名古屋に戻れば、中日は変わる。3日の首位阪神戦(ナゴヤドーム)、投げては先発朝倉健太投手(28)が7回途中まで無失点、打っては2回に和田一浩外野手(37)の先制適時三塁打などで5得点。2日の広島戦とは一転、投打の歯車がかみ合い、5−0で快勝、再び貯金を1とした。
勝利の瞬間はベンチで迎えた。朝倉の顔には達成感と安堵(あんど)の気持ちがにじむ。先頭でナインを出迎えてハイタッチ。そして、岩瀬が差し出した今季2個目のウイニングボールを、大事にポケットにしまった。7回途中まで5安打無失点と猛虎打線を抑え込んだ。前回先発した4月27日の巨人戦(ナゴヤドーム)では、5イニングで7失点KOされた自分にリベンジを果たした。
「巨人戦が申し訳なかった。すごい悔しかったので、きょうは絶対にやり返してやろうという気持ちでマウンドに上がりました」。四球から崩れた前回の背信投球を、自分の中で整理して臨んだ。「低め、低めという気持ちで(マウンドに)上がれた。先頭打者を出さないとか、自分でいろいろ考えた」。シュートと直球を主体に谷繁のミットに丹念に投げこんだ。初回の立ち上がりを3者凡退、わずか4分で抑えるなどリズムを味方につくる。先頭打者を出塁させたのは3回の1度だけ。そんな朝倉に応えるかのように、味方も2回に早々と先制点を取ってくれた。6回には自らのバットで右前適時打を放ち、下柳をKO。“健太デー”だった。
「情けないというか、悶々(もんもん)としていた1週間だった。今日に賭けていた」と朝倉。チームに同行した広島遠征中の練習では、近藤投手コーチを相手に遠投やキャッチボールを繰り返し、球の質をチェックしてもらうなど、やるべきことをやって、この日のマウンドに上がった。7回1死一、二塁で代打・金本が出てきた場面でお役御免となったが、落合監督は「いけるところまでいってくれないと。本当はあそこで投げきってくれて、というのが一番。そうすりゃ8回まで行けるんだろうけど」と説明。朝倉も「常に長い回を投げたいと思っているので」と力を込める。
6月で29歳、先発陣最年長としてリーダー的存在としての期待も高まる。「結果を残していかないと引っ張っていけないので」と自分の立場を分かっている。負ければ借金生活に突入するピンチを、頼もしい朝倉が救った。 (中谷秀樹)
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