メキシコ湾石油基地爆発、流出は沈静化
2010年4月22日にメキシコ湾の石油掘削基地“ディープウォーターホライズン”が水没したことで大量の石油流出が懸念されていたが、4月23日のアメリカ沿岸警備隊の発表によると、海底の掘削地点からの石油の流出はすでに収まっており、大規模な流出は回避できそうだという。しかし今回の事故は、アメリカ政府による海洋掘削の拡大計画に反対する環境保護論者にとって新たな攻撃材料となっている。
生存者がいる見込みが薄れる中、沿岸警備隊は23日も行方不明となっているディープウォーターホライズンの作業員11人の捜索を続行した。海洋油田掘削会社トランスオーシャンが運用し、イギリスの大手石油会社BPが採掘権を賃貸しているこの石油リグは、20日夜(日本時間21日昼)に原因不明の爆発を起こして炎上し、現地時間22日昼に水没した。トランスオーシャンは、原因の究明には数週間かかるだろうとしている。
ディープウォーターホライズンは技術の粋を集めた最新の石油リグとされ、つい数ヶ月前には、史上最も深い油井を採掘したとして話題を集めていた。
現在、この石油リグはルイジアナ州ベニスの南東80キロのメキシコ湾の海底に沈んでいる。現在は無人潜水艇によって、石油の流出が拡大していないか、および採掘施設の残骸が近隣の石油パイプラインを損傷する可能性がないか、監視が続けられている。
「この事故は皮肉なことに、環境保護の象徴であるアースデイ当日の爆発として歴史に残るだろう」と、自然保護団体「野生生物の保護者(Defenders of Wildlife)」の海洋プログラム上級政策顧問リチャード・チャーター氏は話す。「最新の最高水準の技術が失敗したということだ」。
沿岸警備隊のトム・アトキソン三等兵曹が4月23日に説明したところによると、ディープウォーターホライズンから最初に流出した石油はおよそ200バレル(約3万1800リットル)で、最後に上空から確認した段階では、油膜が幅3.2キロ、長さ13キロにまで広がっていたという。アメリカ連邦政府の関連当局の見解では、2381バレル(38万リットル)を超える流出のみが“大規模”に分類されるため、今回の流出は“小規模“と見なされる。
アトキソン三等兵曹は、現状では油膜が岸に流れ着くのに9日間かかると考えられるが、どの場所に漂着するかは潮の流れに左右されるとしている。しかし現在、BPがチャーターした6隻の油回収船と1隻の“はしけ”が海岸への油の到達を防ごうと試みている。
石油リグ自体には265万リットルの軽油が積まれていたが、水没時にリグ内に残っていたのか、火災で燃え尽きたのかは、23日現在で当局も把握していない。また、海底油田からの石油の流出は止まったと思われるが、その原因も明らかになっていない。沿岸警備隊は23日、石油流出の封じ込めに失敗するという最悪の事態に備えていると話しており、沿岸警備隊第8管区の司令官メアリー・ランドリー少将は用意された声明の中で、「現在も即応態勢をとっている」と述べている。
ディープウォーターホライズンの水没事故が発生したのは、気候変動に関する重要法案が上院議会に提出されるわずか数日前だった。
長く待ち望まれていたこの法案は26日に初めて議会に提出されることになっているが、この法案は、地球温暖化に取り組む一方で、海洋掘削の規模を拡大するなど米国内でのエネルギー生産を拡大する計画が盛り込まれている。こうしたエネルギー生産の制限撤廃を目指す動きは、共和党議員や保守系の民主党議員の支持を集めることが目的だ。
この法案の概要をすでに把握している「野生生物の保護者」のチャーター氏などの自然保護活動家によると、この法案は、アメリカの領海外大陸棚でのエネルギー探査に関してオバマ政権が3月に明らかにした計画の内容をさらに推し進めたものであるという。
例えばこの法案には、石油や天然ガスを探すための弾性波探査がアメリカの海岸線の環境に与える影響に関する調査を回避できる条項が含まれているという。また、そうした調査にかかる費用を連邦政府が支払うよう規定されているとチャーター氏は説明する。
同氏は、ディープウォーターホライズンの事故が今後の議論のベースとなるのは当然だと予測する。「内務省のケネス・サラザール長官は、十分な情報がなければこの掘削計画を進めることはできないと一貫して言っている。計画を進めればどうなるか、この事故でよくわかっただろう」。
Marianne Lavelle for National Geographic News
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現在、この石油リグはルイジアナ州ベニスの南東80キロのメキシコ湾の海底に沈んでいる。現在は無人潜水艇によって、石油の流出が拡大していないか、および採掘施設の残骸が近隣の石油パイプラインを損傷する可能性がないか、監視が続けられている。
「この事故は皮肉なことに、環境保護の象徴であるアースデイ当日の爆発として歴史に残るだろう」と、自然保護団体「野生生物の保護者(Defenders of Wildlife)」の海洋プログラム上級政策顧問リチャード・チャーター氏は話す。「最新の最高水準の技術が失敗したということだ」。
沿岸警備隊のトム・アトキソン三等兵曹が4月23日に説明したところによると、ディープウォーターホライズンから最初に流出した石油はおよそ200バレル(約3万1800リットル)で、最後に上空から確認した段階では、油膜が幅3.2キロ、長さ13キロにまで広がっていたという。アメリカ連邦政府の関連当局の見解では、2381バレル(38万リットル)を超える流出のみが“大規模”に分類されるため、今回の流出は“小規模“と見なされる。
アトキソン三等兵曹は、現状では油膜が岸に流れ着くのに9日間かかると考えられるが、どの場所に漂着するかは潮の流れに左右されるとしている。しかし現在、BPがチャーターした6隻の油回収船と1隻の“はしけ”が海岸への油の到達を防ごうと試みている。
石油リグ自体には265万リットルの軽油が積まれていたが、水没時にリグ内に残っていたのか、火災で燃え尽きたのかは、23日現在で当局も把握していない。また、海底油田からの石油の流出は止まったと思われるが、その原因も明らかになっていない。沿岸警備隊は23日、石油流出の封じ込めに失敗するという最悪の事態に備えていると話しており、沿岸警備隊第8管区の司令官メアリー・ランドリー少将は用意された声明の中で、「現在も即応態勢をとっている」と述べている。
ディープウォーターホライズンの水没事故が発生したのは、気候変動に関する重要法案が上院議会に提出されるわずか数日前だった。
長く待ち望まれていたこの法案は26日に初めて議会に提出されることになっているが、この法案は、地球温暖化に取り組む一方で、海洋掘削の規模を拡大するなど米国内でのエネルギー生産を拡大する計画が盛り込まれている。こうしたエネルギー生産の制限撤廃を目指す動きは、共和党議員や保守系の民主党議員の支持を集めることが目的だ。
この法案の概要をすでに把握している「野生生物の保護者」のチャーター氏などの自然保護活動家によると、この法案は、アメリカの領海外大陸棚でのエネルギー探査に関してオバマ政権が3月に明らかにした計画の内容をさらに推し進めたものであるという。
例えばこの法案には、石油や天然ガスを探すための弾性波探査がアメリカの海岸線の環境に与える影響に関する調査を回避できる条項が含まれているという。また、そうした調査にかかる費用を連邦政府が支払うよう規定されているとチャーター氏は説明する。
同氏は、ディープウォーターホライズンの事故が今後の議論のベースとなるのは当然だと予測する。「内務省のケネス・サラザール長官は、十分な情報がなければこの掘削計画を進めることはできないと一貫して言っている。計画を進めればどうなるか、この事故でよくわかっただろう」。
Marianne Lavelle for National Geographic News
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