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精神疾患画像で診断…うつ病や統合失調症 脳血流の変化から判別

 うつ病や統合失調症などの精神疾患を脳の画像検査で診断する方法が実用段階に入ってきた。「近赤外光脳計測装置」(NIRS)を用いて脳血流の変化を測定し、それぞれの病気に特有のパターンを判別する検査法が、全国7施設の共同研究でほぼ確立した。東京大病院などは「先進医療」として実際の患者の診断に使い始めている。医師の面接に頼っていた精神科の診断に客観的なデータが加わることで、正確な診断に役立ちそうだ。

 精神科では、血液検査や画像のような客観的な診断手法が乏しく、同じ患者でも医師によって違う病名がつくことも少なくない。

 NIRSによる画像検査は、ヘルメット状の装置を頭にはめてもらい、「あ」で始まる言葉を声に出して挙げてもらう課題など簡単なテストをしながら、前頭葉の血流の変化を調べる。人体に害は全くない。

 群馬大、東大、国立精神・神経医療研究センター、鳥取大など7施設が2004年から研究を開始。健常者約1000人、精神疾患患者約500人の画像を蓄積。昨年末までの分析で違いの見分け方がほぼ確立した。

 健常者では血流量が急に増え、課題を終えた後、すぐに下がった。うつ病は反応は速いが、増え方は少なく、課題終了とともに急減した。統合失調症では、ゆっくり増え、課題をやめた後、減るが、一度急増する時点があった。そううつ病でも、うつ病と異なる特徴が見られた。それぞれの疾患の7〜8割程度で、面接による診断と一致する結果になり、面接だけで疾患を判別がつきにくかった患者もほぼ区別できるという。

 東大など3施設は昨年度から保険診療と併用できる「先進医療」の承認を厚生労働省から受け、現場での利用を開始。近畿大病院(大阪府大阪狭山市)も近く先進医療を始める。東大病院は今月から週2人の入院検査プログラム(自己負担約7万円)を導入した。

 東大精神神経科の笠井清登教授は「面接だけでは診断が遅れたり、不適切な薬の処方で症状が悪化するケースもあったが、画像検査に従来の面接法を加えると、ほぼ確実に診断できる。目で見て自分の状態がわかることは、患者にとって安心につながっている」と話す。

 厚労省の調査では、国内のうつ病患者は約100万人、統合失調症は約70万人と推定され、とくにうつ病は年々増加。自殺の大きな原因ともなっている。

 東大の検査は6月末まで予約が埋まっている。以後の申し込み要領はホームページ(http://www.h.u‐tokyo.ac.jp/patient/depts/kokoro.html)で確認できる。

2010年4月8日  読売新聞)

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