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【著者に聞きたい】古田博司さん 『日本文明圏の覚醒』 (2/2ページ)
このニュースのトピックス:文学・書籍
タイトルこそ刺激的だが、明治期の偉人伝や万世一系神話に頼る従来のモダン的愛国論は明確に謝絶する。「日本人は近代を無理して、武張って生きてきたわけです。長いモダンのトンネルを、天皇陛下と一緒にね。陛下もあんなにお疲れになっているというのに」
これまでの著書とは異なったエッセーという形式も、その時代認識に合わせたものだ。「モダンの人たちはバカにしてきたけど、これから多くの人に思想的インパクトを与えるような本を書くなら、エッセーか、ですます調ですよ。説得社会だから。大上段に構えて議論をふっかける形式では、もう相手に届かない」。モダンのトンネルを抜けた日本の風景の変化が、著者の個人史という車窓から描かれる。碩学(せきがく)の思索の旅でもある。(磨井慎吾)(筑摩書房・2625円)
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【プロフィル】古田博司
ふるた・ひろし 昭和28年、横浜市生まれ。筑波大大学院教授。著書にサントリー学芸賞受賞『東アジアの思想風景』、読売・吉野作造賞受賞『東アジア・イデオロギーを超えて』など。