【コラム】起亜自工場長の解雇(下)

 K工場長は、起亜自内部では原則主義者として知られていた。例えば、生産台数が減り2時間の残業が必要なくなると、残業をせずとも支払われていた残業代の支給をストップした。また、ラインをストップさせて生産を妨害した主導者に対しては、民事・刑事上の責任を追及し、相次いで告訴・告発した。

 華城工場の労働組合は、こうした原則主義の工場長を窮地に追い込んだ。昨年10月にメンバーが一新された組合執行部は、K工場長を自分たちの意向に従わせるため、ラインの稼働を故意にストップさせるという強行策に出た。つまり、生産と消費者の不満という双方を人質に、会社側に圧力を加えたのだ。今年3月には、特別勤務(土曜勤務)を拒否して1万台の生産減をもたらすなど、会社側に損害を与えた。また、修理用のバンパーをはじめとする部品生産を拒絶し、消費者は車を修理することができなくなった。こうした事態を受け、組合は「現場への圧力を中断し、K工場長を解雇せよ」と要求した。

 最終的にK工場長は解任され、組合員らは社内の掲示板などに、「K工場長の解任は組合による闘争がもたらした痛快な成果だ」と自画自賛した。

 会社の事情を理解できないわけではない。組合の標的にされた工場長を解任しなければ、当面は車の生産に支障が生じる。会社としては、耐えられない状況だ。しかし最終的には組合が自分たちの要求を押し通し、法と原則を守ろうとした工場長は消耗品のように捨てられた。このような状況では、誰が工場長になっても信念を持って業務を行うことなどできないだろう。また組合員は、組合の言い分をより信頼し、会社の言うことなど聞かなくなるかもしれない。これが2010年の現代・起亜自が抱える労使文化の現状だ。同じ会社の中国工場と韓国工場の現実を比較すると、韓国工場がいつまで持ちこたえることができるのか、疑問を感じざるを得ない。

崔元碩(チェ・ウォンソク)産業部自動車チーム長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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