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きょうの社説 2010年5月4日
◎外国人宿泊者激減 台湾、韓国に積極的仕掛けを
予想通りではあるものの、石川県が先ごろまとめた2009年の同県内の外国人宿泊者
数は、前年を大幅に割り込んだ。一足早く明らかになった富山県の実績も似たようなものである。ここ数年、順調に推移していた台湾や韓国の宿泊者が、新型インフルエンザや世界同時不況などの影響で激減したのがもろに響いた格好だ。それでも、台湾と韓国の宿泊者は、依然として全体の半数を占めており、石川県の海外 誘客10倍構想、富山県の観光振興戦略プランに掲げる海外誘客の数値目標を実現するためには、欧州や中国など新たな市場の開拓を視野に入れながらも、台湾、韓国重視の姿勢は堅持する必要があろう。幸い、台湾、韓国の経済は既に好転し、訪日旅行需要の落ち込みも底を打ったとされる。石川、富山県でもその兆しが見えており、今年はより積極的な仕掛けで宿泊者数の「V字回復」を果たし、目標達成に向けて弾みを付けたい。 石川県の場合、台湾について言えば、昨年は台湾の水利事業に尽力した金沢市出身の八 田與一技師を主人公とするアニメ映画「パッテンライ!!」が上映されたことなどもあって、宿泊者数こそ減ったとはいえ、きずなはむしろ深まった感がある。今年は、そうした特別な関係も生かしながら、サイクリングツアーなどニーズに合った旅行プランをきめ細かく提案していく必要があるだろう。 富山県は、連休明けに台湾の百貨店で観光・物産展を開く予定であり、石井隆一知事も それに合わせて訪台し、トップセールスを繰り広げる。看板観光地である立山黒部アルペンルートの人気はまだ高いのだから、自信を持って、切れ目のない発信に努め、新規客だけでなく、リピーターの掘り起こしにもつなげたい。 韓国に関しては、昨年大ヒットしたドラマの影響でロケ地の東北を訪れる観光客が急増 し、「逆韓流ブーム」の様相を呈しているという。国内にはソウルと直航便で結ばれている空港が多く、地域間の誘客競争は激しいが、石川、富山県も負けずに新たな手を打ってもらいたい。
◎みどりの日 トキ再来で郷土の変遷知る
いしかわ動物園(能美市)でトキのひなが相次ぎ誕生し、放鳥されたトキが石川、富山
両県の各地に飛来したことで、40年前に石川から姿を消したトキへの関心が大きく高まった。静かに見守ろうという呼び掛けとともにエサの養殖や、すみやすい環境づくりの動きも広がっている。きょうの「みどりの日」は自然に親しみ、その恩恵に感謝する日である。トキの再来を郷土の自然や環境の変遷を考える契機としたい。「トキ効果」もあって、いしかわ動物園の来園者は増加しており、「展示・映像コーナ ー」では、ひなの映像が一般公開されている。親子連れらの多くの見学者が解説を聞きながらトキの生態を興味深く見つめており、トキは生物や自然の保全などについて理解を深める環境教育の格好の素材といえる。同園は飼育繁殖技術の蓄積を重ねながら、多くの人に成長するトキの様子がより伝わるよう工夫してもらいたい。 動物園以外でも、トキをめぐるさまざまな取り組みがみられる。津幡高校ではドジョウ の養殖や野鳥の餌場となるビオトープ造成などを進め、トキがとどまっていた黒部市ではボランティアモニターらが見学者のマナー啓発などを行っている。各地にトキが飛来したことで、トキのすみよい環境を考え、自分たちが住む地の今昔を思い浮かべた人も多かっただろう。トキを見守ることを含めて、ふるさとの自然の保全につながる取り組みが広がることを期待する。 トキが姿を消した原因には、乱獲や生息地の山林の伐採、農薬による餌の減少などがあ ったとされる。現在も多くの野生生物が絶滅の危機に直面している一方で、生育環境の変化などからイノシシやサルなどによる農作物被害が大きくなっている。外来種の侵入による生態系への影響も懸念されるなど、自分たちが暮らす環境は、身近に多くの問題を抱えている。 今年は「国際生物多様性年」であり、12月に締めくくりの会議が金沢市で開かれる。 トキをはじめ多くの生物をはぐくみ、数々の恵みを人々に与えてきた北陸の里山里海にあらためて目を向けたい。
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