●産経新聞解説記事 産経新聞は29日、
《小沢氏「起訴相当」大きな“壁” 聴取に時間、新証拠も難しく》という見出しの記事を配信した。
民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、検察審査会(検審)が小沢氏に「起訴相当」の議決を出したことから、今後の焦点は東京地検特捜部による再捜査に移った。ただ、新たな証拠収集には高い壁が立ちはだかる。再捜査は難航も予想される。
検審は27日、小沢氏と衆院議員の石川知裕(ともひろ)被告(36)ら元秘書3人との共謀を認定することが可能と判断、「起訴相当」と議決した。議決には11人中8人以上が必要で、過半数でよい「不起訴不当」よりも重い。いずれも検察が処分を再検討し原則3カ月以内に結論を出すが、起訴相当の場合にだけ2度の議決が出れば強制起訴されるという決定的な違いがある。
「再捜査で何をやるかの検討に1カ月はかかるだろう」。ある検察幹部はこう話す。
小沢氏や石川被告らを任意で再聴取するとしても、調整に時間がかかるとみられるからだ。石川被告ら起訴された元秘書らが公判への影響を理由に再聴取を拒否することも考えられる。仮に聴取できても任意では新たな供述が得られる可能性は低いとの見方もある。
特捜部は、平成16年の日本歯科医師連盟をめぐる事件に絡み、検審が「起訴相当」と議決した山崎拓元自民党副総裁や「不起訴不当」とした橋本龍太郎元首相を、議決後に再聴取したが、新事実は判明せず、再び不起訴とした。
別の幹部は「まずはこれまでの証拠を改めて検討し、共謀を認定できるか判断していく」と話しており、現状の証拠で処分が覆るかどうかが注目される。最高裁によると、昭和24年の検察審査会法施行以来、起訴相当、不起訴不当の議決は計1万7088件。一転起訴としたのは1444件で8・5%にすぎない。
特捜部は昨年6月、西松建設の違法献金事件で起訴相当の議決が出た西松元社長を一転起訴したが、これは元社長が別の事件で既に起訴されていたため「余罪」をあえて起訴しなかったという起訴猶予処分を見直しただけだった。
とはいえ、数々の捜査記録などを「国民目線」で審査員らが精査し、全員一致で「起訴相当」とした現実は重い。
議決は現段階でも、明石歩道橋事故の過失事件と同様に「公開の場(法廷)で真実と責任の所在を明らかにすべきだ」としている。検察の処分が再び同じ結果となったとしても、検審の再審査で再び起訴相当の議決が出る可能性はある。
●私の検察に対する期待 今の日本は、小沢氏をチェックできるのは「参院選における国民の民主党不支持という意志表示」と「検察」しか、ないという異常現象を起こしている。こんなに1人の人物に権力が集中した時代はなかった。
私は法律専門家集団である東京地検特捜部に対し、法律論をやろうとする気はない。ただ、事実認定に関し、意見を述べたいだけである。
私は検察審査会の議決をわが意を得た思いで高く評価している。
そもそも、この小沢氏の事案は「解散時の財産の帰属先の決まりのない政治資金管理団体・陸山会が巨額な資金を出し、土地を購入したことが原点」、そこから元秘書3人らよる政治資金規正法違反事件が生まれた。
つまり、小沢氏が資金を出し、小沢氏が土地を購入したと同じことなのだが、小沢氏を石川被告らの共犯に問えるか、どうかは証拠の有無が問題。
小沢氏は石川被告らに具体的には何の指示もしていない、と思う。検察は「共謀には共犯者の行為を通じて自らの犯罪をする意思が必要。有罪を得るだけの証拠が足りなかった」と捉えた。その通りであると私も思う。
しかし、証拠が足りないよう仕組んでいたのである。
石川被告らは、大物議員秘書特有の論理に基づき小沢氏の安泰を図るとともに、大物議員秘書としての自己の地位向上、安定した人生を望んで本件犯行に関与したものである。小沢氏も石川被告らの思いを概括的とはいえ確定的に認識していたと推理できる。
小沢氏は石川被告らに対し圧倒的に優位な支配的立場にあり、石川被告らはその強い影響力の下に本件犯行に至ったものだ。それが分かっているから検察審査会は全員一致で「起訴相当」の議決をしたのだ。
石川被告らは大物議員、といっても、今の政界には小沢氏しかいないが、大物議員秘書の行動原理によって検察の取り調べに応じたと思う。その結果、「小沢氏からの積極的指示、了承した細かい場面の供述をしなかった」と私は見る。大物議員秘書としての自己の地位向上、安定した人生という望みが崩壊してしまうからだ。
土地を購入したのは陸山会であっても、名義は小沢氏、解散時の帰属先の決まりもない。小沢氏は個人資産が増えるという直接的利益も得ている。
証拠がないと言われるが、小沢氏と石川被告ら実行行為者間に、前述のような関係にある場合、具体的謀議行為が認められないとしても、犯罪を共同して遂行することについての合意が認められ、一部の者において実行行為が行われたときは、実行行為に直接関与しなかった小沢氏のような事例についても、他人の行為を自己の手段として犯罪を行ったものとして、正犯意志が認められる場合には、共謀共同正犯が成立するというべきである、という意見もある。
検察審査会は直接証拠と状況証拠から、「被疑者は、いずれの年の収支報告書についても、その提出前に確認することなく、担当者において収入も支出も全て真実ありのまま記載していると信じて、了承していた旨の供述をしているが、きわめて不合理、不自然で信用できない。」としているのは当然である。
証拠はなくても、判例評価の問題なのである。ある者は共謀の直接証拠がなくても、状況証拠の積み重ねで、共謀共同正犯で起訴し、政界最高実力者・小沢氏は起訴しない、はいかがなものか。
法は何人に対しても、公平でなければならない。検審の議決は国民多数の声だと尊重、再捜査に臨むことを東京地検特捜部に強く要望する。