昨年末、中国のM2は米国を追い抜いているが、超金融緩和と「熱銭」と呼ばれる投機資金の流入が“危ういバブル”を膨らませている。(編集委員 田村秀男)
◆リーマン後に急上昇
2007年まで前年同期比でひとけた台の伸びにとどまった中国のM2だが、08年9月の米国発の金融危機「リーマン・ショック」後、急上昇した。金融危機への対応策として米国が供給したドルを買い上げるため、中国が人民元の大量発行に踏み切ったことなどが主な原因だ。
だぶついた人民元が国内の不動産や株式投資に振り向けられた結果、中国の株式市場は世界でもっとも早く「リーマン・ショック」から立ち直った。株価上昇を見込んで、国有企業も海外拠点から不動産や株式市場に「熱銭」を投入し、過熱する中国経済をさらにあおっている。
1980年代後半、バブル真っ盛りの日本の金融機関の不動産関連融資は年間平均で10兆〜11兆円。中国の金融機関の不動産関連融資は日本と同水準といわれ、これに年間二十数兆円の熱銭が上乗せされている。
バブルがピークを迎えた90年の日本のM2は国内総生産(GDP)の1・13倍だったが、中国は1・9倍にのぼるなど日本をしのぐスケールになっている。
◆切り上げ不可避
日本のバブルが90年代はじめに崩壊したように、中国のバブルにも終わりがくる。まるで大きな洪水のような「人民元の氾濫(はんらん)」(市場関係者)だけに、懸念されるのは破裂したさいの影響だ。
上海株式市場が暴落すれば新興国の株価下落を誘発し、世界経済を直撃するのは避けられそうにない。バブルを下支えする株式と不動産の「両輪」のどちらかの急落も、日米欧など各国の市場を揺るがす。
こうしたリスクを避けるには中国が人民元マネーの拡張を抑え、株式や不動産の市場を冷やすしかない。利上げの検討に入ったとされる中国だが、金利引き上げには熱銭をさらに誘い込む危険性も伴う。
最後の決め手は、人民元の大幅切り上げとドルに対する変動相場制への移行しかない。上海万博に浮かれず、人民元バブルの災厄に備える必要がある。
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