きょうのコラム「時鐘」 2010年5月4日

 「みどりの日」は3年前に、先月29日から引っ越してきた。3連休にするために動かされたお手軽な祝日みたいだが、言葉の響きは美しい

植物を愛された昭和天皇にちなんで命名されたと記憶する。白も赤も青もなくて「みどりの日」だけだが、えこひいきという文句も聞かない。安らぎや癒やしを与えてくれる名前である

「みどり」は、目に優しい色を指すだけではない。緑のそよ風が心地よい季節だが、そんな色の風が吹くわけではない。美人を褒める文句の一つに「緑の黒髪」がある。赤ちゃんを「みどりご」と呼んで慈しむ。「みどり」は、みずみずしさや命の輝きをも表現する

そんな「みどり」の輝きが毎日あればいいのだが、怒りで真っ赤になる日もある。恐ろしい目に遭えば青ざめる。心がふさがって、お先真っ暗な日もある。カメレオンみたいに、心の色も激しく変わる

3年前の祝日引っ越しで、今月は「みどりの月間」。諸事多難な折、怒りの赤や失望の黒い日が薄れそうな気配はない。だからなおのこと、みずみずしい「みどり」、安らぎの「みどり」の気持ちを大切にしたいと思う。