【台南・小山田昌生】
長崎県平戸生まれで、台湾を統治した中国・明の遺臣鄭成功(ていせいこう)(1624-62)ゆかりの木造帆船の進水式が1日、台湾南部・台南市の安平港であった。鄭による台湾統治が始まって来年で350年になることから、台南市が松浦史料博物館(平戸市)所蔵の絵図を基に帆船を復元した。来春には平戸市までの航行も計画している。
鄭成功は、平戸港を拠点とした明の貿易商鄭芝龍(ていしりゅう)と、平戸藩士の娘田川マツとの間に誕生。1661年に台湾からオランダ勢力を追放し、台南を拠点に台湾を治めた。中国や台湾では民族的英雄とされる。
台南市が帆船復元の基とした絵図は、異国船絵巻「唐船之図」(県指定文化財)。長崎に来航した12隻の異国船を極彩色で精密に描いた18世紀初頭の作品で、寸法も書き込まれている。復元されたのは、このうちの「台湾船」で「鄭成功もほぼ同形式の船に乗っていた可能性が高い」(史料博物館)という。
台南市は歴史学者や木造船職人を集め、1年半かけて船を復元。全長30メートル、排水量150トンで、外観を忠実に再現しながら、長距離航行できるよう動力設備の設置スペースも設けた。総工費は8千万台湾元(約2億4千万円)。
進水式では伝統の獅子舞が披露され、太鼓や爆竹が鳴り響いた。日本の鎖国政策の強化などにより平戸に残った鄭成功の弟の子孫で、式典に参加した関口富美子さん(68)=神奈川県藤沢市=は「立派な船の姿に歴史のロマンを感じる。この船が平戸に着くときには、また見に行きたい」と話した。
=2010/05/02付 西日本新聞朝刊=