長所を伸ばし、大きく育てる。言うのは簡単だが、実行するのは案外難しい。第一、どんな長所があるのかを分かっていなければ、それを伸ばすこともできない

▼北秋田市の鷹巣地域と仙北市の角館地域を結ぶ第三セクター鉄道・秋田内陸線。窓から見える田んぼや集落は、日本の田舎そのものと言っていい。地元の人にはごく当たり前の風景。でも都会の人にとっては、郷愁誘う格別な眺めだ

▼沿線の長所を発見し、地域のために生かそうと盛んに活動している人たちが地元にいる。車窓からの眺めだけでなく、駅に降り立ってからも楽しめるところがたくさんあり、人と人との触れ合いがある—そんな魅力あふれる内陸線にしたいからだ

▼仙北市の田沢湖地域でデザイン事務所を経営する三浦陽一さん（５５）もその一人。「沿線には歴史ある建物をはじめ宝物がいっぱいあるのに、残念ながら埋もれている例が多い」と熱く語る。その一つ一つを磨き上げ、みんなで元気になりたいとの思いが日に日に増しているという

▼赤字続きのため、近年は存続か廃止かの瀬戸際に立たされていた内陸線。今年に入り県が存続を決定したものの、経営改善の見通しが立ったわけではない。その中で住民が、自分たちの住むまちの魅力向上へ一歩を踏み出したことにエールを送りたい

▼大型連休の真っただ中。ローカル線のゆったりとした時間に身を委ねるのもお薦めだ。そこに住む人たちの温かさに触れられれば、さらに充実した旅になる。