この春、ネットやツイッター上でもっとも話題になったのが「非実在青少年」というそれまで耳にしたことがなかった不思議な単語でした。これは、東京都の青少年育成条例(東京都青少年の健全な育成に関する条例)の改正にあたり、国際的に進行している、実在の人間(少年・少女)への人権問題である児童ポルノ規制の範囲を広げ、マンガ・アニメ・映画・小説・ゲーム等における未成年のキャラクターを「非実在青少年」と名づけ、作中での表現を規制しようしたときに使用した造語です。

 ご存知の方も多いと思いますが、この青少年育成条例改正は、当初2月24日に改正案が提出され、充分な審議がなされたとは思えないまま、3月19日の都議会総務委を経て、3月末にも本会議で採決というスケジュールで進行しておりました。国際的な人権問題である児童ポルノ規制を、表現の問題へと援用し、しかも早急に制度化しようしていたことに対しては、さまざまな形で反対意見が提示されました。そのおかげで改正案は6月までの審議延長が決まりましたが、この間、この問題についてのTVなどの報道の取り扱い方を見ていると、なんだか首をひねるような的外れなものも少なくはありませんでした。

 戦後、手塚治虫という巨大な個性がマンガやアニメを開拓していった結果、日本は「非実在なキャラクター」たちの宝庫となりました。そして、だからこそ日本のキャラクターたちは可愛く、エロティックで、深遠な思想を背負っていたりもする存在として、世界中から注目されるようになりました。マンガ・アニメ・ゲームを世界に誇るカルチャーであり、次代の輸出産業であると称えながら、一方でこういった規制を同時進行させている――まるで東京オリンピック直前に野犬狩りをおこなったかのような――この矛盾は何なのでしょう。その疑問にも答えが出せないものでしょうか。

 そこで、今回の反対活動に中心的役割をはたした藤本由香里氏にご協力をいただき、現時点までの経緯をなるべく正確にまとめた上で、関係者のインタビューやコラム、そして規制の対象となりえるマンガ・アニメ・ゲーム・小説などのジャンルでご活躍の皆さんや評論家の方々からのアンケートを多く集め、〈非実在青少年問題〉について、読み応えのある本にしたいと考えています。


徳間書店 COMICリュウ編集長 大野修一

編集協力スタッフ/山本直人・牧紀子
 
●表紙イラスト+インタビュー  … 赤井孝美
●裏表紙イラスト+インタビュー … 鈴木みそ

■青少年健全育成条例・および改正案解説

■インタビュー・対談

 藤本由香里さん(評論家)

 山口貴士さん(弁護士)

 吾妻ひでおさん×山本直樹さん×とり・みきさん

 中村公彦さん(コミティア代表)
 東浩紀さん(評論家)

■クリエイターの方々からのアンケート回答
 条例改正案についての賛成・反対意見を、漫画家の方々をはじめ、アニメ、小説、ゲームなどさまざまなジャンルの方々にアンケートとして回答いただいたものを掲載いたします。お伺いしているアンケートは以下の5項目です。

1)条例改正と「非実在青少年についてご存知でしたか?
2)今回の改正案に対してどう思っていらっしゃいますか?
3)2)の回答について、その理由をお答えください。
4)ご自身の創作・表現・評論活動で気をつけていることは?
5)成立した場合、ご自身の活動にどんな影響が生じると思いますか?

ご回答いただいた方につきましては、随時、更新情報の方で報告いたします。

●4月22日
・カサハラテツローさん、一色登希彦さんからアンケートのご回答を頂きました。
・安彦良和さんから、アンケート参加のご回答をいただきました。

●4月29日
・掲載内容を更新しました。
・義月粧子さん、古屋兎丸さんからアンケートのご回答を頂きました。

●4月30日
・後藤寿庵さん、もんでんあきこさん、安倍吉俊さん、榊一郎さんからアンケートのご回答をいただきました。
・表紙をお願いしていますお2人の記事も掲載されます。



























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