【疑惑の濁流】朝鮮学校無償化先送りで総連に分裂危機…偽装韓国籍、ソフト化もやまぬ生徒離れ
5月1日15時52分配信 産経新聞
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朝鮮学校無償化先送りに揺れる朝鮮総連中央本部=東京都千代田区(栗橋隆悦撮影)(写真:産経新聞) |
[フォト]「敬愛する金総書記」107回、日米に敵対…朝鮮学校「現代朝鮮史」
■守旧派vs改革派…脱退誘発か
北朝鮮の民主化に取り組むNPO「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK)が朝鮮総連幹部から得た情報によると、総連中央本部は3月13、14両日、東京都内に各都道府県本部委員長を招集し、緊急会議を開いた。
同月11日にRENKが記者会見を開き、無償化獲得を指示する総連の内部文書や歴史教科書の内容を公開したことへの対抗策を協議するためだった。だが、実りのある議論にはならず、内部文書を流出させた「犯人捜し」に終始したという。
無償化法案は会議直後の16日に衆院本会議で可決されたが、朝鮮学校に対しては、有識者委員会を設置し、改めて適用の是非を議論するとされ、4月1日の施行日までの適用は先送りになった。
内部資料によれば、金正日総書記が直々に今年を「民族教育を強化する年」と定め、「民族教育は在日朝鮮人運動の生命線だ」との号令のもと、「適用除外は民族差別だ」と国会議員やメディアへのキャンペーンを繰り広げてきた総連にとって、この結果は「敗北」を意味した。
先送りをめぐって、総連内では、現状を維持したまま無償化獲得を主張する守旧派と「適用のためには、教育内容を改善すべきだ」とする改革派が対立。内紛の火種がくすぶり続けているという。
RENK代表の李英和関西大教授は「現在の教育内容に不満を持つ教員、父母は少なくないようだが、現状では改革派が主導権をにぎる見通しは低く、総連脱退につながる可能性がある」と分析している。
適用反対について朝鮮労働党機関誌「労働新聞」は「民族教育への弾圧だ」と論評し、朝鮮中央通信は、適用に慎重な橋下徹大阪府知事を名指しし「思考と言動が正常ではない」と非難するなど、北朝鮮は国営メディアを挙げて無償化獲得を援護射撃。
北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使が共同通信の取材に、先送りは「深刻な民族差別だ」とした上で「無償化されれば、政権が代わって新しくなったと受け止め、こちらとしてもやることはやる」と語ったが、朝鮮学校がいかに朝鮮労働党に直結し、無償化獲得が本国の至上命題だったかを印象付けた。
朝鮮学校を「北朝鮮公民教育の場」とみなす北朝鮮と総連はこれまで、日本政府の学校運営への介入を極度に嫌ってきた。それが一転、無償化獲得にシフトした背景には、財政難がある。
朝鮮学校の現役幹部は訪日した韓国人に「背に腹は代えられない」と漏らした。
■生徒離れに“偽装韓国籍”で対抗も
朝鮮学校運営をめぐって朝鮮総連に激震が走ったのはいまに始まったわけではない。
朝鮮学校の生徒・児童数は昭和30〜50年代のピーク時には約3万5千人に上ったが、その後、衰退の一途をたどり、文部科学省によると、現在、8300人にまで落ち込んでいる。金日成・金正日父子礼賛一辺倒の教育内容が「日本で暮らしている実情とかけ離れている」と朝鮮学校に子供を通わせたがらない父母が相次いだからだ。
中でも、日韓ワールドカップが開催され、金総書記が日本人拉致を認めて謝罪した平成14年以降、生徒離れが一気に加速した。
金総書記の悪口を口走った児童をしかり飛ばすことなく、押し黙ってしまう教員が現れ、元教員の一人は「教えていて苦しかった」と関係者に吐露した。
生徒離れと財政難から統廃合も進み、約160校あった学校数は73校に減少。内部文書によると、総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)責任副議長が「統廃合は敗北主義だ」との金総書記の指示を伝え、統廃合を押しとどめるようげきを飛ばした。
14年以降の急激な生徒離れを受け、総連側は、教科書内容を全面的に見直す教育内容の「ソフト化」を推進。総連幹部職員やその子供たちの韓国籍取得を支持する方針に転換した。
朝鮮総連を北朝鮮の出先機関とみなす韓国は、総連から脱退や朝鮮学校からの退学が確認された場合に限り、総連所属者の韓国籍取得を認めてきたが、金大中、盧武鉉両政権の親北政策のもとで基準を緩和。将来的な脱退を約束すれば国籍が取得できるようになったことが、朝鮮学校の生徒や父母らの韓国籍化の追い風に作用したという。
日本国内の無償化議論では、朝鮮学校側が「生徒・児童の半数以上が韓国籍である」ことを北朝鮮本国の直結でない根拠に挙げ、日本の適用賛成派も論拠としてこの点を強調する。
だが、実際には、韓国籍取得は総連離れを食い止めるために戦略的にとられたもので、生徒らの保護者の多くが総連の幹部職にとどまり続けた。この点について李教授は「偽装韓国籍であり、詐欺行為にあたる」と指摘する。
韓国側もこの事態に憂慮を示し、無償化論議の最中、大阪府に対して韓国領事館職員が朝鮮学校生徒の韓国籍取得問題の実態説明に出向いた。
■生徒を麻薬の運び屋に 人権派弁護士も反発
朝鮮学校への無償化適用をめぐっては、日本弁護士連合会(日弁連)が3月、「教育を受ける機会が政治・外交問題で左右されてはならない」と適用を求める会長声明を出した。しかし、日弁連内では、これに反発する動きも出ている。
「北朝鮮による拉致と人権問題に取り組む法律家の会」幹事の川人博弁護士は「声明は朝鮮学校の実態を調査しないまま一部意見をもとに出された」として声明撤回を求める要請書を日弁連に提出した。
川人弁護士が無償化適用に異議を唱えるのには、自らの体験がある。
昭和53年に朝鮮総連幹部からある麻薬取締法違反罪で立件された男性被告の弁護を依頼された。当時20代だった朝鮮高級学校(高校)出身の被告は、タイからヘロインを密輸しようとして成田空港で摘発されたが、被告に密輸を指示したのが同校の生活指導教員だった。
「朝鮮学校の教員と生徒という師弟関係が利用され、前途ある青年が犯罪行為にかり出された」(川人弁護士)
教員は密輸工作の首謀者として指名手配されたが、事件直後に行方不明となったままだ。
川人弁護士は「どこの学校でも犯罪に手を染める者はいるというレベルではなく、朝鮮学校が、犯罪行為を担う工作員に教員という社会的地位を与え、若者を新たな工作員候補として発掘する場になってきた」との疑念を語る。
その上で「金(総書記)独裁体制のイデオロギーを注入する機関として機能してきており、いまでも体制を批判する自由が校内には存在しない。無償化を求めるのであれば、過去にさかのぼって事実関係を明らかにすべきだ」と指摘する。
「『民族学校を』との人々の望みを利用して生徒らの思想の自由を無視した教育が何十年間も続いてきた。朝鮮学校への無償化適用にあたっては、抽象的な人権論を振りかざさず、朝鮮学校の実態に踏み込んだ議論が必要とされている」。川人弁護士はこう訴えている。
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最終更新:5月1日15時52分
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