完全アウェー、鳩山首相訪問で沖縄厳戒

　南の島が厳戒ムードに包み込まれる。米軍普天間飛行場移設問題で「５月末決着」を明言しながら迷走する鳩山由紀夫首相（６３）は４日、説明行脚のため沖縄県を訪問。県内では３日、警備態勢などの最終確認が行われた。県内移設に反対する住民らが、首相の視察先に押しかけることに備え、県警や自治体は１０００人規模で警戒。一部反対派は政府が移設先とするキャンプ・シュワブ沖からの海上抗議も検討するなど混乱が予想される。地元では早くも首相への厳しい空気が漂い始めた。

　３日午後、視察先の１つの米軍普天間飛行場（宜野湾市）そばにある施設では、鳩山首相と住民の対話集会の準備が進んでいた。首相は集会で、基地移設に関する経緯を説明、住民の意見を聞く予定。０９年の衆院選前に「最低でも県外」としていたのが、ここにきてキャンプ・シュワブ沿岸部に移設する現行案を修正する形の県内移設が現実味を帯びてきた。首相の迷走に、住民の抗議が予想される。

　少しでも混乱を回避するため、市の関係者は「プラカードや看板を持った方は入れないようにしたい」と話した。入り口では、警察や市側が厳しくチェックする予定という。沖縄県警はこの施設を含め、鳩山首相の到着から出発まで、８００人態勢で警戒に当たる見通し。各自治体の警備態勢を合わせれば１０００人規模に達するとみられ、まさに厳戒態勢が敷かれる。

　それに加え大型連休中で、沖縄県内には観光客や車があふれている。首相の車列が移動する際にも厳しい交通規制が敷かれそうだ。観光客からも「なぜ、混雑する連休に来るのか」との指摘があった。「はい、いらっしゃいという気にはどうしてもなれない」（那覇市の女性）と、このタイミングでの訪問自体にも冷ややかな声が多い。

　反対派の反発は強い。名護市辺野古地区の道路には、「鳩山首相の選挙公約『最低でも県外移設』を守ってください」の看板が立っていた。近くにはキャンプ・シュワブがある。地元で反対運動を行う男性は「民主党が政権を投げ出す覚悟があっても、移設には反対。できないことを決めても仕方ない。バカじゃないのか」と話した。鳩山首相はキャンプを視察予定だが、海上の船からの抗議活動も検討されているという。

　仲井真知事や稲嶺進名護市長らとの会談でも、理解を得られる見通しは立っていない鳩山首相。就任後初の沖縄訪問は、完全アウェーの厳しい雰囲気を味わうことになりそうだ。【中山知子】

　［2010年5月4日9時31分　紙面から］