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電子書籍:「元年」出版界に危機感 東京電機大出版局長・植村八潮さんに聞く

 電子書籍に詳しい東京電機大出版局の植村八潮局長に、今後の出版界で予想される変化、展望を聞いた。

 ◇日本型流通モデル、開発を

 --いま出版界が直面している問題は。

 ◆電子書籍を含めてコンテンツビジネスは、端末生産から販売サービスまでを一企業が提供する、アマゾンやアップル、グーグルなど「プラットフォーマー(基本的な仕組みを提供する企業)」の時代になるといわれている。その流れは止められないにしても、すべて米国企業でいいのか。音楽業界のようにほぼ一手に握られることになれば、間違いなく日本の出版活動は続かなくなり、書店や流通の問題というより、日本の国策、出版文化として不幸だと思う。

 --対応策は?

 ◆米国でプラットフォーマーに対抗できるのは、複数のメディアを傘下に収める巨大企業だけ。出版社4000社、書店数1万6000もある日本の出版業界が、このままで対抗できるわけがない。日本の特性を生かした、しかも多業種が参入できる日本型流通モデルを開発していかなければならない。

 --たとえば、キンドルに日本語版が出たら、私たちの読書は変わるだろうか。

 ◆日米では、読書習慣や出版文化が明確に違う。しかもそれは急には変わらない。米国人にとって「読書は消費」だといわれており、バカンスに本を4~5冊持って行き読み終わったら捨てて帰る人が多いという。日本人は紙質や装丁にこだわり、読み終えても取っておく人が多い。米国で成功したから日本でもというのは、分析が足りないと思う。

 --日本で5月末、iPadも発売だが。

 ◆iPadは電子書籍端末ではなく、電子書籍も読める新しい多機能端末。キンドルは戦略的に紙の本の置き換えを狙っていて、正確にいえば「電子文芸書端末」だ。例えば、若者にとって携帯電話が会話する機械ではなく、メールをしたり、音楽を聴いたり、ゲームをするマルチメディア端末の「ケータイ」になっている。iPadはそんな新しいメディアとしての可能性が高い。ただ、熱狂的なアップルファンは買うだろうけれど、広く日本人に支持されるかは分からない。

毎日新聞 2010年5月3日 東京朝刊

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