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長谷川、衝撃TKO負け…涙の陥落

 4回、モンティエルの左フックが長谷川穂積の顔面をとらえる=日本武道館(撮影・開出 牧)
 4回、モンティエルの左フックが長谷川穂積の顔面をとらえる=日本武道館(撮影・開出 牧)

 「WBC世界バンタム級タイトルマッチ」(30日、日本武道館)

 衝撃の陥落‐。WBC世界バンタム級王者・長谷川穂積(29)=真正=が、挑戦者でWBO同級王者フェルナンド・モンティエル(31)=メキシコ=に4回TKO負けし11度目の防衛に失敗、05年4月から守り続けた王座を失った。具志堅用高の持つ国内最多連続防衛13回を目指していた長谷川は、4回終盤に強打を浴びて試合を止められた。長谷川は初のKO負けで戦績31戦28勝(12K0)3敗。モンティエルは2団体の王座統一に成功した。

  ◇  ◇

 王者同士の決戦に集まった1万1000人の歓声が、一瞬にして悲鳴に変わった。ラストシーンは唐突だった。大きなパンチを振るうメキシコの雄(ゆう)を闘牛士のようにあしらい、完全に試合を支配していた長谷川が、よもやの“一発”に沈んだ。

 4回、残り10秒を告げる拍子木の音が響いた次の瞬間、WBO王者の左フックがアゴを打ち抜いた。長谷川は大きくよろめき、ロープ際まで後退。意識は飛んでいた。連打の嵐にさらされ、ガードすらままならない。殴られるだけの長谷川を救うため、レフェリーが割って入った時、タイムは2分59秒‐。あと1秒で4回終了のゴングが鳴り響き、陣営の待つ赤コーナーに戻ることができたのだが…。

 非情な運命。目を背けたくなるような現実。5年間守り抜いた王座から陥落し、前王者として控室に戻った長谷川が重い口を開いた。「流れは自分のペースだった。(残り10秒の拍子木が聞こえて)気が抜けた。油断した」。努めて平静を装った。「(王者対決は)勝たないと意味がない。ただ11度目の防衛に失敗しただけ」。

 最後まで我慢することはできなかった。「もちろん悔しさはある。ただ…」。言葉に詰まり、目から涙があふれ出た。言葉にできない思いが、涙となってあふれ出た。隣に座る山下会長は「負けたら戦略を考えているオレの責任」とかばい、「本人の気持ちもあるが、もう一回バンタム級でモンティエルとやりたい」と再戦を促した。

 師匠の温かい言葉を受けた長谷川は、タオルでグイッと涙をぬぐうと「自分もできるならやりたい」と言い切った。自身のベルトを奪い、2団体統一王者となったモンティエルにリベンジを宣言した。山下会長は「これで終わりじゃない。もう一回はい上がっていけばいい」と弟子の尻を優しく叩いた。

 『絶対王者』の肩書は失った。それでも「試合は楽しかった。駆け引きが面白かった」。“統一戦”という大舞台に立ったことを喜んだ。日本武道館から歩いて出た長谷川を、ファンの大きな拍手が包んだ。「試合、面白かったよ」。この言葉を励みに、長谷川は再び王者への道を歩み始める。

(2010年5月3日)
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